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第十三話「どうやら俺は重いものを背負ったらしい」

 

「そいやっ! そいやっ!」


「メェ〜」


 今私はエーアスト付近の草原地帯に来ております。


 ここにはノンアクティブで、しかも他のモンスターとリンクして攻撃を仕掛けてこない奴らしかいない。

 つまり初心者御用達の狩場だ。


 現在進行形で狩っているのは羊のモンスター『しーぷん』。

 もこもこの羊毛に、足と顔がちょっとだけ出ている、まん丸のモンスターだ。


 ノンアクティブなので必ず先制できる分、うりぷーよりも倒しやすい。


「どっこいしょー! どっこいしょ!」


「メェ〜」


 LV10の俺の力とスコップの力が合わさり無双状態。

 一撃でしーぷんを屠れる。


 湧きを待つ時間のほうが多いくらいだ。


 ビルダーズブレイブは、固定湧きと無限湧きがあり、この辺りは無限湧きだ。

 ただ、ここはリポップまでの時間がランダムで、出現場所もあっちこっちなので効率的なLV上げには適していない。


 では何故狩っているかというと、お察しの通りドロップアイテムの羊毛目当てだ。


「メェ〜」


 大体三匹に一回ドロップするので乱数の神様に祈る必要はない。


 ただ、羊毛の消費が多く見積もられるので量が必要で、ちょっと一苦労だ。


「メェ〜」


「メェ〜」


「メェ〜」


 ……一度に固まってポップすると、なんか嬉しいよな。


 そんなこんなで、湧き待ちをしつつ、その間に草や花を採取しつつ、狩りしつつでその日一日を終え、俺はエーアストの街に戻るのだった。


「おーい。戻ったぞ〜」


 俺はちょっと傾きかけている荒屋の、これまた壊れそうなドアをそっと叩く。


「兄貴ぃ。お帰りなさいだぜぇ」


「大兄貴ぃ! お帰りなさいでさぁ!」


 むさっ苦しい男二人が迎え入れてくれる。

 どうせなら美人にお出迎えされたいが、ここはコイツらの住まいなので致し方なし。


「大兄貴ぃ、水を用意してまさぁ! どうぞお飲みくださいでさぁ!」


「ありがとう。頂くよ」


 俺は狭い室内に入り、グイッと水を飲み干す。

 ゲームでの水は素材でしかなかったが、現実になったとなると疲れた体に染み渡る。


「ふぅ。一息つけたよ」


 コップをテーブルに置き椅子に座る。


「それで、そっちはどんな塩梅だった?」


 向かい側に座った二人に問いかける。


「一応、言われた数の木ブロックは手に入りましたぜぇ」


「ついでに葉っぱブロックも持ってきてありまさぁ」


 そう言って二人はテーブルの上で、二組の茶色と緑のブロックを出して見せる。


「おぉ。ありがとう」


 俺は二つのブロックに×50の数字が浮かんでいるのをみて感謝の念を覚える。


「ただ兄貴ぃ。次からは、こう上手くはいきそうにないぜぇ?」


「どう言うことだ?」


 俺は不思議に思って尋ねる。


「巡回してた警備兵に見つかりそうになったんでさぁ」


「アイテムボックスでブロックを隠せたから良かったけど、見つかったら危なかったぜぇ」


「見つかると何がまずいんだ?」


 どう言うことかわからず二人に聞く。


「そりゃ兄貴。無断で木をブロック化したら捕まるぜぇ」


「……なぜだ?」


 ますます分からん。


「大兄貴ぃ、知らねぇんですか? 木をブロック化したら木が無くなるんで、国に管理されてるんでさぁ。だから無断でブロック化したら捕まるんでさぁ」


 なん……だと……?


 確かにゲームでも、木をブロック化すると無くなる。

 そして自動で木はリポップしない。

 大袈裟な話、世界中の木を同時にブロック化したら、この世界は緑のない荒野と化すだろう。


「植林はしないのか?」


 ゲームでは資源がなくらないように植林をする。

 と言うよりバグ使用無しの場合、いちいち木を樵るのが面倒なので、自動で木を植林伐採をする回路を組む。


 だからプレイヤーにとって木は有限であり無限だ。


「モンスターがいるのに、どこに植林するって言うんだぜぇ?」


「安全なところの木を好き勝手にとったら、すぐ無くなるんでさぁ」


 ……確かに。

 この都市だけでも何百人の人が生活しているだろうし。

 ゲームと違って色々木材も入り用だろう。


 そして、危険な森に足を踏み入れたら、戦闘能力のないNPCはモンスターと相対したらボコボコだ。

 俺が身をもって体験した。


 待てよ? だとしたらもしかして……


「俺、やばい橋渡らせてた?」


「……知ってて、やらせてんのかと思ってましたぜぇ」


「そうでさぁ」


 マジか。


 ゲームだと、NPCはものを消費しないから想像もしなかった。


 そりゃそうだ。

 限られた資源なら管理するのは当たり前だよな。


「悪い! 知らなかった! すまん!」


 俺はテーブルに両手をついて頭を下げる。


「兄貴は所々ぬけてんなぁ」


「本当についていって大丈夫か、心配になりまさぁ」


 二人からの呆れ声。


 部下からの信頼度急降下!

 せっかく手に入れた、都合の良い拠点と手駒の消失の危機!


