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旅人  作者: ネムのろ
第三章 姉妹の絆
9/20

旅人その9


暗い暗い狭い世界があるとする。狭いのに広く考えようとする世界。暗いはずなのにソレを変えようとする。やっと光が射してきた時、突然その世界が崩壊をはじめ、全てが無に帰り何も無くなってしまって空っぽの、初めから価値など無かったように存在していたことさえ忘れられてしまう。そんな哀れな世界があったら。

きっと自分はその崩壊した世界に溶け込んでしまうだろう。


何故ならアタシの世界も、ある事を切っ掛けに壊れかけてしまったから。


でも、また作り上げる理由をくれた者がいた―――




それは本当に小さな、か細く弱々しい声だった。


ヘタしたら聞き逃していたかもしれないでも、聞こえた。








―――救いを求める小さな声が聞こえたのだ









「ねぇちゃん、風邪ひくよ」


「う...う~ン...」


「まったく、こんなとこで一体何してたの?」


「う~...うう~ん」


「いい加減...起きろーーー!!この馬鹿姉(ばかあね)ーーーー!!」


「ノアーーー!!な、何事なろだ?!」

寝ぼけ顔で口の端についたヨダレを拭きながら夕歌は辺りを凄い速さで見回る。やがてソラが目に映った。笑いを必死にこらえてるソラを。



「やっと起きたか。さて、こんな屋根の上で何故あなたがうたたねしていたのかな?夕歌お姉さん??」


まだ笑ってるのか、そこはかとなくコバカにしてるような発音をしていた。夕歌はまだ寝ぼけているらしく、ぼーーーーーっとしている。そしてシバラク経ってから

 


「ほへ?...ソラ?あり、あたし寝てたのか。じゃ、あれは夢...」



急にうな垂れながらテンションが大幅に低くなっていく夕歌を少し心配しながらソレでも質問を待つソラ


「ううっ!何ツー夢見てんだあたしは...昔の事を夢にまで見るとは...精神がそーとーいってるか、それとも...そろそろ話さなければならないのか...?」


「ねぇさん、無視やめて。せめて何故ここにいるのか話してよ」


「んん?ただ母さんに見張れと頼まれただけだぞ?」


その答えに脱力し、目が半目になりつつも聞いてみることにする


「...屋根の上で見張れと母さんが?」


「んな分けないじゃん。母さんが、んなあほな事頼む訳ない。むしろアタシがメンドクサイからココに来た訳でだな。」


訳が通らないことを言ってくるこの姉。はぁ...とソラは溜息しながらも聞いた。


「...もっとメンドクない?」


「いいや?あんたの上にいたから結構、充実したよ?下から這い上がって来る様、見逃したけど。YOUは下、Iは上!!(お前は下、あたしは上)」


余談だが、この時の姉は満面の笑みだったと言う。


「どこまででもサディストなんだね...」


「ソレが性分だからねっ!!」


自慢してどうするの。そう言いながらソラは夕歌の隣りに座る。


「あたしもさ、昔の夢見たよ。」


「Hee,Yokattane~」


夕歌はさも、どうでも良く答えた。


「頼むから冗談やめてよ夕ねぇ!」


「Yes,Yes...(はいはい...)」


「良く覚えてないんだけどさ。多分ココとは違う所で生活してたときの事。3,4~5歳の頃なんだけどさ、父さん行方不明になったんだね?で、あたしが壊れかけて...で、誰かの変な声がして、怖くなって、訳が解らなくなって、気ずいたら、夕ねぇがそこにいて、助けてくれて...大ざっぱにしか思い出せないけど、暗闇から救ってくれたのは夕ねぇだからさ、その、お礼を言いに...」


ソラが振り向くと、相当驚いている夕歌の顔があった。


「ど、どうしたの」


「...あたしも今見てた。その内容を...勿論、あたしの視点だけだけど」


二人は顔を見合わせる。寒かったはずのその場所はそれすら感じる事が出来ないでいた二人によって崩れかけようとしていた。もちろん飛び切りの驚きによって。


「...偶然?」


それに。と夕歌はつずける。


「母さんのアノ笑顔...仕組んだ可能性がある。」


「あら、それは群れ衣よ。私は何もしてないわ」


「て、母さん?!いつの間に??!」


「あなた達が話してる間によ。ソラちゃんの部屋へ行っても誰も居ないし、屋根から話し声がしてくるから、もしかしたらって思って来たの。それで?『母さんのアノ笑顔』ってドウユウ意味かしら?フフフ。」


そう言うが早いか、夕歌はすでに白目になりかけていた


「Hahaha。Mabusii Manmen no Egao tte Imi desuyo」


「どうしたの夕ちゃん。日本語の発音がおかしくなちゃってるわよ?」


「姉さんしっかり!まだ向こうの橋を渡るには何が何でも早すぎるって!!字がアルファベットになってる!!母さんまだ何もしてないし!戻ってこーい!!!」



必死で姉を正気に戻そうとするソラ。頬をバンバン打ち付けたり、ユラユラ揺らしまくったりと、しまいにはソラの攻撃であの世へ旅立ってしまうのではないかと思う位だった。


「はっ!!...やっべ。あの時の事を脳が走馬灯にしてしまって、まるで今起こってるかのような錯覚におちいってしまっていた。危ない危ない。てかソラ、痛い。」


「ごめんごめん。と言うか、どれ位母さんは【凄い】の...。」


改めて母が強いのだとこの時ソラは感じたのだという...


