表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青い鳥の沈黙  作者: 住友
2/23

 「お願い、治、起きてよ!お願いだから!」

正午、寝ていた僕はまたしても起こされた。

体を大きくゆすられ、それがかなり乱暴なゆすりかただったので僕は思わず怒鳴った。

「姫榁!今度は何!?」

僕は苛立ちながら布団から頭を出した。

すると姫榁が突然泣きついてきた。

「姫榁?」

僕は抱きつかれ、身動きが取れなくなる。

姫榁は泣きじゃくりながら口を開いた。

「おばさんが・・・みんなが・・・ゾンビに・・」

「姫榁、何を言っているんだ?」

僕が姫榁の言うことをうまく聞き取れないでいると彼女は激昂した。

「寝ぼけんな!奴らが来たって言ってんでしょ!アホ!」

姫榁に落ち着きが無いのはいつものことだが

今は特に取り乱しているようだ。ただ事ではないと僕は思った。

「とにかく下へ降りよう。水でも飲む?」

すると、

「駄目!絶対駄目!部屋から出ないで!」

腕をつかまれた。

「一体何なんだ。姫榁。」

姫榁は大きく泣き崩れた。

僕は途方にくれた。

何をしていいのか分からず

とりあえず泣いている姫榁の背をさすってやる。

さすってやると姫榁は静かになっていった。

姫榁が静かになったその時だった。

ドン、ドン・・・

誰かが廊下側からこの部屋のドアを叩いている。

「母さんかな・・・カギかけたの姫榁か?」

僕は立ち上がりドアの鍵を外そうとした。

「駄目ェェェッッッ!!」

姫榁が金切り声を上げるように叫ぶ。僕の動きが止まる。

「どうしたんだ姫榁。おかしいぞ。」

「駄目!開けちゃダメ!お願いします!」

姫榁は僕とドアの間に割り込んでとおせんぼをするように立ちふさがった。

「姫榁、何で開けちゃ駄目なんだ?」

「ゾンビ!ゾンビっつってんでしょ!おばさんもおじさんもゾンビなの!」

「まさか朝のニュースのことを言っているのか?

母さんや父さんが暴徒になったとでも言うのか?」

僕は朝のことを思い出す。支離滅裂な内容の報道、興奮していた姫榁・・・

「違う!暴徒じゃない!ゾンビ!おばさんもおじさんもゾンビに食べられて

ゾンビになったの!」

姫榁の話があまりに荒唐無稽なので僕はだんだん腹が立ってきた。

「いい加減にしろよ姫榁。ドアを開けるんだ。」

「私がふざけてるとでも思ってんの!?」

たしかにふざけている感じではない。だがゾンビ云々の話は到底信じられそうにない。

ましてや母さんや父さんがゾンビに食われたなんて・・・

「ごめん、姫榁。姫榁がふざけてないのは分かる。だけど・・・じゃあ今ドアを叩いているのは誰なんだ?」

「誰でもない!ゾンビよ!私たちを食べに来たの!」

そう言うと姫榁はその場に座り込み頭を抱える。僕はため息をついた。

ドン!ドン!ドン!

ドアを叩く音が強くなる。明らかに様子がおかしい。まさか本当にゾンビ・・・

「・・・それならここにいてもしょうがないんじゃないか?なんとかして外へ出よう。」

僕はガラス窓を開け放つ。風が入ってくる。

「ここは2階だ。飛び降りられない高さでもないだろ?」

姫榁は反対した。

「外にも沢山いるの、危ないから駄目。」

「でもここにいたって・・・」

部屋のドアの蝶番がきしむ。ドアノブが悲鳴をあげる。けたたましい金属音。

「姫榁、外へ出よう!」

僕は姫榁の腕を掴み、窓際へ引き寄せる。

「母さんの畑の上に飛び降りるんだ。先に姫榁が行って。」

「何で私が先なの!?」

「どうせ怖がってなかなか飛び降りないだろ。」

「それはあんたの方でしょ!」

僕は下にある庭を見下ろし、思わず足がすくんだ。結構高い。

「じゃあ、一緒に飛び降りよう!」

「はあ?」

「123で飛び降りるよ!1、2・・・」

「ちょ、無理無理・・・」

ドアが壊れ、何者かが部屋の中になだれ込んでくる。

「3!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