17
「テロリストどもをぶっ倒すのさ!」
「バッカじゃないの!?」
「さあ二人とも、留置所に行こう。」
「ええ?あの怪物がいるんじゃないの?」
「あの、だからテロリストをさ・・・」
「貴方がいるから大丈夫だろう、ヒムロ。
それに暗い中他の寝床を探しにいくのはまずい。
留置所でいいだろう。」
「善は急げって言うしテロを・・・」
「そうね、今夜は留置所で過ごしましょ。」
「テロ・・・」
「マコト、何している?早く行こう。」
「・・・」
「寝る前にシャワー室に行こうか。」
「うそ、使えるの?」
「プロパンガスだからな。ガス供給は問題ないはずだ。」
「やったー!」
「・・・」
・・・
・・・
月曜日の朝、僕は目を開き、呟いた。
「眠れなかった・・・」
・・・だってそりゃそうでしょ、
僕はほぼ半裸の美少女二人を両隣にはべらせて平静を保っていられるほど
聖人君子じゃあない。
ジャックは年の割には育つところ妙に育ってるし、
姫榁は僕の耳のそばで寝息をたててるし、
二人とも下着見えてるし、これは生殺しってヤツだ!
「何で二人とも僕をこんなに信用してぐっすり・・・
いや、男として見られていないのか?」
僕だって男女で部屋を分けるべきだと提案したのだ。
だのに、だのに・・・
「何を言う。なるべく固まっていた方が安全に決まっている。」
「そうだよ、治はこの三人の中じゃ一番へっぽこでしょっ?」
「へっぽこ言うな!そもそも何だその服装は!
パンツ丸見えじゃないか!」
「ロッカー室にあったジャンパー。
今の季節ならこれ一枚で丁度いいでしょ?
というかこれしかなかったし。」
「日本の警察ってジャンパー着るの!?なんであったの!?」
「特捜ロボジャンパー○ンというヒーローがいてだな・・・」
「古!ジャックって何歳なの!?」
「十五だ。十一月二十日生まれだ。」
「あれ、私より誕生日遅いんだ。私の方が年上なのか~
治~、この娘あんたより年下だよ、良かったね~。」
「どうでもいいよ!とにかく僕は隣の部屋を使わせてもらうからな!」
「駄目!」
「危険だ。許可できない。」
「が~!二人とも密着するなぁ!散れ、散れ!」
「治は自分がただの人間だって自覚が足りないよ。
襲われたらひとたまりもないんだから。」
「そ、そうだけど・・・」
「戦闘力で言ったら私、ジャック、治の順じゃない。」
「戦闘力最低・・・僕は最低・・・」
「ん?ヒムロ、ヒムロの中では私は貴方の次なのか?」
「え?そうでしょ?私あの怪物追い払えるし。」
「私の体調が万全ならあの実験動物程度敵ではない。」
「じゃあ万全なら私の魔眼を防げるの?」
「! ヒムロ、その目は・・・!」
「ジャック、×××して○○○しなさい。」
「あ、やめ、ちょっと、うあああ!ま、マコト、見るなっ」
「うわあ!ごめんジャック!ひ、姫榁、やめないかっ、」
「あぅ・・・ひうぅ、くぅ~、ひ、ヒムロっ」
「そのまま治と△△△までヤっとく?」
「! 分かった、分かった!ヒムロ、私の負けだ!だからやめろっ」
「ふふん、よろしい。じゃあ私がリーダーね。決まりっ。」
「く、不本意だが・・・了解した。」
「・・・」
「治は?治は異議なし?」
「はい・・・異議なし・・・です。」
「よーし、じゃあ最初の命令っ。寒いから三人で固まって寝るぞっ。」
「なん・・・だと?」
「さあ寝た寝たぁ!」
・・・
夜、月が格子つきの窓から音もなく忍び込む。
僕の隣には姫榁が寝ていて、
その更に隣にジャックが横たわっている。
(はあ、寝付けないよ・・・やばい・・・)
自らの気を鎮めるため天井のシミを数えていると、
どこからか唸り声が聞こえてくる。
ゾンビのものではない。その唸り声には意味があった。
「―――っ ―――!」
ジャックのものだ。うなされているようだ。
(うなされている時は起こしてあげた方がいいんだよな・・・)
「―――! ―――!」
僕は姫榁の体越しにジャックの肩を揺らす。
「おーい、ジャックぅ、」
「―――!!・・・うう・・・」
「起きた、良かっ・・・」
彼女が目覚めたかと思うと突然手首に激痛が走り、視界が反転する。
「!?」
そして床に背中を強打する。なにが起こっているんだ?
