表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旅人  作者: ネムのろ
第一章 日常から非日常へ
3/20

旅人その3

旅人―その3


車も人も何もかも、まだ止まっているこの世界の中。風は緩やかに流れていたけれど、

木々たちはまだゆれるまでには達していない。

まるで世界の隅っこに置いてけぼりにされたような、そんな気分になってしまう。


そんな中、唯一動ける2人がいた。


一人は優雅な身のこなしで、どこか神秘さを感じさせる力強き年上の女性。

風になびく黒い、肩の上くらいのショートヘアーは、美しさとかっこよさを引き立てている。


もう一人は、まだ幼さをその身に受け持つ、過去を失った力無き年下の少女。

肩の少し下の方まで伸びた黒髪は、大きめのクリクリした黒色の目と、異様に合っている。

みためは可愛いが、けっこう男前であったりする。


二人は姉妹ではあるが、あまり共通点は無いに等しい。姉の方は生き生きなサディスト、

妹の方はオトボケな突っ込み系。唯一似ていることと言えば、

相手を思いやれる優しい心ずかいくらいか。


「あー痛かった」


夕歌は頭をさすりながら愚痴った

姉の頭にできた大きなタンコブを見つめるソラ。やがて、治った腰をゆっくり上げてから

力強く言い切った


「ねぇさんが悪いんでしょう。ツッコマセルカラ」←少し汗


ボケたつもりなんてねぇよ?!と、顔を近ずける夕歌は怒っている



「ちょ、怖いから、顔。解ったから。」


言いながら姉を押し返すソラ。


「あ、でも謝る気なんてサラサラないからね?」と、念を押しておくソラ←いい笑顔


「謝れよ」←影がついている不気味な笑い(恐らく殺気も含まれているだろう)


パコン!!


「いだあ??!手の平でぶったあ?!てかなんで、そんなに力いれるの??」


少女のほうはたたかれた頭をさすりながら姉のほうを、にらめつけるが効果なし。


「ノリだ。気にすることでもないぞー」


「...」


もう、何も言うまい。


とたんに静かになったころ、ソラは不安に心奪われかけた。そう、普通に考えれば

ありえない事だらけだった。

時々見る夢が、もしかしたら思い出せない過去とつながりがあるかもしれない。


でも、どうして思い出せないのか?それなりの理由があるのかもしれないが、

それらを知ってそうな姉や母は、まったくもって話そうとしない。


それどころか、見たことのない怪物たちが押し寄せてきて、殺されかけた...

