第七話「ジジイと長々話さないといけないらしい」
「こんちゃーっす!」
ところ変わって村長宅。
ドアをどんどこぶっ叩いて入室の許可を願う。
「誰だ! アホみたいにドアを叩きよるのは?!」
何故かプンスコしたジジイがドアを開けてくれる。
「こんちゃーっす!」
俺は元気にジジイの耳元で挨拶する。
「うるさい! 耳が壊れるわ!」
むぅ。元気な挨拶は人間関係を円滑に進める第一歩なのに。
ジジイは常識ないな。
「中入っていいすか?」
そう言いながら室内に入る俺。
「まだ、良いとは言っておらん!」
「もう入っちゃった」
てへぺろ。
「お主……。いや、まぁ良かろう。入るがいい」
もう入っちゃってるってば。
ジジイは忘れっぽいなぁ。
「して、今日は何ようだ?」
俺が憐れみの目で見ているとジジイが座りながら聞いてくる。
俺? もう座ってるよ?
「今日はお願いがありまして」
「お願い……?」
ジジイが訝しげに聞いてくる。
「スコップください」
「やれるか!」
「むぅ。そんなご無体な」
「家宝のスコップぞ! そう簡単にやれるか!」
またもプンスコなジジイ。
やっぱりダメか。
「そうでなくとも、ワシはお主に不信感を抱いておる」
む? こんな好青年を捕まえて何を怪しむのか。
ジジイの胡乱げな物を見るような眼差。
「気のせいです」
アルカイックスマイルで全く怪しくないことをアピール。
「それだ。今までのお前ならば、そんな態度を取らぬ」
訝しむ気持ちMAXの爺さん。
なら、お年寄りを安心させるために答えてあげよう。
「そりゃそうですよ。別人ですから」
「なっ?!」
俺の発言に目を見開くジジイ。
シヤがこれほどまでに弱いとなると、色々間に合わない可能性がある。
だから最初の最初。
勇者にあの森の先の情報を伝える役目を負うこのジジイを抱き込むしかない。
そして俺には策がある。
「ならば……。お主は何者だ!」
今にも飛びかかってきそうなジジイ。
俺は神秘的かつ威厳が出ているイメージでロープレ開始。
「落ち着いてください。物創りの末裔よ」
先ほどよりも更に目を見開くジジイ。
目が取れそう。
「な、何故それを……。まだ、グリーヴァにも伝えておらぬ一子相伝の秘密!」
設定資料集で知りました。
「あなたの一族が、勇者を物創りに導く責を負うていることも知っていますよ」
これは適当。
「そこまで知っておるとは……。ならば、まさか、もしや、お主はモノヅクリが何なのか知っておるのか?!」
ジジイが前のめりで聞いてくる。
打てば響くとはこの事。
聞いて欲しいことを聞いてくれる。
流石NPC。
「知っています」
「おぉ!」
俺の端的な答えにジジイが喜色を浮かべる。
「安心なさい。あなた方が代々受け継いできた物創りは世界を平和へと導くでしょう」
「おぉ。おぉ!! ならばワシらのやってきたことは無駄ではなかったのだな?!」
噛み締めるように言うジジイ。
まぁ、分からんでもない。
「して……、モノヅクリとは?」
恐る恐ると言った感じで聞いてくるジジイ。
ふむぅ。フラグ踏んでない状態で理解できるか?
まぁ、なんでもやってみるもんだべ。
「この世界の人間たちは物創りを認識できないのです」
「認識できない?」
「そうです。魔王にそう呪われているのです」
「魔王?!」
腰を抜かしそうなジジイに威厳を持って頷く。
「それでも説明するとすれば……。この家は誰が産んだのでしょうか?」
「家は生き物ではないので生まれない」
ジジイが当たり前のことを言う。
「では、何故ここに在るのでしょう?」
___さて。この質問を認識できるか?
「ずっとココにあるから……。いや、ではその前は……? ずっと前もある。前からある。あるからある。ある」
虚になるジジイ。
うむ。実にNPCっぽい反応。
やっぱりフラグ踏まないとダメか。
この呪いという設定は、ちょっとやそっとじゃ、突破出来ないということがわかった。
「はっ! ワシは一体……?」
あっちに行っていたジジイが帰ってきた。
「おちちつつきなさい」
「うむ。おちち……おちち?」
「落ち着きなさい」
「う? うむ」
随分取り乱しているようだな。
「今のが呪いです」
ジジイは、うぅむと唸る。
「確かに突然頭にモヤがかかったようだった。そうか、ワシではモノヅクリを知ることはできないのか……」
とてつもない好物をお預けにされた犬よりも残念そうに呟くジジイ。
「安心なさい。少なくとも、この村は近日中に物作りができるようになります。私がそうします。そしてそう遠くないうちに、勇者が現れるでしょう」
俺は断言する。
「なん……だと? まさか、お前は……、いや貴方様は!」
チョロい! ゲームのキャラはチョロい!
