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第4話 大罪人たちの名前

お腹いっぱいになって、すっかり大罪人メンバーとも打ち解けて――もちろん、その食事会の中でそれぞれの名前や現状へ至る経緯などを聞き出すことができた。


「かっはっは……!!俺の名前は、バルザック!!見ての通りの大戦士様だ!!怪力と根性だけは誰にも負けんわい!!もちろん、大罪人などとは冤罪だ!!わっはっはっは!!」


「私の名前は、ロゼッタよ。こう見えて、槍の扱いには少し自身があるわ。あと……まあ、今回の旅ではあまり役に立たないかもしれけど、料理の腕の方も……。その……私も、冤罪です……」


「……」


 できた。できたのだが――そう、若干、一名この場で唯一の無口が存在していた。

 監視役としてやってきているはずの騎士たちでさえ、仲間たちと団欒を囲む謎の平和な空気の中で、たった一人、ぼくら大罪人(仮)メンバーの中に、一切言葉を発していない人間が紛れていたのである。

 そう――緑色の鳥の被り物を被った、小柄な変人であった。

 あまり意識せずとも、ぼくら4人がすっかり打ち解け合って、身を寄せ合って、世間話を咲かせている中、一人だけポツンと離れた場所に座り、黙々と食事をとっていたのである。

 相変わらず、被り物のせいで表情は読めず、のぞき穴からのぞく視線は鷹のように鋭い。

 ただ一生懸命に食事を口に運んでいる辺り、ロゼッタさんの弁当は大変好評だったようだ。


 たちまち、そんな名前も分からぬ怪しい変人の存在に、アイリが身を寄せてきてコソコソ話をしてくる。ひょっとしなくても悪口だ。あまり気乗りしない……。


「なに、あの人。小さいから、あの子?あの少年?陰気臭いわね。辛気臭いわね。なにかしゃべりなさいよ。なにか食事の感想いいなさいよ。もしかしなくても、この場で唯一の冤罪じゃない人間なんじゃない?大罪人なんじゃない?まったく私たちまで巻き込んで!なんだって、こんなめにあわなきゃいけないのよ……!」

「そ、それはどうかな……。まだ、ぼくたちがどんな大罪を犯したのかを聞いてないけど、ぼくたち5人は大罪人としてこの場に集められた。と、考えれば、本当の犯人が紛れ込んでいるなら1人だけじゃなく、もう数人いないとおかしい。まあ、ぼくたち以外が大罪人とか。でも、バルザックさんとロゼッタさんはとてもとてもそうには見えないし――」

「あら、その二人がありえないとしても、まだ一人いるじゃない。可能性のある人物が……」


 ジト目でこちらを見てくるアイリに、勘弁してくれとぼくは嘆息した。


「この期に及んで、まだぼくを疑うんかい……トホホ……」

「ホトトギスホトトギス……トホホ…」


 突っ込み方も分からない雑なボケをするアイリに、ぼくはうんざりした。



 それから、十数分がたち、ぼくたちは食事会を終えて、ブルーシートを畳み始めた。

 ついに、ぼくたちの大罪の内容とやらを女騎士フィオーナから聞くのだ。

 そして、ぼくたちはそれに抗議し、理解してもらわなけれならない。大罪など犯していない一般人なのだ、と。さもなくば、幻惑の沼地という実質的な死刑宣告の場に連れていかれることになる。


(それだけは避けなきゃ――大丈夫だ。きっとできる。きっと大丈夫。ぼくたちはどうみたって無害な一般人だ。ぼくたちの今までの人生や考えを事細かに説明して、罪人になんてなるはずないってことを理解してもらうんだ!)


 その際には、余分なことをいうアイリには一旦黙っててもらうため、意識を奪う必要があるかもしれない。だが、仕方ない。やむなし。許せ、サスケ。


 ――そんなことを考えていた時の事だ。


 ヒュッ――と、その場に似合わぬ風切り音が鳴った。

 不穏な気配を感じ取って振り返れば――鳥の被り物変人さんが、弓を引き絞り、遠くを狙って矢を射出したところだった。空を切って飛んでいく一本の凶器の先には、木の枝に止まる白い小鳥が一匹。

 まさか、十数メートル離れているあの小さな的に命中させるのか!?と驚嘆する思いだったが、なんてことはない結果に終わった。


 ズバリ、外したのだ。盛大に。木の枝にすらかすりもせずに。地面に突き刺さった。


 ぼくは、隣にいたアイリと揃って顎を外して、その状況に絶句する。


 そんな中、鳥の被り物変人さんは、両手を顔面の前で交差させ――というか、明らかに恥ずかしくなって頭を隠しながら、プルプルと身を震わせつつ、言ったのである。


「ふん、俺の名前は、トト……。なに、今のはわざと外したに過ぎない。あの小鳥が――そう……可哀想だったのさ。木の葉のように儚き命を奪うこと……この俺にできるわけがないっ!」


((可哀想だったなら、最初っから矢を射らなければいいのでは――!?))


 悪い意味(?)ではあったが、結果的に鳥の被り物さん――トトもぼくたちの犯人候補から消えたのであった。

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