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第3話 食事会

「では、全員が集まったところだ。改めて、説明しよう――貴様らの大罪を――!!」


 太陽が中天に登るころ。フィオーナの名で巨漢騎士から呼ばれる女騎士が、堂々と叫ぶ。

 場は、シーアン・フォッグ目の前にある開けた空地。集うのは、ぼくを含む5人の罪人たち――そして、ちょうど、それと同じ数の騎士がぼくらを監視していた。

 罪人を罪の贖罪に向かわせる為の旅路である。

 当然、一同に集結したとあれば、その場には、泣く子も黙る張り詰めた緊張感が――まるでなかった。

 開けた地面の上に、ブルーシートが敷かれていた。

 人数分を優に越す、都合5つ重なる大きな弁当箱。

 黒い蓋が開け放たれた瞬間――広がるは、色鮮やかなおかずの数々。


「かっはっは……!!こいつはたまげたな!随分と美味しそうじゃないか!!まさかこんな場所でこんなご馳走にありつけるとは……!」

「喜んでいただけそうで何よりですわ!私、今日、突然の招集だったもので、子供たちの分のお弁当を作ってしまった後でしたの。それで、きっと、皆さんがお腹をすかしているんじゃないか、と持ってきたもので……」


 浅黒い肌の持ち主である、太った巨漢男が舌鼓を打ち、その様子に尖がり帽子の女性が頬を喜びの感情に染める。たちまち、二人は意気投合し、視線を交わし合った。


「かっはっは……!!いやはや、それは、嬉しいような悲しいような……!!こんなに料理がうまい女性にはぜひお嫁さんに……と思っておったのに……」

「実は、私、甥っ子や姪っ子たちの面倒を見ていまして――一目見た時から、そのたくましい肉体に見ほれていましたわ……」

「「「……」」」


 たちまち、二人が発し始めるキラキラというか、メロメロオーラに、沈黙が下り始めるのは、ぼくたち残りの三人の罪人……。

 そして、監視役である騎士たちの方も、別のブルーシートを広げて、弁当を持ちより各々でお昼休憩を始めている。

 なんというか、不安とか心配に煽られずとてつもなくありがたいのだが、とんで~~~もなく拍子抜けでもあり、一周回って気落ちするというか……状況だけでなく、感情までもが迷子になっていた。ぼくもひとまず、「どうぞどうぞ」と尖がり帽子女性がおすすめしてくるお弁当の中身を口に運ぶことにした。最初に目を付けたのは、真っ赤な魚卵である。内陸であるエスケルン平原に住まうぼくにとっては、珍しい生の魚介だ。


「それは、シーモンの魚卵――別名、シーランよ。海で取れる魔物魚の卵で、表面を覆う薄い魔力の膜が魚卵の鮮度を保ってくれてるの。ちょっと高級だけど、珍味ってほどじゃないわ」

「シーモンの魚卵……。い、いただきます……」


 目にしたことがない食べ物。かつ、魔物の魚卵であるという事実に息を吞みながらも、木製のスプーンでそっと表面が照り輝くシーモンの魚卵をすくう。よく見つめると、ピンク色の表面を覆うように薄い紫色の膜が存在している。それは、微風にさらされて小さく揺らいでおり、魔法や不可思議な力の溢れるこの世界においても、より珍しい神秘さを持っているように思えた。これから、向かう『幻惑の沼地〔シーアンフォッグ〕』と同じように…。


 などといったぼくの感傷に浸るような感想はともかく、恐る恐るながらもぼくはそのシーモンの魚卵――別名、シーランを十個ほどまとめて口にした。そのあまりの味にぼくは、身震いし――


「――!!!!」

「ど、どう、リアン…?い、いや、言わなくていいわ!!っていうか、無理しなくていいわ!その顔、よっぽどおいしくなかったのね!よっぽど口に合わなかったのね!もしかして、毒だったりした?だから、私は日頃あれほど……」

「うっ……美味い!!!!」


 歓喜の声をあげるとともに、さらにシーランをスプーンいっぱいにすくって、口の中に運んだ。

 口の中でシーランの粒が潰れ、あまじょっぱい味がはじけた。表面の魔力の膜が赤い果実に塩を振ったような甘さでありながら、潰れて中からあふれ出してきた液体がしびれるようなしょっぱさで口の中を支配してくる。


「それだけ喜んでくれるなんて、嬉しいわ…!!シーランに醤油を料理酒で味付けしてあるのだけれど、ちょっと調整が難しくてね…。子供によっては口に合わないから、心配したけれど――」

「口に合わないだなんて、とんでもない!!こんな――こんなに美味しいもの食べたことないよ!!」


 アイリが「マジ!?」と言いながら、すぐさまシーランを口に運び、瞳を輝かせたかと思うと、同じく夢中になって食事を進める。たちまち場は食事に舌鼓を打つ声で溢れかえり、ぼくたちは夢中になりながらも、世間話に華を咲かせた。

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