そんな胸の内を、おくびにも出さず、俺は両手を広げて宣言する。
「私は女神様の使徒。あなた方を導く存在です」
「おお! 使徒様で在らせられたか!」
ジジイが感極まったように信じ切って俺を拝む。
なんで信じたかというと、勇者出現の告知は女神がする設定だからです。
逆説的に告知した俺が女神です。
女じゃないので使徒です。
あと、使徒ってのは多分嘘じゃないと思うんだ。
じゃなきゃ、こんなご都合主義展開にはならないだろ。
何かしら女神様の思惑があるはず。
そうだろー? いたら返事しておくれ、女神様よ〜。
「そういえば使徒様、スコップをご所望であると」
俺が心の中で女神様に語りかけていると、ジジイがおずおずと聞いてくる。
はい、そうですね。そのためにこんな茶番をしたので。
「その前に態度をいつも通りにしてください。正体が露見することを私は望みません」
「ですが……。分かりました。いや、わかった」
恐縮しながらも聞き分けるジジイ。
殊勝なことでよろしい。
「うん。俺もいつも通りにすっから。よろしくジジイ」
「いや、それはいつも通りではない!」
名もなきNPCの割にツッコミが冴えるな。
「人は成長するもんだぜジジイ」
「シヤはそんな無礼に成長しない!」
おぉ。面白いな。
ウケるという意味ではなく、興味深いという意味で。
人間みたいな反応なので。
「思春期だから仕方ないね」
「思春期だからって……。むぅ、あるかもしれん。孫も変わったわけだし」
ジジイはグリーヴァを思い出してか、顎ヒゲを扱きながらうなる。
「グリーヴァの成長は喜ばしい?」
俺の問いかけにジジイは嬉しそうに相好を崩す。
「もちろんだ。あれだけ聞かん坊だった奴が、見事に成長したのだからな」
グリーヴァは過去からグレているという設定だったからね。
家族としては嬉しいだろうね。
だけど、それは実際にあった過去なのかな。
それとも設定された過去なのかな。
つまり……人間か? プログラムか?
接し方変わるよね。人間と人形だと。
「んじゃ、本題だけど内容は二つ」
それはさておき大事な話。
俺の立てた二本の指を見つめながら固唾を飲むジジイ。
「拝聴いたします」
畏まったジジイに要件を伝える。
「一つ目はさっき言った通り、家宝のスコップを俺に寄越すこと」
「ふむ。分かりました」
スコップってのは部屋の奥に祀られている奴だな。
そして万が一の保険。
「二つ目は勇者に禁足地の洞窟へ誘わないこと」
「な! 何故です?!」
ジジイが過剰なほどの驚き声を上げる。
それもジジイの一族の役目だからな。
だが俺は端的に答える。
「この村が滅びるからです」
「……いま、なんと?」
ジジイは掠れた声で聞き返えしてくる。
「この村は滅び、勇者と数名が生き残るのみ。貴方も私も死にます」
ジジイは愕然とした顔を浮かべた後、顔を真っ赤にして叫ぶ。
「そんなはずはない! 我が一族の役目が村を滅ぼすことなど信じられぬ! 戯言だ! 嘘だ! モノヅクリが世界を平和にするのだ! 勇者がモノヅクリを平和にする、それを手伝う役目だ!」
ジジイは支離滅裂のうえ、半狂乱で叫ぶ。
これは、プログラムが設定された役目をこなせない事で、拒否反応起こしたのかな?
一応聞いてみよう。
「村を犠牲にしてでも役目を果たすか? それとも村のために役目を放棄するか。どっちだ?」
俺が問いかけると、ジジイは時が止まったように動かなくなる。
あ___フリーズした?
そう思ってるとジジイが再起動する。
「いや……。村を犠牲にしてまで通すべき筋ではない」
ジジイは呆けながらいう。
「ワシは何を取り乱していたのであろう。何故村が滅ぶことよりも、役目を全う出来ぬことに正体を失ったのか……」
ジジイは愕然と自分の手を見つめながら呟く。
「使徒様。一つ。一つだけお聞かせ願えませぬか」
ジジイが懇願するように聞いてくる。
「コレだけお答えくだされば、ワシも疑心なく行動できまする」
疑問を持つのは人間の存在証明だよなぁ。
でも最近のAIは自己のアイデンティティに疑問を抱いたりするし。
「元のシヤはどうなったのでしょうか?」
そんな俺の葛藤をよそにジジイは聞いてくる。
俺も答えは知らん。
存在が消えたか、俺の内なる部分にいるかどっちかだ。
「残念ですが……。シヤは私が顕現する前に亡くなっています」
知らんから適当に済ます。
「なんと……」
ジジイは悲壮感漂う顔で口を押さえる。
「私は抜け殻になった彼の体を借りたのです。彼には多大なる感謝をしなければなりません」
ビルダーズブレイブを楽しめるのだからシヤには感謝。
ただ、個体値の低さはいただけない。
「彼の助力に応えるためにも、物創りをすべからく世に広めねばなりません。協力してくれますね?」
俺はジジイに握手を求める。
ジジイは両手でそれに応えると何度も頷く。
「勿論ですとも! 共に世界を平和へと導きましょうぞ!」
今の回答でいいんだ。
ご都合主義だなぁ。
ブンブンと、いつまで経っても握手し続けるジジイを引き剥がし、やっと本題のスコップに手をかける。
長かった……。
俺は心の中で愚痴を言いながら、ふと思い立ってジジイに問いかける。
「そういや、ジジイ。名前なんだっけ?」
ジジイは眉を吊り上げて応える。
「ジジイではない! ホロ村長001じゃ!」
俺はその言葉を聞いて思った。
デバック用の名前じゃん……。と。
お読みいただきまして誠にありがとうございます!
また村長との話で終わりました。
なぜ? 早くモンスターを狩りたいのに……
早く未亡人を攻略したいのにっ!
すまねぇ、すまねぇ。俺の文章力が落ちたばっかりに……
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