第十六話「何かを得るためには努力が必要らしい」
「乱数の神よ! 我に与えたもう!」
本日の私は、先日作業台を手に入れた神殿に来ております。
神殿内部に入る為の入り口は、独自に作成したため、ダンジョン的には最奥からスタートが可能だ。
ここの適正レベルはLV30。
今の俺では到底クリア不可能なダンジョンだ。
だがそれは真正面から挑んだ場合の話。
当然ブロックで安置を作って進むに決まっている。
しかし、ここで気をつけなくてはいけないのは遠距離攻撃の存在だ。
特に爆発系は良くない。
足場用のブロックごと破壊してくるから良くない。
たまに建築した作品を破壊されるので、頭に来ちゃうから良くない。
と言いつつも、今回のお目当てのモンスターは、遠距離攻撃を持っているんだけど。
しかも、即死の呪いだ。
とても危険なのでブライトとロトンドは置いてきた。
アイツらにドッグタグを作ったために、鉄鉱石が足りなくなってしまったので、それを工面する為の強行軍だ。
危な過ぎるが、鉄鉱石の為には仕方がない。
と言うことで、今回も安置からスコップでモンスターを突っついている。
モンスターの名前は『デスサイズアバター』
鎌を持っていて浮遊している、分かりやすい死神だ。
攻撃方法は鎌の強力な物理攻撃と、口からドクロの形をした即死の呪いを飛ばしてくる。
鎌の攻撃はブロックがブロックしてくれるが、呪いは貫通してくる。
だがしかし。
俺には先日女神様にもらった呪いよけの指輪があるので完全耐性!
遠慮なくスコップで突けるというものだ。
わっはっはっは!
「えい、えい、えい、えい、えい、えい、えい、えい、えい、えい、えい、えい」
……きつい。
LV差があるから、いっぱい突かなきゃいけなくて、つらたん。
一体倒すのに、ものすごく時間がかかる。
もちろん、その分レベルも上がるが、この身体貧弱につき。
まともにSTRがあがらぬ。
魔法も覚えぬ。
LUKも低いゆえクリティカルも知らぬ。
ただ実直にスコップを突き出すのみ。
「でてくれ〜。頼む〜。なんだったら十体目くらいで出てくれ〜」
口で言いつつも、そんな事はないと知っている。
本日ドロップしていただきたいアイテムは、そのまま「デスサイズ」
確率でモンスターに即死を与えるという逸品。
ドロップ率は256分の1。
256分の1。
256回倒せば出るって意味じゃないぞ?
常に256ある中から一つの当たりを引かなきゃいけないんだぞ?
無理くね?
あと、50%で死神の端切れと言う、あんまり使い道のないアイテムがドロップして邪魔してくる。
2分の1は引かず、256分の1は引き当てる。
無理くね?
いやだめだ。
弱気になるな。
必ず手に入ると信じるんだ。
いやだめだ。
物欲センサーが反応する。
「アタシぃ〜、デスサイズとかぁ〜、興味ないんでぇ〜」
ふぅ。危なかった。
これでセンサーが反応することもないだろう。
無心だ。無心で突くのだ。
「頼む〜。出てくれ〜」
そして時はすぎ___
___出すのに一週間かかった。
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「兄貴ぃ。これが今回の分の栄養棒だぜぇ」
ブライトがテーブルの上に山盛りの栄養棒を積み上げる。
「いつもすまないねぇ」
俺はいそいそと、半分だけアイテムボックスにそれをしまう。
ブライトとロトンドが一日二食にしてコツコツ貯めてくれた物だ。
「まぁ、一食抜くくらいどうって事はないけどよぉ。コイツじゃぁちょっとした傷しか治せないぜぇ?」
「俺にとっては体力の半分くらい回復できる神アイテムだぞ?」
タダだし。
「そんなもんかねぇ。それで? 今回はどんなモンを手に入れてきたんだぁ?」
ほうほう。
気になりますか。
気になっちゃいますか!
