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第一話「どうやら異世界転生したらしい」

新作でございます。

 

「シヤよ。お前には次期村長として、わしの補佐についてもらいたい」


 ふと気がつくと、目の前の禿げたジジイが、俺を見つめながら何か喋っていた。


 見つめ合うなら美女がいいね。美少女でもいい。

 どんな美女がいいかを考え始めたところで、ふと気づく。


 ……俺何をしていたっけ?


 俺は記憶が曖昧で状況が把握できなかったため、素早く周りを見まわし何が起こっているのか確認する。

 イレギュラー対応は迅速にだ。


 すぐに目に入ったのは俺の隣に座るガキ。

 (たてがみ)のように逆だった赤い髪と、こちらを射殺さんばかりの鋭いブラウンの眼。

 年頃に不相応ながっしりとした筋肉。強く歯を噛み締めているであろう口元が、不満を露わにしていた。


 次に建物を見回してみる。

 木造のいわゆるログハウスというやつだ。

 控えめに言ってボロい。

 雨漏りの後も所々見受けられる。

 部屋の片隅にはとても割りやすそうで、アイテムも入っていそうな壺が並んでいる。


 そして一番目につくのは、祭壇に安置された神器のように飾ってあるスコップだ。

 見た目はごく普通のスコップだが、この光景は幾度となく目にしたことがある。

 目にしたと言ってもゲームの中だが。


 結論。ここは俺がやり込みにやり込んだサンドボックス型RPG 「ビルダーズ・ブレイブ」のイベント場だ。

 そして俺はしがないNPC、次期村長のシヤという設定だろう。


 だが俺自身そんなものに参加した覚えはない。

 が、きっと疲れ切った心が俺をここに誘ったのかもしれん。


 度重なるクレーム処理。

 達成の見込みがない営業目標。

 部下の育成とメンタルケア。

 上司からのパワハラまがいの指導。

 それらですり減った心が無意識に俺をここに連れてきたのだ。

 間違いない。


 そうとなれば、廃プレイヤーである俺はこの波に乗るしかないわけで、存分に楽しんでいく所存。


 しかし、しかしだ。シナリオ通りに進めるのはシーケンスブレイカーとしての俺の矜持に反するというもの。

 というか、役者さんがた二人の困る顔が見てみたい。


「これシヤよ!聞いておるのか!」


 ジジイ役の村長が痺れを切らしてリアクションの催促をしてくる。

 まだ1分もたっていないのに、せっかちなことだ。

 接客業なら客がいくら待たせてこようと笑顔で対応するのが常識だというのに。

 ますます困らせてやりたくなったぜ。


「お断りしま〜す。隣にいるグリーヴァ君の方が適任で〜す」


 案の定ジジイは目を見開き驚きに空いた口が塞がらない状態。

 きっと台本にないことを言えたに違いない。


「村に対する熱い思い、村を守ろうとする気概、そして何より困難を打ち破らんとする勇気。彼こそがこの村の次 期村長に相応しい! 私は彼を推薦いたします!」


 うむ。完璧なロールプレイングだ。

 その証拠にジジイどころか、隣の赤髪小僧までもが目を見開いて困っている。


 ふふふ、困れ困れ!


 俺がほくそ笑んでいると、ジジイが再起動する。


「まさかお前がグリーヴァを推薦するとは……。もう一度考え直しては見てくれぬか」


 ジジイがアドリブで軌道修正をはかってくる。

 眉毛八の字で困り顔。

 ウケる。


 ん〜。どうしようかなぁ? 考えなおそっかなぁ?


「だが断る」


 俺はキリッと決めると万国共通の否をとなえる。


 俺はなぁ。困っている人がいるとNOと言いたくなるのだぁ。

 ザマァかんかんベロベロばぁ!


 ……普段は言わないよ? これがロープレだから言うんだよ?


 俺がキッパリと断ったため、ジジイは目頭を揉みながら、唸るように言う。


「ぬぅ。……わかった。わしももう一度考え直してみよう。今日のところは帰ってもよいぞ」


 む。もう終わり?

 そうか、きっと設営されたセットと、雰囲気を楽しむ場所なんだな。

 確かにこのセットはリアリティがあって素晴らしい物だ。


 うむうむ。良い体験をした。

 そんなことを思いながら俺は席を立つ。


 赤髪くんは村長の孫なのでこのままステイだ。


「んじゃ、お疲れ様でした〜」


 もはや職業病ともいえる別れの挨拶と共に俺はドアを開けて外に出る。


「ッ!」


 そこで目に飛び込んできたものは、ゲームで何度も見た風景。

 圧倒的にリアルな土の香りと木々のざわめき。

 空を見上げれば青い空と流れる雲。

 遠くに見える山々の数々。


 俺は呆然としながら近くの木を触ってみる。

 とてもセットとは思えない質感だ。


 俺は一体どこにきたんだ?


