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「異邦人」という小説を、僕は読んだことがある。
主人公が「太陽のせい」で人を殺し、死刑になるという内容の小説だ。
印象的なのは主人公のばらばらになったかのような道徳観、
周りの人々の強烈な「まともさ」、
そして太陽の筆致。
特に太陽にまつわるあらゆる事象を描いた
生々しい描写は僕の精神を圧倒するに充分だった。
僕は思う。
「異邦人」の舞台である地中海の太陽と日本の太陽、
どちらが強力だろうか―――
「オサム、こんなところにいたのか。
ヒムロが待っている。話があるそうだ。」
僕は空を仰ぐ。
今日は肌寒い。あの太陽はちっとも暖かくない―――
「どうした?空に何かあるのか?」
目に映るのは影と光の濃淡、コントラスト。
全てが太陽の下で輝き、色を放ち、影を落としている。
僕が立つ真っ白い床の上に少女の影が躍る。
時間さえ黙するこの景色の中は、隅々まで静けさに満ちている。
「・・・太陽しかないな。オサム、早く行こう。」
ああ、そうか!この世に太陽は一つしかない―――!
主人公ムルソーを責め苛んだのと全く同じ太陽が、僕の頭上にもある、
それは嗚呼、なんという不条理!
「大丈夫か?」
心配そうに僕の顔を覗き込むジャックに、僕は急いたように歩み寄り
彼女の細い肩をがっしと掴んで力任せに座らせる。
彼女はまばたきも忘れて驚き、僕の顔を、顔色を伺っている。
僕は屈み、彼女の青い目を覗きこみ、
顔を突き出してその冴え冴えしい目の奥へ飛び込む。
彼女はもはや力もなくし、弱弱しくその場に横たわる。
「あ・・・」
太陽の光線と熱波が僕の体に狂気を呼び、時間が完全に停止した頃、
太陽が、女の声が天の高みへ、昇る、昇る。
「ふう・・・」
僕は脱ぎ捨てられた服を拾い集める。
ジャックはすでに解き放たれ、空の広さを文字通り全身で感じていた。
「オサム・・・」
「・・・」
「どうして・・・」
「どうして?」
「どうして私を?オサムにはヒムロという人が・・・」
「言ったでしょ。姫榁はただの友達だって。」
正直僕にも分からなかった。
何故僕はジャックを?考えても分からない。
「太陽の・・・」
僕は本能のおもむくままに言う。
「太陽のせいだ。」
ヤっちまった・・・