少しして道留を元に全員が家の中へ入ってきた。


「あら?何かしらアレ...」


そう道留が声に出しながら台所の机の方を指差す。そこには本物と見間違えてしまうほどの


「猫の...置物...?母さんコンなのあったっけ?」


「ううん。コンなの無いハズよ?買った覚えないし、貰った覚えもないわ。」


二人はどう見ても怪しいその置物をマジマジと見つめている。わざとらしくど真ん中に置いてあるその置物がわずかに1センチほど二人の目線から目をずらしたかのような...



「あれ?目がずれた様に思えたんだけど今。」


「ええ、私もそう見えたわ。」


引きつずき見張ろうとしていると



「わ~!!何コレ~かわいい白の猫のヌイグルミだ~!!」


とソラが置物をヒョイッと抱きかかえてしまい


「かわいいな~!!あたしこんなの欲しかったんだ~♪」


「どこがヌイグルミか!!「だってコレ生暖かいよ?」それがどうした!こんなん置物で十分だ!!って言うか、もしかしたら敵の罠かもしれ...え?生暖かい?」
















『だれが置物か』
























見知らぬ可愛いらしい鋭い声が響いてきた。






















「え?もしかしなくても、コレ、今喋った?」


「はぁ?何言ってんのソラ?置物が喋るわけ無いじゃん。」


『俺は置物じゃない』


「ホラ!今度は聞こえたっしょ?置物じゃないって言ったよ今。」


「はぁ?さっきと同様、何も聞こえないぞ?それに置物じゃない??」


「うん。え?なに?伝言?母さんに???」


「あら、私宛?」


「ふんふん、え...」


話を聞いていたらしいソラが急に驚きの顔へと変わり、みるみるうちに青ざめて行った


「えぇええぇえええぇえ???!!!」


「なになに?何で急に大声なんだ?!何て言ったんだ?!事情によってはこの生暖かい変な置物粉々に...!」


「他の世界から母さん宛に通信?!ファーバープロテクトのせいで苦労しまくって入ったはいいものの、プロテクトに接触したために動けなくなったあ?!」


「ナニィ?!あのプロテクトを抜けてきただとぉ?!死ななかっただけ運いいなぁおい!」


「それに、力を全て奪われなかったって言うのが信じられないわ...あなた、何者なの?」


「え...そんなことが起こるの?」


「「まあ。まだあるけど、大体はそうかな。」」


「何て危ない事したんだろう...あたし。」


『...どうでもいいから、話聞いてくれ』


呆れ顔で話しかけてくる置物っぽい猫がなんとなく可愛そうにも思えたので、ソラの通訳によって話は進められた。

 


『まず、俺の名前はネオン。元居た世界の名前は【ネオポルケルモス】みんなも知っての通り主に動物たちが不思議な力、【ネオンライト】を使う種族。よく君らの世界から旅人ハイゼンデ達が来てたから、たぶん多くの世界の中でも一番協力できると思う。通信を始めるけど、いい?』



「ああ、うん。いいわよ」


「短めで退屈しなさそうだったら、問題なし。その逆だったら、とっとと出て行く。いいな?」


「...姉さん、まだ力が回復してないのにそんなコトできるかっ!てネオンが言ってるよ?」


「あれ?そっかあ動けないんだっけ?いや~すっかり忘れてたよあははは」


『...わざとらしい』


「うん、あたしもそうだと思う」


『それじゃ、通信を開始し。レベル31、雑音が多少なり存在中。だが、映像と音声に問題なし。...シンクロシステムD...完了。』


そう言い終えると額のうす黄色の部分から光が出て、壁へと伸びて行き、そして


「うわお!映画館みたーい!」


《...ん?》


「あ、誰か映った。男の人みたいだけど...」


《おお!できたんだねネオン!ありがとう!!》


『約束だったからね。俺は筋は必ず通すから。』


《やあ!久しぶりだね皆!元気にしてたかい?》


「あの、ドチラ様でしょう?夕ちゃんの知り合い?それともソラちゃんの知り合いかしら?」


「え?母さん知らないの?この人は知ってそうだよ?」


「...こんな男、知り合ってなんかイナイワヨ?フフ。それに、そんなのと知り合っていたら私、きっと人生台無しにしてたと思うし。」


《ひっ!酷い!いくらなんでもそんな言い方は...長い間やっと成功した通信なのに...》


あーあ、しょぼくれて膝抱えながら地面に‘の’の字を書いている。おっかしーな、母さんってばこんなに怖かったっけ?ほとばしる黒いオーラが見えるような...


姉の方を見るとややこしい事が起こってるから大人しくしてろと、アイコンタクトされ、ソラはしかたがなく、しばらく様子を見るだけにしておく。ソラとてトバッチリは避けたい。


「そもそも、しりあっていたとしても、こんなに影が薄い人のことを誰が覚えてるのでしょうねぇ...?ねぇ、そう思いません?」


《ガーン!!かっ影が薄い...!誰も覚えていない...ううっもういいだろう...勘弁だよ~》


「あら?何がデスかぁ?わたし、何か変な事でも?」


《謝るから!長い間待たせてごめんよ...こっちにも色々とおきてさ...おかげで3年間も連絡が取れないままに...》


「...11年よ。」


《え?》


「11年間ずっとホッタラカシニしといて何を計算間違えてるのかしら?私がどんな思いで今まで...」


《ちょっと待って!?じゅっ11年?...おかしいぞ...通信はこれが初めてじゃないのに...》

そこで初めて道留が声を怖ばせた


「どう言うことなの?!せつめいしてちょうだい!あなた!!」


「あなた?」


ソラは今の単語で母さんを見始めた。その直後に夕歌が割り込んで説明を大ざっぱに言った。


「アタシとお前の父さん。母さんの旦那さん。」


「あえぇぇええぇええ?!!」


旅人その10


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