第九話「テンプレもあるらしい」
「いってきまーす!」
俺はスコップを片手に意気揚々と村を出発する。
「いってらしゃーい!」
「無事に帰れよー!」
お見送りには幼馴染二人。
随分引き止められたが、最後には折れてくれた。
特にグリーヴァが猛反対してきたが、LVアップした俺の暴力で分かってもらえた。
俺はあれから一日八時間、毎日うりぷーを突いては突く生活を送っていた。
その甲斐あってレベル10に到達。
やっと村の外に出ても即死しないであろうところまできた。
ただ、現状だとステータスウィンドウが開けないので、ステータス値を見られない。
どれくらい自分が強くなったのかはわからないが、レベルアップによるステータスの上昇値は下振れで計算しておいたほうがいいだろう。
だって個体値最弱のシヤだから。
LUKもどうせ低いに違いないのだから。
「とりあず、エンカウントは極力避けていこう」
俺は声に出して今回の旅の方針を再確認する。
もう、痛いのは懲り懲りだ。
そして、今回の目的地は村から一番近い都市の先にあるダンジョンの奥。
祭壇がある場所の超重要アイテムの入手がミッションだ。
あと、都市で上手いこと拠点を作るのがチャレンジ目標。
ゲームじゃ無理だけど、この世界ではワンチャン?
「む。モンスターか」
道の外れ、視線の先にモンスターの影が見える。
あれはカラス型のモンスター、クロガラスだな。
奴が反応するのは6マスから。つまり3メートルだ。
ゲームでは彼我の距離を測るのは容易い事だったが、現実になるとそうはいかない。
俺は職人でもなんでもないので、目検で距離なんて測れない。
「今後の課題だな……」
これは生死に直結する問題だから修練せねばな。
距離を測れない俺は、念の為にクロガラスから大きく距離をとって道を行く。
「戦っても負けないんだからな! 消耗を避けたいだけなんだからな!」
小さくなった影に向かってキチンと言い聞かせる。
侮られるかもしれないからな。
こう言うことはちゃんとしておかないと。
その後も俺はモンスターをやり過ごしながらも道を進み、1週間かけて第一の目的地である都市に到達した。
大きな門を潜ってすぐに目に付くのは、広い大通りの先にそびえ立つ白亜の城。
尖った青い屋根のゴシック様式。
千葉の夢の国にあるのが分かりやすい。
「お泊まりはこちら〜!」
「貴重な果物があるよ〜!」
「エーアスト名物の鉛筆はこちら〜!」
「ドロップ品買うよ〜!」
そして、目抜き通りを行き交う人々。
呼び込みを行う商人のでかい声。
「おぉ〜」
自然と口から感嘆の声が漏れる。
村では見ることはできない活気に満ち満ちている。
思いの外くるのに時間がかかったが、これを見れただけでもその価値はあった。
白い壁で統一された建物。
屋根の色で個性を出しているのか色とりどりだ。
見える範囲では二階建て以上の物件は見当たらない。
綺麗に高さが揃えられている。
目に付く店々は、ひさしの下で物を販売する方式の様だ。
まるでバザーのようにも見える。
店の周りにはそう言うルールでもあるのか、これまた色とりどりの草花が飾られている。
その建物に挟まれている広い道は白い煉瓦が敷き詰められている。
人が大勢行き交うのに綺麗なものだ。
非破壊オブジェクトではなかったはずだが、この景色に水を刺すよりはいい。
言ってみれば、RPGではよくみる城下町だ。
だが、そんなありきたりの都市であっても、俺は感動を禁じ得ない。
改めて、ビルダーズグレイブの世界に来たのだと体が震える。
プロのデザイナーさんがデザインし、プログラマーさんが作った建物が、実際に、目の前に、沢山あるのだから!
「実際に見るとこうなっているのか……。建築の参考になるな!」
いずれ俺も建築をする身。
素材やブロックの置き方など、見逃せない情報に満ち満ちている!