どうしてそうなったかも解らない。

でも、夕歌姉さんが、助けてくれた。ありえない方法で。


圧倒的な攻撃力で、そして、夕日のような真っ赤な魔法っぽいもので化け物たちを蹴散らした。

夕歌の口から滑った言葉から、自分もそのような力があったらしい。


「ねぇ」


突然夕歌が話しかけてきた。歩きながらで背中越しだったが、不安を感じるよりは断然よかった。


「なに?」


「昔あんた、あたしのことを呼び捨てで呼んでたの覚えてっか?」


「え、呼び捨てだったの?」


「そ、何度もはたいて姉ぇさんとよばせることができたんだけどさぁ」


はたいてたんかいと、心の中で器用に突っ込みをかましながら、静かに耳を傾ける。

今まで決して過去のことを口にしようとしなかった姉から、今まさにそのことが聞ける。

うれしかった。すごく。だから邪魔などしないように、宝物を静かに、壊さぬよう扱うかのように、

姉の言葉を待っていた。


少し戸惑いながらも、目を輝かせながらその言葉をのみこむように。






「だけど、やっぱり...さ」



「うん」







「心残りがあるんだよ」












「心残り?」








「そう...姉ぇさんって呼ばせるようにしたんだけど、やっぱり...」







「?なに」


夕歌はソラの方を真剣に見つめてくる。今までにない展開からソラは少し緊張していた。
















「夕歌姉ぇ様って呼ばせた方がよかったって今でも反省してるのよ、なんで

ねぇさんにしたかなあたし?」









て、そっちかよ!!!と、思わず特大ハリセンで姉の頭を思いっきりはたいていた。

きずいた時すでに遅し!1人地面にのびる女がいた。



しばらくして、その衝撃から目覚めた夕歌は、ひとまず家へ行くことに決め、

時が止まったままの道を夕歌とソラだけが歩いて行く。



「夕ねぇ、さっきのは、さすがにやりすぎたよ、ごめんね。」


「べつに?ぜんぜん痛くなかったし、気にしてないし」


「ウソ付け。気絶したジャン。」


ブンっと音が鳴るほど素早く首を動かしながら夕歌は笑顔でソラに聞き返す。


「ああ?なんか言った?」


まあ、内心は全然笑ってないのだが...

ココで否定してしまえば死亡フラグが立ってしまうだろうということはさすがのソラでも解るので

少しした後、こちらも笑顔で答えた


「...いいや?」


そうこうしている内に家へと辿りつけたのだが、なぜか家の上空に、怪しげな亀裂が入っていた。


「夕姉ぇ?こ、これ何?」


「んん?ああ、これはね、この世界にチョッカイだしたらできる亀裂。

あたしらと似たものしかできないんだ。」


「??」


「ああ!!もう!!!母さん!!」


「あら、夕ちゃん!どこ行ってたの?いきなり飛び出してっちゃうんだもの。

『あの力』は発動するし、魔物たちは溢れかえすし...あ、ソラちゃんお帰りなさい。」


「あ、うん。タダイマ。でも、母さん、姉さんが家を飛び出したって

どうゆうこ「ああ、そう言えば魔物は?ココにも来た?」...姉さん、今あたしが聞いて

「ああ、そう言えば魔物は?ココにも来た?」...姉さん、だから今

「ああ、そう言えば魔物は?ココにも来た?」...いいよもう」


2人の事を眺めていた道留はクスクスと笑い、その後で答えた。


「ええ、来たわよ。私に敵う相手ではなかったから一撃で倒したのだけれど。」


「さすが。」


「そ、そうなの」


ちょっと不意に落ちないな。あたしだけ何も知らない、どうしようもできない、なんて。

そんなコトを思いながらソラは二人の説明に耳を傾ける。


「ええと、まず...そうねぇ、私達の事を話しましょうか。」


私達はこことまったく別の世界にいたの。その世界では人に害をなす魔物、人と手を取り合って、

力を合わせる不思議な力を持つ動物たちや、アルファインと呼ばれる人種がいるの。

見た目は他の人間と変わりないけど、妖精のような透き通った宝石のような羽が背中から生えていて

自由に飛びまわれるし。あと、アルファインたちは妖精のようには小さくないけど、

5歳の子供の背丈。それぞれ違う力が具わってて、風、炎、水、氷、など主に自然の力。


そう、ソラちゃん、あなたは特にアルファインの子、シュフィレス〔shufyres〕

という子と、お友達だった。戦う最高のパートナーであり、なんでも相談に乗れる友であり...

