旅人その14
こっからは普通なバトルへ突入しようかと思います!
彼女の様子が変だ。声も変わってしまっている。眼もどこを見てるのか虚ろだ。
「我ラハコイツラガ言ウ、アノ方ダ。服従シタ者達ダケ一時的ニソイツノ身体ヲ通シテ喋ッタリ動カス事ガ出来ル。時間ガ無イ、ソイツヲ渡セ。」
「アンタ...いや、あんた等は誰だ?!世界を壊して何しようとしてんのさ!!」
「面白イ退屈シナイ世界ヲ創ルタメ。ソノ為ニハ元ノ世界ガ邪魔ダ。ダカラ壊ス。ソレダケダ。」
「ふざっけんな!!」
祭歌に向かってパンチを仕掛ける。でもあっさり避けられ、仕舞いには
「確カニコイツハ回収シタ。サラバダ。イツカマタ来ル。ソノ時ハ覚悟シロ。オ前ヲ必ズ摂リコンデミセヨウ」
そう言ってそいつはアタシの前から姿を消した。
後に残ったあたしは何も信じられなくなって、何もしなくなって、涙が枯れるほど泣いた。
あたしが殺したんだ。あいつを。今なら分かる。あたしを何とか助けるために頑張っていたあいつを。
どこか捻くれてて、意地っ張りだけど、それでも心の中に優しさを宿してた。
そいつを、あたしが――――――
そうやって考える事しかできなくて。辛くて、苦しくて、悲しくて、重くて。
あたしなんか死ねばいい。そればっかり考えてた。
周りが見えなくなっていって...気がつくと、いつものように食事を取るべく台所の机へ。目の前には素晴らしい香ばしい匂いの食べ物が。色とりどりの野菜、スープ、オムレツ...お味噌汁や肉じゃがも美味しそうだったんだけど、どうしても心が頭に追いつけない。食欲も無い。それでも少し食べてたら、誰かが話す声が聞こえた。
「.....それでね、紅い水晶見つけたから見に行こ....」
紅い水晶...あの時のかな?と思ったら心の奥がズキンと痛み始めた。
「ど、どうかな?一緒にいかない?おねえ...」
「ふざけるな」
気がつくと、あたしは誰かにそう言っていた。たまらなくムカついたんだ。こんなにも苦しいのに、まだアタシを苦しめるなんて。そう思ってた。
「え?」
「聞こえなかったのか?」
顔なんて見る余裕もなかった。
「夕ちゃん...」
「ど、どうしたの、おね「ふざけるなと言ったんだ!」ひっ!」
バン!
いきなり机を叩いた。その衝撃で夕飯が目茶目茶になる。
「夕ちゃん!いい加減になさい!!」
大声じゃないけど、凄く怖い声を出したお母さんの怒鳴り声でハッと気ずいた。
何当り散らしてるんだあたしは...こんなに重いのは、こんなに痛いのは、自分が力を制御できなかったから。なのに、誰かに当たるなんて、それこそ下種がやる事だ―――
「ごめん。あたし、食欲無いや。」
そう言って自分の部屋へ上がっていく。ココに長くいちゃダメだ。また誰かを傷つけるかもしれない。
部屋へ戻ってから誰かが泣く声が聞こえた。
それから何日かしてソラが家へ戻ってくる気配が無い時、母さんの提案で迎えに行った。それが全ての始まりだったんだ。
ソラを救えた事で、あたしも救われたんだ。まだ必要とされてる、失ったものはあるけれど、まだ大切にできるものがあると、学んだんだ。
そこまで説明をし終わった後、空間は元のリビングに戻り、俊一も『がんばって。できる限り通信するから』と言い残し、通信は終わった。
「あれ、ソラ嬉しそうだね。何で?」
「えへへへ」
見れば何とも言えない華やかな笑顔をソラがしていた。
「夕姉ぇの事とか、過去の話とか、前は全然話してくれなかったから、すんごい嬉しいんだ。」
「あら、もしかして一人だけ何も知らなかったから仲間はずれだとでも思っていたのかしら?」
「...うん。でもさ、今は嬉しい。皆の事も、アタシの事も少し解ったからさ。」
今はまだ夜。なのに何故かドコかから暑い風が漂った。次の瞬間恐ろしいまでの衝撃波がソラ達を襲う!
バッコーーーーン!!
慌てて避けながら家の外へ出てみれば、3人の前に立ちはだかる巨大な青黒い鼠の体に蝙蝠の羽をつけた怪物が2体いた...
続く
次はバトル編!!