第五話「シナリオは壊せるらしい」
短めです。
「今日は来てもらって悪かったな」
ジジイが偉そうに社交辞令を述べている。
ぶっちゃけ、こいつには思い入れもないし、偉そうだしで印象は×
偉そうなジジイは自分勝手な注文をしてくるから嫌いだ。
こう言う手合いに限って、お客様は神様だとか抜かしよるのだ。
まぁ、でも今の俺はシヤであるからして、一応神妙にしておく。
「今日来てもらったのは他でもない。次期村長候補のことだ」
知ってたぜジジイ。
「シヤよ。村長候補のこと今一度考え直してくれぬか?」
「おじいちゃん、もうそれは断ったでしょ?」
しつこいジジイに俺は嘆息する。
「お、おじっ? これシヤ! わしは村長じゃぞ、そんなに気安く……」
声を荒げるジジイを俺は手で制す。
「真に村を案ずる青年を見極められずして、村長のお務め、相成りますか?」
俺は慇懃無礼にジジイに告げる。
「……わしでは不足と申すか」
俺の言葉にジジイの目が細まる。
……流石に長を名乗ることだけのことはある。
それが設定されたものだったとしても、その眼光には歳を感じさせない鋭さがある。
されど、俺も様々な客を相手してきた身。
この程度たいしたことはない。
むしろ俺は睨み返して答える。
「その職を全うできぬとあれば」
こういうジジイには一歩も引いてはならない。
ここでハッキリと態度を示しておく必要がある。
「それがグリーヴァを次期村長候補に選ぶことと申すのか?」
「よくご覧あれ。彼であればその職、相務まりましょうや」
横を見れば身じろぎもせず、背筋を伸ばして凛と正座するグリーヴァ。
先日、顔を真っ赤にして俺を睨みつけていた男とはまるで別人のようだ。
もとより、勇者との旅で成長したグリーヴァは見事な男ぶりだった。
その素質が彼にはあるのだ。
「むぅ……」
当然、毎日顔を合わせている人間であればその変容に気づくだろう。
その姿を見てジジイは顎鬚を扱きながら唸る。
「だが得心がいかぬ。何がお前をそこまで変えたのか」
ジジイがグリーヴァに問いかける。
「ここにいるシヤに、心を入れ替える様に促されました」
普段と違う、丁寧な受け答えに驚き眉を上げるも、ジジイは強く問い詰める。
「他人の言葉で生き様を軽々と変える人間にこの重責、務まると思うか?」
その問いにグリーヴァは静かに言う。
「務まります」
ジジイは再び問う。
「何故そう思う?」
「俺の心底は、父が死んでから一度も変わったことがありません。村のこと。村に住む人々のこと。それらを守る。父の意思をついでそれらを成し遂げる。この意思は誰にも負けません」
ハッキリと断言するグリーヴァ。
そこには強い意志が感じられた。
これは彼の本音だからな。
真実の響きが宿っているだろう。
ジジイは強い意志の込められた言葉に、ますます眼光を鋭くする。
「ならばもう一つ問おう。その様に思いながら、何故この数年間を無為に過ごした?」
グリーヴァ君がグレちゃったことを言っているのだろう。
多分、ジジイも彼を諌めたりしたんだろう。
それでも改めなかったんだから、当然の質問だろう。
愚痴みたいなもんだ。
そう。当然の質問だ。
「それは……。俺の未熟さが原因です。父の死を、モンスターなんかに負けた父の死を、受け入れられなかった」
教えた通り、己の情けない内心を、それでも真っ直ぐに答えるグリーヴァ。
それを、目を細めて見つめるジジイ。
「……父のせいにするのか?」
「そう取ってもらってかまいません」
しばらく二人は視線を交わし、ジジイが優しい口調で問いかける。
「……乗り越えられたか?」
「……はい」
万感の思いで応えたであろうグリーヴァに、ジジイは笑みを浮かべる。
「そうか……。そうかッ」
言葉が続かず、目を手で覆うジジイ。
ゆうても残った、たった一人の家族。孫。
彼が何を思っているのか知っていたはずだ。
どうにかしてやれない自分に無力感を覚えたかも入れない。
何もしてやれない自分を歯痒く思ったかもしれない。
だが今この時、二人の心を覆う厚い雲は晴れたのだ。
そして同時に、これはこの問題の攻略を意味していた。
「んじゃ、後は家族水入らずということで。お疲れっした〜」
肩を抱き合う二人を横目に俺は村長宅を出る。
「あ〜! うまくいったぁ〜!」
俺は次期村長などという、攻略の邪魔でしかない役職から逃れられた事で沸き立つ心を抑えられずにいた。
村長なんかになったら、旅に出られないもの!
攻略進められないもの!
さぁて! まずはアレを取りに行って、その後アレ作って〜、そしたら〜
「まてよシヤ!」
俺が攻略スタートに思いを馳せていると、後ろから声がかかる。
「なんだねグリーヴァ君。俺はコレから大変に忙しくなるのだが?」
ジジイと抱き合っていたはずのグリーヴァが、赤い目をしながら現れた。
「い、いや。爺さんが俺を村長候補にしてくれるって。お前に言われた通りにしたら本当にそうなった」
うん。そうだね。当たり前だね。
俺くらいになると、ジジイを説得するくらい出来ちゃうの。
何故なら、ビルダーズブレイブのシナリオライターさんの手がけた作品は、死ぬほどやりこんだから。
シーケンスブレイクはシナリオライターさんとの戦いでもあるから。
だから、情報があればどういう会話を繰り広げるかくらいわかっちゃうの。
ましてや今回は、身内のグリーヴァ君からの情報提供もあったから余裕っすわ。
接客業舐めないでもらいたいっすわ。
クレーマーを、こっちの提案に着地させるくらい朝飯前なんすわ。
___そうです。俺がそうなるように、させました。
「よかったね。それじゃ! 俺忙しいので〜」
「あ、おい!」
呼び止めるグリーヴァ君を尻目に颯爽と去るぜ!
さて、これでグリーヴァ君に俺の言うことを聞けば、うまくいくと刷り込みが出来た。
ジジイに孫を更生させた人物として、真に一目置かれた。
更生したから、好きになってもいいと言う、言い訳がファムに立つ様になった。
何より、NPCの俺がストーリーから逸脱できた。
モブに転生した俺でも確実にできる。
ストーリーを壊せる。
シーケンスブレイク。
___さぁ、シナリオをぶっ壊そう。
お読みいただきまして誠にありがとうございます!
ちゃんと読めると思った方は下の☆ ☆ ☆ ☆☆を★ ☆ ☆ ☆☆こう!
面白いなと思ったら下の☆ ☆ ☆ ☆☆を★★★★★こう!
まだの方はついでにブックマークなどもお願いしたい!
いいねと感想もお待ちしております!