「これです!」
「……なんだい、その禍々しい鎌はよぉ?」
俺が天高く掲げたデスサイズを見てブライトは顰めっ面になる。
「バカめ。そしてバカめ。お前には分からんか、このかっこよさが」
全体的に漆黒で、長柄には脈打つ血管が巻き付き、赤黒く光を放っている。
長柄の先には髑髏があしらってあり、その口から刃が伸びている。
刃は濡れているかのようにテラテラと鈍い光を放っている。
そしてやっぱり血管が這っている。
「いや、正味グロいんでさぁ」
定命になったロトンドは、特に前と変わりない。
内心はわからんが、俺が過剰に反応してたことを呆れていたから、やっぱりなんの痛痒も感じていないのかもしれん。
そんなロトンドもこの鎌がお気に召さないらしい。
「かっこいいけどなぁ……」
「少なくとも、そんなの持ってたら詰所に連れて行かれても文句は言えないぜぇ」
「そこまでかぁ」
俺はデスサイズをアイテムボックスにしまい、代わりに薄汚れた布を大量に出す。
「こりゃまた、けったいな布だなぁ」
「お前たちの次なるミッションはこれだ。この布は死神の端切れと言う。これを売ってもらう」
俺の言葉に二人は首を傾げる。
「兄貴が売ったらダメなのかぁ?」
「うむ。俺はこれから、また遠出をせにゃならん。手が回らんのだ」
「出かける前に売るのはダメなんで?」
ロトンドがもっともなことを言うが、これには訳がある。
「一気に売りたくないんだ。小分けに、しかも特定のところで売ってきて欲しい」
「その心はなんでさぁ?」
「大商会に目をつけられたくない。出所を探られたくない」
いずれこの街で商売をするが、まだその時ではない。
「大商会っていうと、アストゥの所のことかぁ?」
「そうだ」
エーアスト大商会。
その商会長、アストゥ。
この街でアイテムを一定以上販売するとフラグが立ち、発生するイベントの登場人物。
目的のためには手段を選ばない。
所謂、悪徳商人だ。
ゲームでは、見たこともないアイテムを持ち込む勇者に興味を持ち、出所を探ってくる。
結局、物作りが理解できないアストゥは出所を特定できず、商売の邪魔になると判断し勇者に暗殺者を送り込む。
そんなストーリーだ。
多分俺がやっても同じことをしてくるだろう。
今、暗殺者がわんさか送られてきたら殺されてしまう。
「アストゥってんなら、納得でさぁ。黒い噂が絶えないロクデナシでさぁ」
「そんだけ、この布は珍しいってことだなぁ?」
「あぁ、多分この街でこれをとって来れるやつはいない」
LV的にもキツイし、即死を回避できる奴がいない。
何より入り口が城の地下だ。
「じゃぁ、一枚でも売ったらバレるんじゃねぇかぁ?」
「いや。一箇所だけ売れる場所がある。俺たちが会った裏路地から更に四本奥に行ったところに店があるのは知っているか?」
「会ったって言うか、投げられたんだけどなぁ」
お前らが絡んできたからだろ。
「知ってまさぁ。何を売っているかも分からないし、いつ開いてるかも分からないんでさぁ」
流石ロトンド情報通だ。
ゲームでも見つけにくい場所にあるのに良く知っている。
この店は特定の時間しかオープンしておらず、この世界の住人には使用不可能な、レシピを売っている店だ。
そして、たまにレアアイテムが売っている。
作成可能なレアアイテムがだ。
故に店主は物作りが出来るのではと考察されているが、その真相は謎のままである。
この店だと、アイテムを売ってもフラグが立たないというバグがある。
それを利用する。
「その店で毎日、死神の端切れを十四枚以下で売ってくれ。いいか? 十四枚以下だぞ。十四枚以下だ」