「それは大丈夫! 儲けさせてやるから!」


 我ながら詐欺師みたいな事をいってるなとは思いつつ、信頼の回復を試みる。


「いや、もうそこは疑ってないけどよぉ」


「そうでさぁ。物作りなんて、とんでもない事を出来るようにしてくださったお方だ。

 想像もできないような事になるんだろうなと思ってまさぁ」


 そうだよな。

 この世界で誰よりも先に物作りを出来るようにしてやったんだから、お釣りが来るよな。


「よし。何も問題がなくなったな」


 この話は早くも終了ですね。


「……それはそれでどうかと思うぜぇ?」


 モヒカンが不満そうに言う。


「まぁまぁ、其方(そち)らに褒美をとらせるので、水に流すが良いぞ」


「水に流される方がいうセリフではないんでさぁ」


 ロトンドが不満そうに言う。


刻石流水(こくせきりゅうすい)と言う名台詞を知らないのかよ」


「知らないんでさぁ」


「かけた恩は水に流して、受けた恩は石に刻むって言う意味だぜぇ。今回はお互い様だから適した言葉じゃないんだぜぇ?」


 ……え?

 モヒカンお前、学があるの?

 アホみたいな格好してるのに?


「あわわわわ」


「驚きすぎなんだぜぇ。人に歴史あり。俺にも色々あるんだぜぇ?」


 マジか……。

 素肌に黒い皮のタンクトップ着てるのに賢いのか。


「300ゴールドの17%引きは?」


「バカにしすぎだぜぇ? 249ゴールドだぜぇ」


 暗算……だと?

 黒いピチピチの皮のズボン履いてるのに。


「売値2000ゴールドの商品が六掛けだった場合の仕入れ値は?」


「1200ゴールドだぜぇ。ちなみにエーアストの商品は基本四掛けで、冒険者は危険の割に収入が少なくて、不満に思ってる奴が少なくないぜぇ」


 やだ……どうしよう?

 めっちゃ拾い物だったんだけど。

 めっちゃ有能なんですけど?


「モヒカン……、お前、マジか?」


「その反応でどう思っていたかがわかるんだぜぇ」


 肩をすくめて苦笑いするモヒカン。

 なんだかその仕草も様になっているように見えてきた。


「ちなみに俺は普通に馬鹿なんで、期待しないでもらいたいんでさぁ」


 そうか。ロトンドお前は期待を裏切らないんだな!


「兄貴ぃ、ロトンドは人に取り入るのが上手いんだぜぇ? 情報収集や話をうまく纏めるのもお手のものだぜぇ」


「いや、マジでお前らなんでチンピラなんかやってんの?」


 心の底からの問いかけが出る。

 二人で商売したら上手くいくだろうに。


「チンピラじゃないんだぜぇ。ならず者なんだぜぇ?」


「そうでさぁ。間違えないで欲しいんでさぁ」


「いやどっちでもいいけど、商売しろよ」


 と言うより、これから一緒に商売しようず。


「だから、商人じゃないから商売できないんだぜぇ」


 ああ、そうだった。

 その縛りがあったんだ。


「おk。わかった。お前らを商人にする事の優先度が上がった」


 先入観で人を見誤るなど、俺も落ち目か?

 いや、最初からこうではなかったはずだ。


 俺はアイテムボックスから作業台を取り出す。

 重い音を上げながら部屋の中に作業台が現れる。


「狭いぜぇ」


 モヒカンの言う通り、作業台が部屋の三分の一を占めてしまった。

 家の改装も急がれるな。


「まずはお前らに名前をつける。散々茶化してきたが、多分(・・)意味がある」


 名前がつくことで、モブから個になる。

 管理者から与えられた役目(・・)から逸脱できる。

 世界に使われるものから、介入するものへと変わる。


 すでにコイツらは俺との接触でNPCを逸脱しつつあった。

 作業台を触り個性を見せ始めた。


 俺がこいつらを定義づける。

 その変化を変わらないものとする。


「モヒカン。つけて欲しい名前はあるか?」


 興味深そうに俺の作業を見ていたモヒカンに問いかける。


「……いや。兄貴が付けてくれていいぜぇ。多分それが一番良い」


 その瞳に確かな知性を感じる。


「わかった。お前の名前は今日からブライトだ」


 俺はモブキャラに名前をつける名札ではなく、主要キャラの名前を変更する『ドッグタグ』を鉄鉱石から作り出した。


 そして、それをエーアストならず者023の首にかける。


 その瞬間、彼は時が止まったように静止し、人形のように表情が消える。

 そして、その口から無機質な声が上がる。


「識別名:エーアストならず者023の名前を変更します。以後一個体として識別されます。これは管理者権限に抵触しますがよろしいですか?」


 俺は血の引く思いを抱くと共に、胸が高鳴るのを感じた。


 ___もしかしたら、モヒカンの人格は変わってしまうかもしれない。やめた方が良い。


 だが___管理者(システム)に争うはシーケンスブレーカとしての本懐。やるしかない。


 二律背反な思いを抱きながら、俺は言葉(コマンド)を発する。


「識別名エーアストならず者023の名前を変更。以後個体名をブライトとする」


 俺の言葉に反応して、モヒカンの体が一瞬ノイズが入ったようにブレる。


「コマンドを確認。個体名を『ブライト』へと変更。ステータスを取得。各種装備スロットを開放。スキルスロットの解放。クエスト参加が可能。パーティー参加可能___ 」


 モヒカン改めブライトの口から、名前を変更した事での影響が列挙される。


 そして___


「不死設定から定命設定に変更されます」


 最後に俺が業を背負ったことが告げられた。

お読みいただきまして誠にありがとうございます!


MMOとかだと不死のNPC多いですよね。

その分プレイヤーに叩かれますけど。


ちゃんと読めると思った方は下の☆ ☆ ☆ ☆☆を★ ☆ ☆ ☆☆こう!

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