第十一話「女神様はどうやらいるらしい」
「きつい……」
今俺は穴を掘ってはブロックを外に出すという作業を永遠と行っている。
単純作業は得意な方だが、肉体労働を伴うとすれば話は別だ。
土を叩く手もジンジンするし、ブロックの階段を登る足はパンパンだ。
___なぜ、こういうところはリアルにしてしまったのか?
女神への不平不満は募るばかりだ。
ちなみにチンピラ二人は、上手いこと騙くらかして家まで案内させ、更生しておく様にと暴力した。
あとで家を乗っ取ろうと思う。
そして、いまは穴を掘っている。
この下には、本来ストーリー中盤以降に城の秘密通路から行ける神殿がある。
そこに攻略の第一歩である超重要アイテムが眠っているのである。
「早くアイテムボックスが欲しい……」
渇望の声が口をついて出る。
アイテムボックスとは、個々人でアイテムをストックしておけるシステムのことだ。
これがないと、ブロック化したアイテムを一個しか持てない。
つまり、一個ブロックを作るたびに外に置きに行かなければならないのだ。
「今どれくらいだ?」
上を向くとまだ外の明かりが見える。
「絶望とはこのことか……」
もう、後ろにブロックを積み上げていく方式にしようか……?
いや駄目だ。
変なところがリアルなこの世界。
窒息死する可能性がある。
「我慢だ、忍耐だ、根性だ」
何度もそう呟き自制を自らに促す。
そうこうしているうちに不安が押し寄せてくる。
___掘っている場所間違ってたらどうしよう?
本来ならば行けないはずの神殿は、ただ直下堀しても外壁に阻まれて中に入れない。
だが、たった1ブロック分の穴があるのだ。
多分、作成時に作り手が見落としたのだろう。
俺はそこを目指している。
しかし、たった1ブロックだ。
少しでも掘る場所が違えば、現状では壊せない壁に阻まれて最初からやり直しになる。
「む〜り〜ぽ〜よ〜」
あり得るかもしれない絶望に、心がブレイクダンスしちゃいそう。
いや、こんな時は歌でも歌って紛らわそう。
「悩んでるやつゼッテーよく聞け〜、挫けそうなやつゼッテー忘れんな〜」
反響してうるせぇ。
___なぜ、こういうところはリアルにしてしまったのか?
女神への不平不満は募るばかりだ。
どれくらい経っただろうか?
無我の境地に至った俺は、そのまま涅槃へと旅立ちそうだったが、目の前のブロックの色が変わったことに気づいた。
「キター!」
反響してうるせぇ。
だが、やってやったぜ!
このブロックは正解のルートである証。
あと、数ブロックで目的地だ!
テンションが上がった俺は、一心不乱に土を叩いては運んでを繰り返した。
「みえたぁ。やっとたどり着いたぁ」
目下に広がる荘厳なる白亜の神殿。
その内部にあるのは礼拝堂。
大きくそびえる女神像。
美しいステンドグラス。
そして何よりその傍にある台。
それこそが俺が求めてやまなかった『作業台』だ。
あれがあれば『物創り』が可能となる。
それは勇者だけではない。
村人もだ。
そして、アイテムボックスも開放される。
もう、上り下りをしなくてもいいんだ!
あ、ちょっと泣きそう。
感慨深さがクライマックスでドラマチックになってるところで、はたと気づく。
___神殿まで結構距離があるくね?
高い。
落ちたら多分死ぬ。
ゲームではどうしてたか。
一個づつブロックを積んで階段にしてた。
「うそ……だろ……?」
また上り下りをしろと?
「ぴーかーろーけー」
その後の記憶はない。
「さて。いよいよだ」
いつの間にか作業台の目の前に立っていた俺は、作業台に触れる。
「ぐっ!」
触れた途端に脳を直接鷲掴みにされたような痛みに襲われる。
そして身体中が泡立つような感覚に陥る。
チープな言い方をするならば、脳に直接情報を刷り込まれ、体が書き換えられる感覚といったところか。
「おい。俺に何をした?」
いつの間にか蹲っていた俺は、女神像を睨め上げる。
しかし女神は黙して語らない。
「おい、無視すんな。ここの女神像は喋る機能がついてるはずだろ」
この女神像は正規のイベントで勇者に語りかける。
その際にアイテムの作成を頼まれるのだ。
故にここに作業台がある。
そう。語りかけるのだ。
「無視すんなら、この世界クラッシュさせんぞ」
ビルダーズブレイブには負荷をかけてゲームをクラッシュさせる裏技がある。
今すぐには無理だが、材料を揃えれば俺にとっては朝飯前だ。
沈黙が辺りを支配する。
それでも女神像は何も応えない。
「そうか。それがお前の答えなんだな? よおぉくわかった」
俺は脳と身体を弄られてムカついたので脅しをかけたが、本当はそんなことしない。
だって、まだ楽しんでないし。
しかし、交渉決裂には間違いないので俺は踵を返す。
___カラン。
俺が階段に向かっていると背後で何かが落ちる音がした。
振り向くと床に指輪が落ちている。
俺はそれを見て歓声をあげる。
「おぉおお! 呪い避けの指輪ぁ! マジでマジでマジでぇ?」
指輪を大切に手に乗せながら小躍りダンシング。
沈んだ心がライジング。
俺の笑顔がシャイニング。
「なんだよぉ。こんな良いもの貰っちゃったら、信仰するしかないなぁ。崇拝しなきゃなぁ。もう! いけずなんだからぁ」
俺は膝をついて祈りを捧げる。
踊ってるけど。
俺が狂喜乱舞しているのには理由がある。
この指輪はマルール攻略に必須なのだ。
というよりも、この指輪があればもう落ちたといって良い。
「うっひょひょーい! 女神様、俺もうクラッシュさせるとか言わないです。安心してくだしあ!」
我ながら現金なものだが、それだけの価値がこの指輪にはある。
本来ならこれを入手するのは面倒なのだ。
普通の人はマルール攻略を二周目以降にするくらいには。
「なんか、やって欲しい事とかないっすか? 出来る限りやるっすよ!」
女神様様にお伺いを立てる。
ご褒美もらえるかもしれないし。
「おーい。女神様ー?」
しかし、女神像は何も応えることはなかった。
「今んところ、何もなしっと」
俺はウキウキしながら、思考を巡らせる。
___これで神に準ずるものがいる事が確定。
___世界に干渉できる事が確定。
___俺が世界に干渉できることを理解している事が確定。
___俺が今一番欲しい物を知っている事から観察している事が確定。
___だが、脅しに屈した事から心の中までは読めない事が確定。
取り忘れたアイテムをGETしながら思考だけは、深く、深くしていく。
神は俺に何をさせたいのかと。
お読みいただきまして誠にありがとうございます!
ちょっとずつ文章が書けるようになってきた気がします。
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