プロローグ 最終通告騎士
ドンドンドンドン――。
玄関のドアを荒く叩く音に飛び起き、寝ぐせたっぷりな『完全寝起き』状態で扉を開くと――。
磨き上げられた金属製のヘルメットに容姿を隠す女騎士が、朝日を背に悠然と立っていた。わずかな隙間から覗く獲物を射抜くような鋭いブラウンの瞳。艶のいい栗色の長髪が朝風に優しくなびく。胸に輝やく徽章にかたどられるは、聖なる翼を持つ一角獣、ユニコーン。
それは、ぼくにとっての――晴天の霹靂、驚天動地……新たな物語のスタートとはとても思えない。
「貴様の名はリアンだな……?我々は見ての通り、帝国直属のイリア騎士団だ!!!!」
「は、はい……?どうも、おはようございます。今日も天気がいいご様子で――」
「貴様、寝ぼけているのか!!!!」
「ひいぃぃ!?!?」
断崖絶壁とか、絶体絶命なんて言葉は似合わない。そう、もっとひどい、絶望、逃れられぬ終わり――終焉、そう、まさに、死刑宣告。
女騎士が、キリッとした瞳で背後の巨漢騎士を振り返り、確認を取るようにうなずく。
「最終通告だ……!貴様には、大盗難の容疑がかけられている……!」
「さ、最終通告って……ぼく、その話、初めて聞いたんですけど!?!?っていうか、盗難じゃなくて、大盗難!?いや、そもそも犯罪っぽいことすらした覚え自体がないんですけどね……?」
ぼくは確かに騎士を目指していて、日々鍛錬を積んでいたけれど――。
巨漢騎士が重々しい雰囲気で、迫力たっぷりに大声をあげる。
「逆らう気か……!!貴様の大罪、本来ならば即死刑ものだぞ!」
「え、ええええええ!?だから、濡れ衣なんですけど!?」
「黙れと言っているだろう!!大罪人であるおまえに拒否権はない!!フィオーナ様の言葉に従え……!!」
言い渡された試練は、とてもとても常人である僕たち(・・・)には、乗り越えられないようなもので――。
腰に身に着けた異国の意匠を思わせる銀色の曲剣に手の柄に手をかける。その動作一つで、周囲の空気が張り詰めたように感じた。
「イリア様からのご通達だ……!貴様ら、揃って――妖精樹の宝石をGETしてこい!命を懸けてな!!!!」
「っ!!!!?????」
それを聞いたぼくは意気消沈――したぼくの脳裏に、浮かんだのは『妖精樹』の別名だ。『生命を喰らう樹』。その瞳から流れるという宝石を、常人が生きて手に入れられるわけがない。それは、まごうことなき死刑宣告だった。




