第十二話「どうやら名前は気に入ってもらえたらしい」
「ハイホーハイホー巨乳が好き〜」
今日、私達はエーアスト周辺の採掘場に来ております。
先日神殿で手に入れた作業台で、これまた神殿で手に入れた鉄鉱石を使い、金床を作成いたしまして。
そして金床でツルハシを作成いたしました。
ツルハシといえば採掘。
採掘といえばツルハシ。
という事で、岩肌をツルハシで引っ叩いております。
「タイホータイホー逃げるが勝ち〜」
今日採掘する獲物は銅の鉱石とコークスだ。
コークスは万能素材でコイツがあれば金属製品はほとんど作れる。
因みにスズや亜鉛やニッケルなどは死んだ。
鋼鉄も青銅も真鍮もコークスがあれば作れる。
コークスが全てを司るのだ。
「なぁ、兄貴ぃ俺にもそのツルハシって奴を作ってくれよぉ」
「そうでさぁ! 大兄貴! 俺なんか木の枝で永遠と壁を叩いてて気が狂いそうでさぁ!」
「却下」
俺の隣で真面目に壁を叩いていたチンピラ二人が不平を漏らす。
「モヒカンにはスコップを貸してるだろ。そこまで辛くないはずだ」
「でも兄貴ぃ。手がイテェよぉ。あと俺はエーアストならず者023だぜぇ」
「俺も痛いから安心しろ。あと名前クソなげぇから、とりまモヒカンで」
「ひでぇ」
モヒカンのモヒカンが萎れてうなだれる。
アホ毛属性が付与されている……だと。
因みにコイツらはエーアストに栄養棒を補給に行ったついでに連れてきた。
ついでの、ついでで作業台に触らせてどうなるかも実験した。
結果は大成功。
ホロンダ村の住人に先駆けて物創りに覚醒した。
俺の作業台初体験の感じから、ワンチャン死ぬんじゃねぇかなと思ったが杞憂で済んで良かったよ。
特に俺が喰らった激痛とかはなかったらしい。
これで安心して村の奴らに使わせられるぜ。
「兄貴はマシでさぁ! 俺なんかチビデブでさぁ! 普通に悪口でさぁ!」
チビデブが岩肌を枝でペチペチしながら憤っている。
あだ名が気に入らないらしい。
「安心しろ。今度もっとマシな名前をつけてやる」
「俺にもエーアストならず者052って名前がもうあるんでさぁ!」
「なげぇから、却下」
「ひどいんでさぁ!」
マジで覚えられないし長いから、改名できるアイテムで名前変える。
大体なんだよ052って。
少なくともエーアストには、ならず者が他に五十人いるって事じゃねぇか。
ゲームでは治安良かったはずなんだけどなぁ。
俺がゲームとの違いに考えを巡らせていると、スッと目の前に立つ影。
「ところで大兄貴。 ……枝で壁叩くのには意味があるんで?」
唐突にチビデブの方が表情の抜け落ちた顔で聞いてくる。
突然、能面みたいになって怖い。
「もちろんある。すごくある。重要にして不可欠と言えるだろう」
決して怖さに負けたわけではないが、強調させてもらおう。
「なんと! その枝で百回岩肌を叩くと岩ブロックが採れるのだ!」
この世界のブロックは、道具の強度や相性によって叩く回数が変わる。
当然ツルハシは採掘特化なので、数回で岩をブロック化できる。
モヒカンに貸しているスコップもツルハシほどではないが採掘に適している。
なんせ、スコップはしばらく勇者が使用するはずの道具だからな。
特別なのだ。
「百回? 百回を何回でさぁ」
今度は目の光が消えた。
「ま、まぁ待て。そうだ! お前にも良い道具を作ってやるから。お、なんということだ丁度材料が揃ったではないか。あぁ良かった良かった」
俺はチビデブから枝を早急に奪い取り、作業台で石斧を作る。
「さぁ、エーアストならず者……042? よ! 受け取るのだ!」
チビデブが無表情に手渡された石斧を見つめている。
「兄貴ぃ。もしかしてコレ作れるの忘れてたんじゃぁ?」
「滅相もございません、モヒカン。そのような事があろうはずがございません」
あろうはずがないったらない。
「エーアストならず者052でさぁ」
チビデブがポツリと言う。
「おう、知ってるぞ。そう言ったぞ?」
こりゃいかん!
部下の名前を間違える上司!
転職されちゃう!
……ならず者から転職するなら良いのでは?
「兄貴ぃ。名前を間違えるのだけは、いただけねぇよぉ」
変なあだ名はよくて、名前を間違えるのはダメなんか?!
えぇい! 事ここに至っては致し方なし!
「すまん! 作れるのを忘れてたし、名前も間違えた! 申し訳ない!」
ズビシィ! っと頭を下げる俺。
ごめんなさいと、ありがとうが言える上司はいい上司。
「はぁ、頭を上げてくだせぇ。誰にでも間違いはありまさぁ」
あら、思いのほか人格者。
てか、なんでコイツらならず者なんかやってんだろう?
「すまなかったな、チビデブ。次から気をつけるよ」
「また悪口でさぁ!」
「いや、この程度悪口ではない。世にはブタゴリラやゴリライモなどのあだ名を冠する者もいるのだぞ?」
「下がいるから、此れ良しとはならないんでさぁ!」
さもありなん。反論の余地もなし。
仕方ない。他のあだ名を考えてやるか。
と言うか、もう名前つけちゃおう。
「ん。今日からお前はロトンドな」
「え?」
「ロトンド。後日正式にお前の名前として作ってやる」
サンドボックスゲームでよく使われる、キャラやペットの名前を変えるアイテム。
名札。
材料は木のブロックとコークスだけなので作成や容易だ。
これでコイツらの名前を変えられる。
多分。
ゲームではNPCの名前がそもそも存在しなかったので、名前変更は出来んかったが、今は一応コイツらに名前が割り振られているので上手くいくはず。
多分。
「さぁ、ロトンド今こそ、その石斧で岩を叩くのだ!」
「なんだかカッコいい響きでさぁ! このロトンドにお任せあれでさぁ!」
言うが早いが腕捲りの仕草を見せて、ガンガン石斧を壁に叩きつけ始めるロトンド。
そうか。
かっこいいか。
丸いって意味なんだが。
気に入ってくれて何よりだ。
「なぁ、兄貴ぃ。俺にもカッコイイ名前をつけてくれよぉ」
萎れモヒカンがなんか言ってくる。
と言うか、二人とも名前にこだわりがあるんじゃなかったのか?
「え? モヒカンじゃ嫌?」
「それ髪型の名前だろぉ? カッコイイのが良いぜぇ」
まぁ、後でつけるつもりだったから吝かでもないが。
「じゃあ、銅のブロック十個とったらね」
なんせ、名前の話で時間を浪費してしまった。
まだ銅もコークスも全然採れてない。
ここからはピッチを上げて掘り進めていくとしよう。
だって、夜になったらこの場所もモンスターが出てくるからね。
せっせと壁を叩くチンピラ二人を横目に見ながら、俺もツルハシを振るう。
NPCに名前をつけたらキャラクター化するのか否か。
そんなことを考えながら___
お読みいただきまして誠にありがとうございます!
なぜ私の書く悪漢は皆、語尾が変なんでしょう?
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