 ふと、道ゆく人を見て俺は愕然とした。

 手に木の()()()()を持っている。

 何十回何百回何千回と見てきた俺にはわかる。

 あれはビルダーズブレイブの()()のブロックだ。


 ならここは……


「おいシヤ!」


 大きな声に反射的に振り向く。

 そこには先ほどまで俺の隣に座って、憤懣やるかたないといった感じだった赤毛のガキだ。


「お前どう言うつもりだ!」


 赤毛の少年は肩を怒らせて、さらに大声を上げている。

 だが、今の俺には混乱で彼が何をいっているのかわからない。


 何も___分からない。


「無視すんなゴラァ!」


 また大声を上げた彼は……

 地面に叩きつけられていた。


「っ! くそっ! やりやがったな!」


 俺は見下ろす形で彼の顔をみる。

 どうやら、彼が殴りかかってきたので俺が投げたらしい。

 背中からいったのか咳き込みながら動けないでいる。


 そんな彼の顔を俺は触る。

 最初は恐る恐ると。そして顔全体を。


「お、おい。なんだよ」


 赤毛の少年は困惑した声を上げる。

 俺は乾いた喉を鳴らしながら彼に問いかける。


「お前……。グリーヴァなんだな?」


 俺は蚊の鳴くような掠れた声で、このキャラクターの名前を呼ぶ。


「何言ってんだお前。やっぱりなんか変だぞ? さっきの事といい」


 目の前の少年から困惑した様子がうかがい知れる。


「なぁ。答えてくれよ。お前グリーヴァなんだな?」


 違ってほしいと言う思いと、もう確定だろうと言う思いと。

 二律背反な心で答えを待つ。


「……他に誰に見えんだよ。そうだよグリーヴァだよ」


 彼の返答に俺は目の前が真っ暗になる。

 動悸も激しく呼吸も苦しい。

 背中に冷たい汗が流れる。


「お、おい。どうしたんだよ? お前大丈夫か?」


 遠いところでグリーヴァの声が聞こえる。

 足元がおぼつかず今にも倒れてしまいそうだ。


「……泣いてんのかよ」


 グリーヴァの言葉に頬を触ってみる。

 彼の言う通り頬が濡れていた。


 そこで俺は、何故? と思った。

 なんで俺は泣いているんだろう?


 疑問に思ったのなら分析は大切だ。

 問題があるのならば軌道修正をしなければいけないからな。


 答えはすぐに見つかった。


 どうやら俺はあの碌でもない毎日でも、日常が失われると悲しいらしい。

 生まれ育った街、知り合った人々、家族。

 それらが失われたことが悲しいらしい。


 辛いらしい。


 ……。


 …………。


 ………………。





 いや、本当にそうか?

 そんなに大事だったかぁ?

 いやぁ。ないだろ。

 どう考えてもビルダーズブレイブの方がいいだろ。


 俺は確信を得る。

 これは真理であると。


 そう思えば、目の前がパァっと明るくなる。

 眼前に広がるは俺の心の癒し。

 最大の娯楽。

 人生の一部といってもいい、ビルダーズブレイブの世界。


「いや、これ控えめにいって最高だろ?! なぁ! グリーヴァもそう思うよなぁ?!」


 突然振られたグリーヴァは、肩をびくりとさせるとおずおずと答える。


「お、おう。さ、最高だな? うん。最高だ」


 少し怯えた表情なのが気になるが、賛同を得られて俺は嬉しい!

 俺は矢も盾もたまらず、ハイジャンプして叫ぶ。


「ヒャッホー! ビルダーズブレイブだぁ!」


 どうやら俺は異世界転生というやつをしたらしい。

 だったら、エンジョイするのみよ!

お読みいただき誠にありがとうございます!

幼なれ終わってないのに新作書いてすいません!

あの作品は登場人物が全員魅力的なので必ずや完結させますとも。

えぇ。そうですとも!


もしこの作品がちょっとでも面白い! 続きがきになる!と言う方がおられましたらポイント評価とブックマークもよろしくお願いいたします!


感想なども随時受け付けておりますので、よろしければ、そちらもお願いいたします!


作者にとってとてつもない励みになります!

引き続き頑張っていきます!

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