それはもう姉妹みたいだったわ。


一緒に笑いあい、泣きあい、時には殴りあったりしたけれど、二人の友情はすごく深いものになった。


そんなある日、ソラちゃんは8歳の若さでブルーサファイアと言われる

不思議な力が使える優秀な子のため、旅人ハイゼンデの一員として違う世界へ旅立つことが

決まった。


『すぐ...戻ってくるよね?ソラ』


「解らない。でも、約束!また会おうね!」


その三日後、アナタから連絡がきたの。私の元へ。


「母さん!!返事して!!!」


あなたはかなりあせってたわ。その時に、夕ちゃんもシューちゃん(シュフィレス)も

呼んで事情を話してもらった。もちろん、おじじ様にも。


「大変な事がおこってる。一つ一つの世界が崩壊を始めてる。

原因は世界全部を破壊しようとしてる奴ら。組織名...リセット」


「なにっ!?世界を破壊し、そして作り変えるつもりなのかっ?!」


「おじじ様、落ち着いて。あたし考えがあるの。」


「ソラ...?」


幾度となく聞いてきたソラの元気な声。でもどことなく寂しそうな、儚げな声だった。

だから次の言葉にも驚かされたけど違和感はなかったわ。アナタだったら、そうするって

心のどこかで解ってたもの。


『約束...したのに...そらぁ』


シューちゃんはそれはもう泣きじゃくってたわ。そのまま飛び出してっちゃう位に。


「皆で戦おうって話し合って、挑んで、そして負けちゃったんだもん。だからコレは

あたしが皆にできる、感謝の精一杯。」


「ソラ?あんたまさか...?!」


「夕歌、やっぱりお姉ちゃんって呼べないからこのままで逝くね」


「逝くって...やっぱりアンタ?!」


「夕歌?!これからソラが何をしようとしているのかわかるのか?!

なにをしようとしてるのじゃ?!話せ!」


「おじじ様、落ち着いてください、ソラ、アナタはやっぱりうちの子よ。

そっくりだわ。あの人に。」


「みちる母さん...じゃ、許可してくれ「する訳ないじゃない?フフ...」

じゃあ、どうしろと?」


「あなたが逝くことは許可できないけれど、戻れるのなら、特別に許可するわ」


「母さん、なんて無茶な選択を...ま、それが道留母さんなんだよね。

ソラ、あの封じられし精力、今なら封印解くことできるようにしといたから。」


「えぇえ?!?いつの間に解いてたの夕歌?」


「あんたが出発する前。一応念のためにね。ソレ使えば、あるいは命を取り留めることは

可能だと思う。だからさ」


「?だから?」


「何があっても、帰ってきなよ。」


「うん、ありがとう。」


その通信が途絶えて、一時間後、大きな爆発があった。世界の外でね。その衝撃は

すべての世界に地震みたいに影響を及ぼした。その時からすべての世界にある異変が起こり始めたの。


「ある異変?」


ここで、今まで黙っていた夕歌が説明を始める


「そう、ファーバープロテクト、つまりが、変な事が起こるたび、このように

世界の力無き者たちの時間が止まる、そして、力ありの奴らと、化け物同士の戦いってわけさ。

ちなみに、プロテクトがかかっている奴らには危害なし。どう?すごいっしょ?」


「う、うん。凄いけどさ、でも、あの亀裂は?」


ソラにはどうしても違和感が取り払えなかった。あの亀裂。

アレを見てからどうしようもなく不安が襲う。まるでだれかが訴えているような、

今まで大切にしてきたものすべてが無くなってしまう感じがして、落ち着けなかった。


そこで夕歌は道留にバトンタッチ。クスリと笑った後、道留は話を続けた。


「どうやらあなたには、ドコかしらあの時の記憶が多少ながら残っているみたいね。

不安なんでしょう?アレを見るたび。」


道留は人差し指で亀裂を指差した。そして、視線をソラのほうへ戻し、真剣に話を続けた。


「アレは本来起こり得ないはずだった。あなたが命を張りながら作り上げた、

『他の無関係な人たちに危害を加えない方法』を良く思わない人たちが、その力を

壊そうとしてつく跡があの亀裂よ。もう解ると思うけど...」


「つまり、組織名リセットの『リバース』チームの奴らってことでしょう?」


皆は『え?』と声に出しながらソラを見てくる。


「ソラ?アンタ何言ってんの?」と夕歌は唖然とし


「まだ何か裏の事情があるのね?やっぱり、あの時点でも私たちに

すべてを話した訳じゃあナカッタ...いちようきくけど、ソラちゃん何か思い出せる事ない?」

と、道留は心配した。


「え?あたし、何かいけない事喋った?」と、ソラは焦った。


「「チームが存在してたなんて一言も聞いてない(わよ)っつーの!!」」

















ドクン!!









