第十話「女神の仕事は杜撰らしい」
「なに無視してんだゴラァ! どう落とし前つけるんじゃワレェ!」
異世界転生のテンプレも組み込まれているのは、なんか嬉しいな。
「兄貴の骨折れてんだぞぉ! 折れたら困るのが分かるだろぉ!」
チビデブが凄んでくる。
しかし俺には恫喝に完全耐性がるのだ。
本当に怖いのは理詰めで来るクレーマーで、叫ぶ系のやつは逆に御し易い。
「まぁまぁ。そう息巻いちゃいけねぇよぉ。なぁ、兄さん。ここはその手に持っている物をくれれば、手打ちにしようじゃねぇかぁ」
いやぁ、古式ゆかしきテンプレだなぁ。
初出はなんだろう?
時代劇だろうか?
「おい、兄さん。無視してんじゃねぇぞぉ。温厚な俺でも怒りが有頂天になっちまうかもしれねぇよぉ?」
モヒカンが俺の胸ぐらを掴んでくる。
……そんなにSTRはなさそうだな。
だが俺は念の為に聞く。
「お二方はモンスター狩りはしてますか?」
二人組は俺の質問にキョトンとすると答える。
「おうよぉ! もう、バリバリよぉ!」
「俺たちはドラゴンだって狩ったことあるんだぜ! だから大人しくそれを渡しな!」
はい、うそ。
一番近くのドラゴンでもLV30は必要だ。
しかも勇者の30だ。
一般人がどうこうできるモンスターではない。
「ちょっと、ここでは人目があって恥ずかしいので、裏路地に入りませんか?」
「おぉ? いいぜぇ。お前にも体面てもんがあるだろうしなぁ」
そこは配慮できるんだ。
根はいいやつなのか?
ってか、素人相手ならアホほどLV差がない限り負けないんだけどね。
俺は二人組を地獄極楽落としで地面に何度も何度も叩きつけて分からせる。
「ひぃい。勘弁してくれぇ」
「もうしないからよぉ」
ボロ雑巾になった二人はテンプレな命乞いをしてくる。
まだ喋ることができるって事は、ちょっとはLV上げてるのかもな。
俺はモヒカンの胸ぐらを掴んで言う。
「許して欲しければ、俺の舎弟になれ」
「えへへ。そりゃぁ、許してくれるんだったら、舎弟でもなんでもよぉ」
「ふへへ。俺も同じくでさぁ」
ゴマスリの手をしながら二人組が嘘くさいセリフを言ってくる。
まぁ、実際嘘なんだろうけども。
だが、俺はマジでこいつらを舎弟にしようと思う。
だから、胸ぐらを掴んでいた手を離しモヒカンの肩に手を置く。
「よく聞け。俺の舎弟になったら、マジでいい目を見せてやる。大商人の下で働くくらいの、いやそれ以上の甘い蜜を吸わせてやる」
俺の言葉に胡散臭そうな目をしながら愛想笑いをする二人。
当然か上手い話には裏がある。
今回の裏は俺の拠点をこの都市に作ること。
「今は信じなくてもいい。だが、本当なのだと分かるものを持ってくる。それを食えば確信するだろう」
俺が諭すとモヒカンは真面目な顔をしながら言ってくる。
「……俺だけならどうなっても構わねぇが、コイツを巻き込む訳にはいかねぇよぉ。だから、俺だけで勘弁してくれねぇか」
モヒカンがチビデブを指差しながら頭を下げる。
「そんな! 兄貴! 俺たちはどこまでも一緒でさぁ! どんな危ない物だって兄貴と一緒に食って見せまさぁ!」
……ヤバいものを扱わされると思っているのか。
この世界のヤバいものってなんだろう?
「まて。そんなんじゃない。真っ当な食い物だ。しかも他では扱っていない代物だ。絶対に大儲けできる。これは確定した未来だ」
俺の言葉にモヒカンがますます猜疑心に満ちた目を向けてくる。
「そんな代物だったら自分だけで扱えばいいじゃねぇかよぉ? なんで俺たちを巻き込むんだよぉ?」
テンプレやられ役なのに、多少は頭は回るようだ。
もっともなことを言う。
「理由がある。俺はこの都市に拠点が欲しい。具体的にはその商品を売る場所だ。お前たちにも住処があるだろう?」
「……そりゃぁ、あるけどよぉ。商店じゃねぇから、物は売れねぇよぉ」
「商店じゃなくても物は売れるだろう? あれか? 変な間取りなのか?」
そうだとすると、コイツらには悪いが家を改装しなければならんな。
実際に見てみるか。
いや、今の状態で家なんか見せてくれないかな?
「なに言ってんだぁ? 商店じゃなけりゃ物は売れねぇし、商人じゃなきゃ物は売れねぇよぉ」
不思議そうに首をかしげるモヒカンを見て、俺はまたかと思った。
「商人になるにはどうしたらいい?」
「商人の子供に生まれるしかねぇよぉ」
「商店を作るにはどうしたらいい?」
「……ツクル? ……ワカラナイ」
作るのワードが出たところで、モヒカンはおろかチビデブまでも虚になる。
チッ。なんなんだよ。
リアルにしてるかと思ば、変なところはRPGのルールを強制してくる。
___そう、強制だ。
現実の中でゲームの設定だけは強固に守らせようとしてくる。
そう出来てるから、そう。
そうなっているから、そう。
女神さんよ。
あんたの作った世界は、整合性が杜撰だぜ?
俺はもはや、いるかどうかも分からない女神様に毒付くのであった。
お読みいただきまして誠にありがとうございます!
ちっともモノづくりしないな、この主人公。
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