俺は念を押す。
それ以上だとフラグに引っ掛かるのだ。
「兄貴の言うことだぁ、きっと重要なんだろうなぁ」
「ああ。とても重要だ。決して違えないでくれ。命に関わる」
念には念を押してだ。
暗殺者との戦闘はイベント戦なので、恐らく勇者以外突破できない。
俺たちなんてイチコロだ。
まぁ、俺はイベントを発生させないんだけどね。
「わかった。十四枚以下だな」
ブライトも真剣な顔だ。
この分なら大丈夫だろう。
「了解でさぁ。で、売った金はどうすればいいんで?」
「まとまった金ができたら、まず武器を買ってくれ。その後は二人分の盾を買うんだ。全額突っ込んでいい」
「なるほどぉ。もう俺たちは武器も防具も身につけられるんだったなぁ」
永遠の命と引き換えに、この二人にはなんの制約もなくなった。
冒険者でなくとも、武器防具も装備可能だ。
「兄貴は永遠の命だなんだ言ってたけどよぉ。武器と防具を装備できた方が死ににくくないかぁ?」
……確かに。
アイテムの中には一回死んでも自動復活なんてのもあるし。
状態異常完全耐性のアクセサリー装備すれば病気にもならないのでは?
事故もLV上げれば、ちょっとやそっとじゃダメージ喰らわないし。
「あれ? メリットの方がでかい?」
「だなぁ」
恥ず!
俺の葛藤いらねぇ!
ちくしょう!
バカみたいじゃん!!
「大兄貴、顔が真っ赤でさぁ」
「うるせぇ!」
やってらんねぇぜ!
「まぁ、兄貴の心のしこりが取り除かれたなら、それに越した事はねぇぜぇ」
「あーあー聞こえなーい」
「大兄貴の杞憂民〜」
「誰が杞憂民だ!」
二人ともが俺を指差してくる。
分が悪いらしい。
「よし。無かったことにしよう」
「……まぁ、いいけどよぉ」
「そんな事より、ミッションはもう一つある。武器が買えたら、しーぷんを狩ってくれ」
呆れ顔のブライトを無視してミッション告知。
「しーぷんっていうと、草原にいるモンスターだなぁ。俺たちでやれるのかぁ?」
「大丈夫だ。この街にで売ってる鉄の剣で一撃で落とせる。万が一落とせなくとも二発なら絶対だ。二人なら安全マージンは取れてる。更に万全を期すために、この栄養棒を二人で分けて持て」
ここまですれば、万が一にも命を落とす事はないだろう。
「鉄の剣って、ものすごく高いぜぇ?」
確かに一般の住人では手が出ないだろう。
中堅冒険者や商人ならって感じだ。
だが、大丈夫。
「そのための死神の端切れだ」
俺はボロにしか見えないそれを指差す。
「もしかして、これそんなに高いのかぁ?」
適正LV30はダテじゃない。
LV30になる頃には端金にしかならなくとも、今なら金の卵だ。
「ああ。だから充分に注意してくれよ」
「おっかねぇが、わかったぜぇ」
ブライトは乱雑に置かれた端切れを、丁寧に重ね始める。
割と几帳面だ。
「それで、しーぷんはどれくらい狩ればいいんで?」
ロトンドの問いかけに俺はニッコリしながら答える。
「一日八時間。休憩は一時間だ。サボろうとしても無駄だぞ。ドロップする羊毛の数で計算できるからな」
二人の引き攣った顔が印象的だった。
お読みいただきまして誠にありがとうございます!
個人的には、文章内に場面転換の記号を入れるのは好きではないのですが、見やすさ的にこっちの方が良い気がしたので入れてみました。
ちなみに256分の1の確率は、キラーマシンを仲間にできる確率と同じです。
ちゃんと読めると思った方は下の☆ ☆ ☆ ☆☆を★ ☆ ☆ ☆☆こう!
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