ソラの胸の中で心臓がざわつき始めた。心臓はその鼓動を早め、たちまち息苦しくなってしまう。



「うっ...くっ...?!」


「どうしたソラ?!」


珍しく夕歌がソラが倒れる前に受け止めてくれた。意識が朦朧とする中で

彼女が聞き取れた唯一の言葉は、どこか、聞いた事のあるような、懐かしい声だった。

















―もう限界だ。終わりにしよう。―
















「なに...を..?」


「ソラ?どうした?」


「なにを...終わら..せるの...?」


「終わらせる...?」
















―お前は自分を引き換えに世界を救った...―






「世界を...あたしが...救った?」


「誰と話してるんだ?...母さん!!」


「今やってるわよ...えい!!【シンクロ】!!」


そう道留が叫んだとたん、彼女の手から黄色い光が放たれ、部屋中に拡散した。

そのあと、ソラだけに聞こえていた声は彼女らも聞けるようになっていた















―ゆえに、記憶とともに力も封印され、今のお前の状態は不安定―





不安定だと...困るの...?



―己の力の制御が利かなくなる―



あたしの...ち..から?















―だから、もうすべてを終わらせよう。―











その声はゆっくりと、そして冷たく言い切った。









―最初からお前だけに託すべきではなかったのだ...あの時、我らもお前と共に...

さすれば、お前がこれほどまでに苦しむ事はなかった...―



冷たい声の主がホンノリ暖かくそして申し訳なさそうに言った。



いいよ。そんなに自分を責めないであげて緑香みか青嵐せいらも、友梨ゆうりも、

アメシスもさ...あの時がんばったじゃない?






(母さん、これって一体...?)


アイコンタクトで夕歌が道留に話しかける。


(記憶が戻りかけてるのかも...きっとこの...

昔の友達みたいな人が話しかけているから...あの時言えなかった事を言っているのかも?

よほどのことがあったと見えるけど)


(ソラの方は無意識みたいだけど?目がおかしいくらいに半目だし)


(私たちが何かしゃべった時、きっとソラちゃん気絶しちゃうわ。)


(じゃあ、このままツッコマナイ方がいいってわけね。)



だから、アレはあたしができる範囲で覚悟の上でしたことだから...





―っ!だがっ!!だが、ただ単に先伸ばしただけ...状況はさらに悪化し続けて行く...

最悪の場合、お前の準備ができず、あいつらが攻め立てて来る。ならばもういいだろう?



すべてを終わらせようなんて言わないで緑香、ソレこそ悲しいよ...あたしは...

いい所も、悪い所もぜんぶひっくるめてこの世界が大好きなんだから。




そのソラの言葉に緑香と呼ばれた声の主はただ、黙り込んでしまった。

そして、少しした後、冷静さを少し欠いたように笑いながら言った。







―お前らしい。今も昔も、お前は変わってない。―





あなたは少し弱気になったね。昔より少し増したみたい。



そのソラの言葉を聴きながら緑香はフン...と、鼻で笑い、そして言い切った







―ならばお前の道をゆくがいい。我らはお前の盾となり剣となろう。―















―そして、こんどこそ、この戦いを終わらせよう。もちろん、

そこで大人しく出歯亀しているやつらも、参加の上で。―



「ちょっっっとまっっったあああ!!!だ~あれが出歯亀だってえええええ?!?!?!」


「あっ!夕ちゃん...!!」



「あ。やべ。」


「あ~あ...切れてるわ。テレパシーだったみたいね。」


「やっちゃたな。」


その途端、夕歌は背筋が凍るほどの殺気を浴びせられ、恐る恐る道留のほうを見てみた。


「ふふふ。夕ちゃん?こんな時、普通はどう返事をするのが正しいのかしら?

言って御覧なさい?」


「カ、母さん?笑顔が眩しいくらいなのに肝心の目から、殺気を感じるよ?」


おどおどしながら答えた夕歌は後に、鬼のごとく木っ端ミジンコにされたと言う...

もうわかると思うが、あの後にすぐ謝っておけばお仕置きは、あるいは

半分で済まされたんじゃなかっただろうか。




旅人その4へ続く

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