「どけどけー! 真ん中に立ってんなぁ!」
感慨に耽っていると後ろから怒声が聞こえてくる。
咄嗟に道の端に寄ると、横を馬車が通過していく。
街の人は慣れた様子で避けていた。
「そうか……。人が生きていれば交通手段もあるか」
これはゲームになかった要素だ。
馬がいたり、御者がいたりはしたが、馬車が行き交っているシーンはなかった。
そうだよな、先ほどの商人たちが売っているものもドロップ品。
それを手に入れてくる冒険者も当然存在するわけで。
さらにそれを運ぶ馬車もあるわけだ。
もしかすると、馬車に乗って都市から別の場所に行く人もいるかもしれない。
「そうなると、問題は重要人物も移動するのかだ」
イベントを起こそうとした時に、本人が不在である可能性があるなら、由々しき事態だ。
「やはり、大幅に攻略の前倒しが必要だな」
3ヶ月間バカンスです、とか言われたら大変困るからな。
「グリーヴァもさっさと仕上げちゃおう」
俺がグリーヴァ改造計画を思い描いていると、またも後ろから声がかかる。
「お兄さん。恵んでおくれよ。もう、三日もまともな物を食べてないんだよぉ」
振り向くと、いかにもストリートチルドレンといった風体のガキが、木のボウルを持って佇んでいる。
「嘘つけ。栄養棒があるだろ」
この世界は食うだけには困らないんだ。
そう俺が言うとガキは憮然とした態度で言ってくる。
「あんなのまともな物といえないだろ、ゆで卵食いたいんだよ。金を恵んでくれよ」
それしか食ってない俺もいるんですよ?
しかもこの2週間回復アイテムとしてストックするために、一日一本しか食べてないんですよ?
俺がゆで卵食いたいんですよ?
ちなみに、ゆで卵はこの周辺にいる、ニワトリ型モンスターの通常ドロップだな。
HPを10回復するので栄養棒がないときや、ちょっと回復したい時の序盤のおともだ。
「お前の目は節穴か? 金なんか持ってるわけないだろ。人を見て声をかけろ」
そう言うとガキはあからさまに態度が変わる。
「チッ。なんだよ大層なもの持ってるから勘違いしちまったぜ。あぁあ。時間無駄にした」
ぶち転がすぞガキ。
だが、お子様には大人なで紳士的な対応をしなくてはな。
「目が節穴で、その無能さゆえ時間を無駄にしちまうなんて、なんて可哀想なガキなんだ。俺だったら自分が哀れすぎて生きていけないぜ。お前はすごいな。消費するだけの人生でも諦めないなんて」
俺の紳士的な言葉に一瞬ポカンとするガキ。
「うるせぇ! 貧乏人が! 俺と大して変わらねぇじゃねぇか! 死ね!」
そう言いながら走り去るガキ。
うむ。たくましくて良いことだ。
俺と同じようにマズイ栄養棒を食って大きく育つがいいぞ。
「だが、そうか。このスコップは確かに分不相応に見えるか」
俺はスコップを手に思案する。
この世界にも金は存在する。
ドロップ品を売り買いするためが第一。
その他、宿屋だったり、温泉だったりのレジャー施設。
いわゆる、サービス業。
それらにもお金を払う。
そしておそらく、このスコップも売って金に変えることができるだろう。
ただの村人に見える奴がこんなの持ってたらカモネギだ。
この国は治安が良いが、それでも衛兵がいて牢屋がある以上、犯罪者もいるはずだ。
走っている馬車が存在していたように。
「おっと! いてぇなぁ」
「しつれい」
つい歩きながら考えていたせいで人にぶつかってしまった。
「いてぇ! これは骨が折れてるなぁ!」
「大丈夫っすか、兄貴〜。お前なんてことしてくれてんだぁ!」
顔を上げると背の高いモヒカンと、デブのチビがこちらにガンくれていた。
……おぉ。転生イベントだ。
ちゃんと用意してくれていたんだな女神様。
お読みいただきまして誠にありがとうございます!
あらかじめ作られた建物って凄まじいですよね。
あのセンスはどうやって磨いてるんでしょう?
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