旅人その1
ども~。初めてココを使わせてもらいます。
ネムのろといいます。
色々間違いや失敗、投稿が遅れたりなどあると思いますが
気長によろしくお願いします。
モノクロの世界があった。白と黒だけのちっぽけな世界。そこには鳥や花、動物や人、どこにでもありそうな風景があった。
しかし、確実に他とは違う要素がそこにはある。
人はまったく動かない。時計も十二時きっかり止まっている。鳥も動物も何もかも、その世界では止まっているのだ。
まるで時間そのものが無くなってしまったかのよう。だが、一人だけその災害から逃れた者がいた。
少女…ただ一人ぽっちで町を歩き、森を抜け出た所で寂しくうつむく、やがてゆっくり空を見上げた。
かつては青い清みきった色の空は今では寂しく曇った二つの色で構成されていた。
「助けて...」
か細い声をあげる少女
だが誰も答えない
誰も聞こえない
時間そのものが止まってしまったその世界は、彼女以外動くものはない。
「許して...」
それは一体誰あてへの言葉なのか、なぜ許しを請う必要があるのか、少女はただ単にその言葉を繰り返すだけ。
震えおびえながら、何度も何度も。
そうしてる間、彼女から流れ出た雫は、幾千もの筋になって下へと落ちていった。
モノクロ(白と黒)の世界。沈黙の中で息をする緑のドレスを身にまとった少女。
気がつけば遠くに何か音がする。何かがこすれる音、いや、何かに亀裂が走ったかのような...そんな音。
繰り返していた言葉をいったんやめて、その音がする方へと足を運ぶ。
...ソラ...
「え?」
誰かの声がした。する筈のない声が
そら...いつまで...ているの?...
遠かった声がどんどんと大きくなっていく
「そーら!!!いいかげんおきろーーー!!!」
「ふぇ?」
目を開ければそこにはいつもの光景があった。なんだ夢か。とつぶやくソラの言葉につっかかって来る
姉
「ん?どうした?へんな夢でもみたんか?ゆうてみ、ゆうてみぃ?」と不気味に横だけで笑う姉。こわい、こわいから。顔近いし
「夕歌姉ちゃんには言っても無駄だと思うし止めとくよ」とソラが言うと更に突っかかってくる。
言えない内容なんだ~そ~か、そ~か~と言いながら部屋を後にする姉の背後からはなんとも不気味なオーラが漂っていた。
やばい。なんだか知らないがヤバイ。こんな姉は何かたくらんでいるって言うか百パーたくらんでる。
絶対何かよくないことをやらかすに決まっている。
だが、それよりも体がだるい。重たい。うまく動けない。
どうしたものかと幾度となく起き上がろうとするが、体はまだ寝ていたいのか、なかなか思うように動けない。
「どうした?」
気がつけば、もうそこにはいない筈であろう姉がいた
「あれ?夕歌姉ぇ?まだいたの」
珍しい...とソラが言うと姉はずかずかとソラのベッドまできて思いっきり
ばしっ!
「いっだあ?!なにすんの?!夕姉ぇの“でこピン”はものすっごく痛いのに!」
おでこをさす痛み。鏡を見てみると真っ赤にはれていた。それとなぜか自分の顔がうっすらと赤みがさしてるような...?
あれ?おかしいな...昨日は...
そんなコトを考えていると、夕歌がその隙を狙ってもう一度でこピンしようと指をちかずけた。哀れソラはあまりの急展開についていけず思わず目をつぶるしかなかった。
覚悟を決めて、来るはずであろうその衝撃に耐えるために身を構えた
だが、その衝撃はいつまでたっても来ず、代わりに温かい手がソラのおでこに触れた。
「ゆう...ねぇ...?」
恐る恐る目を開いたソラは驚いていた。いつも活発で生き生き、甘えんぼで少し意地悪な姉が珍しく、心配そうな、暗い顔をしていたから。
「驚いた。そんな顔もできるんだ。あでででで...っ!痛いって夕姉ぇ!」
ソラのほっぺをおもいっきりつねる姉だが、顔は深刻なまま。
「どうやら熱が出たみたいだね。プールは当分お預け。ただの風邪だと思うし、寝りゃあなおるっしょ。」
じゃあね。母さんに言っとくからあんたは寝てろ。そういうと夕歌はすたすたと部屋を出て行った
「らしくないなぁ...」
そう、らしくない。熱なんてだけで姉が、あのサディストの姉があそこまで心配するなんてありえないはず...
「夕姉ぇも風邪?」
いやいや、そんなはずは。と首を振る
「馬鹿は風邪ひかないって言うし。」
一方そのころ
「へっっっっくし!!!」
「あら?どうしたの急に?風邪かしら」
ずず...はなをすすり、指で押さえながら夕歌はお母さんに違う違うと手を振った
「きっと誰かがうわさしてるだけだって」
健康はぴか1、その上気をつけてるし。それなりにがんばっているし...
