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三話

無事、教室に戻ってきた一行。

「東京にいたいぃぃぃ!!」

うだうだと泣き叫ぶのは文化庁。京都に移転が決まってから毎日のように泣き叫んでる。

「京都も住めば都かもしれないじゃん?大丈夫だってー!それに、もう京都移転されたじゃん」

文化庁は2023年に京都に移転され、今は東京と京都の二拠点体勢で動いている。

「いや、京都は実際に都やったからな」

「文化を地方から支える為らしいよー!それに移転するって言っても一部じゃん。全部じゃないんでしょ?」

「なら環境省も環境保護の為に沖縄へ行ってこい」

「それはちょっと......」

「そういうとこだぞ、環境省」

(できれば東京にいたい)

心の声がダダ漏れじゃなかっただけ、自分を褒めたい。

「だってさぁぁ......京都って観光地じゃん!観光地!吾輩は観光庁じゃない!」

「呼んだッスか?」

ガイドブックを読んでいた観光庁が顔を上げる。

「観光庁は良いよなぁ......吾輩なんて......京都に移転......」

「でも、京都は千年の都って言われてるだけあって文化財が沢山あるっス!神社仏閣や昔ながらの伝統事業......育てまくりッスよ!」

「それはそうだけどさぁ......」

「あ、お土産は八ツ橋期待してるッス!」

「東京の空気好きなんだよ......」

文化庁は天井を見上げ、涙を流しながら言った。

「分かる!」

その言葉に私も頷く。

「排ガスとかヒートアイランドとかあるけど、何か離れづらいよね」

「お前......環境省としてどうなんだよ」

文化庁がジト目で見てくる。

すると、観光庁がニヤニヤと口を挟んできた。

「でもでも〜、京都も良い所ッスよ!川も山もあって、環境省ちゃんも相性バッチグーッス!!」

「京都移転は文化庁だけで間に合ってます......」

「こんの東京依存勢!!」

すると、教室のあちこちから「東京最高!」「分かる〜」「物流網多いしな!」「ふるさと納税〜」「総務省、楽しそうだね......」という声がチラホラ上がった。

そして教壇に立っていた文科省が手を鳴らして静かにさせる。

「はーい、授業始めますよー」

そしてドンッと教卓に置いたのは分厚いプリントと問題集。

問題集のことをワークと言ったら、仕事中毒者(主に文科省と財務省)が反応して手に負えなくなるので、ワークという単語は極力言わないようにしよう!というのが校則で決まっているんだ。

文科省の授業はだた問題集を解くだけっていう簡単な作業なんだけど......その量がとにかく多い。いや、マジで多い。

文科省は一瞬だけ教室を見回した。

その視線は、普段よりちょっと鋭い。

「今日の授業は、『教育制度の変遷と現場の疲労係数について』です」

「疲労係数!?」

寝起きの厚労省が叫んだ。

文科省は無言でチョークを握る。

カツン、と黒板を叩き、一言。

「叫ぶ元気があるなら、課題提出もできますね」

一発で静まった。

黒板には、ずらりと年号。

明治学制 → 戦後教育改革 → ゆとり教育 → 脱ゆとり → GIGAスクール構想

……なんか、歴史じゃなくて傷跡みたいだった。

「これらは後で詳しくやります。覚悟しておいてください」

「あの、それ脅し……」

「教育です」

即答。

後ろから防衛装備庁がひそひそ話しかけてくる。

「文科省さんさ、いつ休んでるの?」

「知らない方が良いと思うよ……」

「うえぇ......教育は大変だね......」

うさぎの髪クリップ(命名:マイナちゃん)を付けた総務省が他人事のように呟く。たまにマイナちゃんが動いて、食堂でラーメンを食べているところを目撃される七不思議のひとつ。

どうやって動いているんだろうね......。

すると文科省が配布物を机にドンッと置いた。

「今回の資料は全部、自作です」

「今日で何徹ですか?」

「五徹です」

「よし!勝った!!」

ガッツポーズをする財務省。二人共、倒れないか心配だよ......。財務省は昔、床で雑魚寝(ざこね)をしていたからか腰が痛いと最近言っているし、文科省はよく内科・心療内科に通ってるし......。

「このプリント、今日中に目を通してください」

「全部!?」

「はい。教育に“また今度”はありません。できることは今やるんです!」

ふと横を見ると、財務省がプリントの枚数を数えて震えてた。

あぁ......ダメだ。

至急、この二人に睡眠(特効薬)を!!!

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