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青い鳥の沈黙  作者: 住友
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 月が眩しい。なんて明るい夜だろう。

空がとても真っ青で、遠く遠くまで見渡せそうだ。

彼方の死人の唸りさえ、今は情緒に溢れてる。


 ントラプ・スレテトスリア社。

確か大きな製薬会社のことだったと思う。

世間知らずな中学生の僕にはこの程度の知識しかない。

「あなた、知っている範囲で答えるって言ったよね?じゃあまず、

んとらぷなんとかって会社の工作員が何でこんなところにいるの?」

姫榁は胡散臭いものを見る目でジャックを見つめる。

それに気づいているのかいないのか、

極めて事務的な口調でジャックは答える。

「離反者を追っていた。」

「離反者?」

「テロリストに加担して違法な行為を繰り返している。

回復し終わったらすぐにでも追わねば。」

「テロリストって?」

「今回の災害を引き起こした張本人だ。

彼らはエージェントの一人を買収し・・・」

「ちょっと、あなた、質問には答えてるけど話が全く見えてこないじゃない。」

「姫榁の質問が悪いと思う・・・」

「何よ、じゃあ治が尋問してよ。」

「尋問って・・・」

僕はジャックに向きなおる。

「ジャック、今世界で何が起きているの?」

「我が社で開発された生物兵器によるテロ攻撃によって

大規模な生物災害が発生している。」

「何でそんなことが起こったの?」

「我が社の研究施設から

軍用の生物兵器を盗み出した<啓蒙戦線>を名乗るテロリスト集団が

世界各地で同時多発的に無差別攻撃を開始した。

それが十八時間前のことだ。」

「今はどうなってるの?」

「攻撃が始まって十時間で先進諸国のほぼ全てが国家としての機能を失った。

日本国も正午にはほぼ全ての地方自治体が壊滅し、

首都機能は太平洋海上に移転された。」

「ここの警察署のパソコンで調べたときはそんな情報なかったような・・・」

「今言ったことは全て極秘事項だ。

マスコミもまともに機能していないから、まず一般の市民は何も知らない。」

「けいもう・・・なんとかってのは何でこんなことをするの?」

「<啓蒙戦線>の目的は不明で、詳しい情報も掴めていない。

国連も我が社も災害の対応に追われていて

正直犯人探しにまで手が回らない状況だ。」

「それでジャックはここへなにをしに?」

「盗まれてテロ攻撃に利用された生物兵器の内の一つを駆除するため

本社執行部から派遣されてやって来た。」

「生物兵器ってあの怪物のこと?」

「そうだ。あれは新しい動物兵器を開発する過程で

誕生した実験動物の成れの果てだ。

しかしあれは盗まれた生物兵器の内の一つにすぎない。

もっと厄介なのは・・・」

「ちょっと、さっき私が聞いたとき

離反者がどうのこうのって言ってたじゃない。話が違くない?」

姫榁が間に割り込む。

「同じく本社から派遣されたエージェントが

テロリストに買収され離反したたため

そのエージェントの身柄の確保も行うことになった。」

「その裏切り者とここで戦ってたってこと?」

「まあ・・・そういうことだ。」

姫榁の質問にジャックの声のトーンが若干低くなる。

「その怪我や身なりから察するに

ボロ負けして取り逃がしちゃったってところね?」

「負けてなどいない!私は・・・不意を食らっただけだ。」

ジャックは一瞬顔を上げ激昂し、はっとしたかのように伏し目がちになる。

その態度にやましいものを嗅ぎつけた姫榁が更にジャックを追求する。

「それでも生かされてるじゃない。

何かあくどい取引したんじゃないの?」

「何!?」

ジャックが姫榁を睨む。姫榁はたじろぐことなく見返す。

「姫榁、言いすぎだよ。」

「でも困るじゃないの。ちゃんと聞いておかないと。

もし何かの陰謀に巻き込まれでもしたら私たちの身が危ないの。

分かる?」

姫榁は笑っていない。真剣なのだ。

それに気づいたジャックの表情が暗く、落ち着いたものになる。

「・・・分かった。大きな声を出したりしてすまない。

私は保身のための取引などは一切していない。

気絶させられて、気づいたら実験動物に食い殺されかけていた。

何とかその場を切り抜けて建物から脱出しようとしたとき

貴方達に会ったんだ。」

「ふーん・・・本当にそうなの?」

「そうだ。」

ジャックが姫榁の目を見る。姫榁は目を逸らさない。

何秒かたって姫榁が顔を綻ばせる。

「・・・まあいいんじゃないの?現に怪物は本当にいたワケだし。

まだ質問いい?」

構わない、とジャックは頷く。

「私、英語得意じゃないからよく分かんないけど、

<ジャック>って英語圏の名前だよね?

・・・ジャックって男の名前じゃないの?」

「ジャックというのは暗号名コードネームだ。

本名は・・・無い。」

無い?

「え?」

「・・・その話は置いておこう。貴方達の名を教えてほしい。」

気になるが今は彼女個人の問題に触れる必要はないだろう。

何か聞こうとする姫榁を僕は手で制する。      

「・・・私は木晒姫榁。姫榁でいいよ。

ごめんね、さっきはきついこと言って。」

「えーと、佐藤治・・・です。この間は助けてくれてありがとう。」

「助けた?」

「ほら、学校の裏山にあった廃ビルで・・・」

「・・・確かに貴方とは一度会っているが

あれは貴方を助けようとしてしたことではない。

私は貴方を避難所の敷地に放置したし、

必要な手当てもしなかった。

私が貴方に感謝されるのはおかしい。」

「でも・・・」

「オサム、質問していいか?」

「え、何?」

「何故貴方はあそこにいた?」

「それは・・・迷って・・・」

「やっぱりそうだったの?治、ホントごめん。」

「いや、いいんだよ、なんだかんだで生きてるし。

姫榁にもジャックにも感謝しなきゃ。」

「だからオサム・・・」

「いいんだ。こっちで勝手に感謝させてもらうから。」

僕は立ち上がり、背伸びをする。

「さて、と。質問タイムもこれくらいにして、もう行こうか。」

「ちょっと、どこ行くの?」

歩き出した僕を姫榁が呼び止める。

「決まってるじゃないか。今までの話を結論づけるとこうだ。」

「?」

僕は息を吸った。空気が冷たい。

「テロリストどもをぶっ倒すのさ!」






テロリストどもをぶっ倒すのさ!(キリッ)

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