「て言うかソラが悪口言ってそう」
「それで、ソラちゃんの具合はどうなの?」
「ああ、うん。変な夢見たみたい。それで起きたら熱が出てた」
「大丈夫なの?あの子最近変だったからちょっと心配だったのよ。」
「うん、大丈夫みたいだよ、寝てれば直ると思うけど...」
夕歌は少し真剣になって机の上で手を重ねて顔を支えた
「けど...最近夢を見てる時、あの子うなされてるみたいだったから...たぶん、記憶が戻るのは
そう遠くない気がする」
「そう...」
二人はしばらく深刻な顔をしていた
「らしくないな...」
と、夕歌が突然シリアスなムードを壊した
「なにが夕ちゃん?」
「あたしが、らしくない」
誰かの心配をするなんて。ましてやそれが、ソラだなんて。
「ソラはあの日―」
そこまで言いかけて夕歌はやめた。過去を振り返るなんてそれこそあの人たちと同類になってしまう。
「ほんと、らしくない」一言自分に文句
疲れているのかもね。休暇をとったら?と、母さんは言う。ふふふと笑いながら
「昔と比べるとかなり変わったと思うわよ」
「だれが?」
「あなたたち」
む~といいながらしかめっ面をする夕歌を見ながら母さん、もとい、道留は優しく微笑み返すだけだった。
「どこが変わったと思う?」
「ぜんぶ」
「えぇ~?!なにそれ~?」
「成長したって事でしょう?」
「...やっぱり道留母さんには、かなわない」
「あら?夕歌ちゃんの顔が赤い。熱かしら?」と、覗き込む道留の顔をあわてながら押し返す夕歌
「違うから。ありえないから。」
「ふふ...じゃあ照れてるのね」
「ちっちちちがうって!!」
そうこうしてる間に朝食ができた。丸い白いお皿に二個の目玉焼きが軽やかに焼いた食パンの上に載っている。そのお皿の端っこにはプチトマトが三個と青々としているレタス。道留オリジナルの特性ソースも机の上に載っていた。コーヒーポットとお茶用のポットもあった。
「ソラちゃんが時々紅茶がいいって言うから」
「うん。あたしも時々そうだし。母さんの紅茶は特別うまいし」
この喉ごしがたまらないんだよね。と言いながら紅茶をすする。なんとも香ばしいすっきりした、どことなくほろ甘いこの道留特性の紅茶は他の人では得とくするのにきっと数年はかかるだろう。と言うか得とくできるのかすらわからない、そんな紅茶である。
「ソラちゃんには後で持って行ってあげてね」
「へーいへい」
そんな中、ソラはと言うとまた眠りにつこうとしていた。下の方から香ばしい卵と紅茶の匂い
「少し寝てから食べにいこっかな...」せめてこのダルさが治まってから
目をゆっくり閉めていく...やがてあたりが暗闇に満ちた時、ソラは不思議な声を聞いた
―青嵐...きっとあなたは緑香には敵わない。ちかずいた瞬間殺されるのが関の山だろう...それでも行くのか...?
すると、違うほうからべつの、若々しい生き生きした聖女の声がした
「いやいや、青嵐一人ならまだしも、このあたしがいるんだから」
「そうか...死にはしない...か」
だが、それでもぎりぎりだろう。
―それでも、行かなければ...―どこからか、また別のこえがする。こちらは若い女のような声、しっかりしていて、透き通った感じの声だった。
行かなければ...きっと...
きっと...
「きっと?」
「うぅん...ん?」
「きっとなんだい?」
「うっわあああああああ!!!!?夕歌姉ぇ?!?!」
「うっさい!」
げんこつの音があたりに響いた
「ひ、ひどい...病人に向かって...」
「熱はもう無いみたいだけど?」
それでもまだ病人か?と聞く夕歌。確かに熱はもう無いみたいだが
「病み上がりだよ」
「何だそれだけか」
「かるぅ?!もうちっと心配しようよお姉様?!」
「え~?だってあんた基本健康だし、丈夫だし」
たしかに。ソラは体のほうはそうは見えないがかなり丈夫なのだ。どんなに転んでも少しすりむくだけで早く直るし。
なんでだろう?最近は疑問ばかり増えて行く。ちょくちょく見る変な夢もそう。内容があやふやで、同じのを何度も見たり、見なかったり。
場所もココではない別のところ。今まで見たことがあるような、無いような...
時々襲われるように来る胸の痛みも、なぜだか涙がこみ上げてくる様な日も、さらに誰かが叫んでるような気も滅多にはないがする。
こう、なんて言うか、自分の中から~みたいな...
「うーん...そんなはず無いんだけどな~...」
どこかおかしいのかな...そんなに気に留めることではなかったはずだった。しかし、日に日におかしなことが増えて行く...そう、まるで、もやがかかった中を幾度となく彷徨っている感じだ
「頭に霧がかかっているみたいな、すっきりしないんだよね。最近。」
「へえ、そう言えば、あんた最近独り言多くなってきてるから気をつけな」
「!夕姉ぇ?!もしかして聞いてた??!」
だから忠告してんよ。他だったら絶対変に思われてたから。そういうと夕歌はまた部屋を出て行く
「それと、朝食、食べ終わったらお皿きちんと持ってくること!以上」
パタンとドアが閉まる音
「もって行ってはくれないんだね」
はあ...とため息一つ。うん、夕姉ぇらしい。と言いながら食パンにがぶりつく。そして、そこで彼女はあることに気がつく
『だから忠告してんよ。他だったら絶対変に思われてたから。』
「それって『他の人達には変に思えただろうけど、あたしたちは違うから大丈夫』ってことじゃない?」
どうして夕歌姉ぇたちには変じゃないんだろ?疑問に思いながら今までのことを振り返る
確かに今までそういった言葉がなかったわけじゃない、おかしなところは沢山あった、でも、ソラのほうもあまり気には留めてなかった、いや、ただ単に逃げていただけかも...
そこまで考えた後、一応は食事を済ませ、階段を下りていく。
「そういえば、子供のころのこと、まったく覚えていないな...15歳あるけど」
旅人その2へ続く
続きは 旅人その2へ!