ラボ
side栗原心
私は大和ダンジョン委員会の地下1階にある、実験室に向かっていた。
「どうだね、調子は?」
ラボに居る三つ編みにメガネの若い女性に話しかけた。
27歳という若さだが、その腕には定評がある。
山野莉緒だ。
「はい、順調です。
覚醒体を制御することに成功しつつあります。」
「成功しつつある?
つまり、成功はまだしていない訳だね?」
「結果を急がれるのもごもっともですが、覚醒体の実験は慎重に慎重をきすべきだと考えますね。」
彼女は冷静な口調でそう言い返した。
「しかし、急いでいるのだよ。」
「わかりますが…」
「今のところどこまでの制御が可能なんだね?」
私は聞いた。
「そうですね。
今のところの制御では、悪い行動を取ると強力な電流を流すと言う安易なものです。
ただ、覚醒体はある程度の学習能力があるらしく、何度か電流を流していると、その行動は無くなりました。」
「ふむ…
兵器としてはまだまだ使えない、という理解でいいのかね?」
「早すぎるでしょうね。
彼らの脳の構造もまだ完全には判明していません。
人とモンスターは大きく違いますし、ましてや相手は覚醒体です。
いずれは人工知能チップを搭載して、完全に我々の制御下におく予定ですが…」
「そうか…
出来る限り急いでくれ。
元公認ダイバーの奴らが活動を活発化している。
それに対抗する手段を持ってなくてはならないからね。」
「…分かりました。
出来る限り急がせます。」
彼女はそう言うと、電流ボタンを押した。
「あぁ、頼んだよ。
覚醒融合体については?」
「覚醒融合体については未知の領域が多すぎますね。
まず、彼らの意志がどこから発生しているのか、分かりません。
身体も融合していますが、どこからどこまでが…
例えば、この個体はゴブリンとコカトリスの覚醒融合体ですが…」
彼女が画面を切り替えると、そこには檻に入れられ、鎖により繋がれた覚醒融合体があった。
「ふむ。
電流で制御できんのかね?」
「結論を言うと出来ません。
覚醒融合体は感覚に鈍感で、痛みという概念もありません。
つまり、痛みによっての学習支配は不可能という事です。」
「うーーむ…」
「人工知能チップも効くかどうか…
もしも、暴走した場合には、こちらにも犠牲が発生しますからね。」
山野莉緒はしかし、メガネの奥の瞳に輝きを灯してそう言った。
「楽しそうだな?」
「えぇ、覚醒体や覚醒融合体を調教する、なんて、これ以上研究者として名誉な事はありません。
彼らの生態を探っていく事で、エクスタシーにも似た快感があります。」
山野莉緒は言った。
やはり、研究者というものは一種の変態だ。
そう思わざる得なかった。
「とにかくよろしく頼む。」
そう言って研究室から出た。
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