「痛って~・・・」
「オサム!?申し訳ない!」
?
「大丈夫か?反射的につい・・・」
そうか、どうやら僕はジャックに投げられたみたいだ。
「いや、いいんだ、やっぱりジャックは強いんだな。」
「すまないな・・・しかしオサム、何をしようとしたんだ?」
「え?ああ、ジャックがうなされていたから
起こしてあげようと思って・・・決してやましいことは・・・」
まずい、気まずい雰囲気だ。ジャックの視線が痛い。
背中以上に痛い。
「・・・せっかく起きたし、少しお喋りしないか?」
「お喋り?」
思わず僕は聞き返す。何だ、お喋りって?
ジャックが薄く笑みを浮かべる。
髪の下に顔がある。
僕たちは格子つきの窓から月を眺める。
僕はジャックが何か喋り出すのを待つ。
「オサムはヒムロの恋人なのか?」
「!?」
いきなりな質問だな。
「違うのか?」
「・・・うーん、僕たちは家が隣同士で確かに
面識も結構あるけど、恋人とまでは・・・
せいぜい友達じゃあないかな。」
「そうか・・・ヒムロはオサムの友達なんだな。」
静かになる。それを僕が破る。
「・・・離反したエージェントがいるって言っていたよね?
もしかしてそのエージェント、剣を持ってたりする?」
「会ったのか。そうだ。彼が離反したエージェント、<テル>だ。」
「やっぱりか・・・あいつもジャックと同じような
黒いスーツ着てたから・・・」
僕を呼ぶ声がする。姫榁の寝言だ。
「そのテルとは友達・・・だった?」
「いや・・・私に友達と呼べる人間はいない。
エージェントの仕事は・・・・・・・・・」
ジャックの顔が愁いを帯びる。間違いない、彼女は絶世の美少女だ。
「うなされてたのはその仕事を思い出したから?」
「・・・ああ。」
「・・・もう寝よっか。起きててもしょうがないしね。
じゃあまた明日・・・」
「なあ、」
「何?ジャック。」
「すまない。」
「何が?」
「怪我した貴方を放り出したことだ。
あの時は助ける義理などないと思って・・・」
「そうか、あれ今日のことなんだよな。」
「え?」
「いや、今日一日すごい長かったなあと思って。
ジャックは今日一日長いと感じた?」
「ああ、まあ・・」
「だったらさ、長い時間から見れば
そんなことは大昔の出来事なんだよ。忘れていいんだ。
大体初対面だったし。」
「・・・」
「じゃあね、また明日。」
僕は元いた位置に戻ろうとする。だが、
「待ってほしい。」
ジャックに腕を引かれる。
「?」
「私の隣で寝てほしい。またうなされたときは頼む。」
「ええ?いいけど・・・」
「では頼んだ。」
彼女は横になってものの数秒で寝息をたてはじめた。
「たくましいな・・・女たちは・・・」
「・・・そういう訳で僕眠れないから、今度から別々で寝よう。ね?」
朝の日差しの中、僕は寝ぼけまなこでそう懇願する。
「駄目。危ないから。あ、いいもん見っけ」
姫榁は武器庫のロッカーを漁りながら言う。
「時と状況によってはそうするかもしれないが
基本は常に固まって行動したい。」
ドア越しにジャックも言う。
彼女は部屋の外で着替えている。
あの黒いスーツはボロボロなので
警官の制服を拝借するらしい。
・・・なんで寝るときからそうしなかったのだろう?
「大体そんな理由で眠れないなんて。治のエロ。」
「エロ・・・この僕が・・・エロ・・・」
「ヒムロ、着替えれた。武器の方は?」
「結構集まった・・・何で男物の制服なの?」
「スカートは動きづらい。これはちょうどいいサイズだし、
これにしない理由がない。」
「そうね、色目使うオオカミもいるしね。」
「オオカミ・・・この僕が・・・うう・・・」
まあ何はさておき、こうして朝日を拝めたし、気合を入れておこう。
僕は胸を張り、腰に手を当て、声を張り上げる。
「テロリストどもをぶっ倒すのさ!」
「いや、倒さないし。」




