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一話

広々としたアプローチの向こうに、重厚(じゅうこう)な建物がそびえ立っていた。

宮殿なのか城なのか、とにかくその規模は広大だ。四階建ての砂糖菓子の様な純白の外壁には窓がずらりとはめ込まれている。外からマシンガンをぶっぱなしても内部には傷一つない程の堅牢(けんろう)な造りだ。

何故そう言い切れるのかというと、実際にぶっぱなした人がいるから。

ここは(かすみ)が関学園。東京都千代田区のどこかにある中央省庁が集まるちょっと変わった......というか不思議な学校。

「はよー、環境省」

教室に着くと、厚生労働省が眠そうに手を振ってきた。

「おはよ〜」

自分の席に荷物を置き、窓から校門を眺める。

校門の方では『生徒会』と書かれた腕章を左腕に付けた財務省が立っていた。(ちなみに防衛省から腐れ外道!と陰で呼ばれている)

「遅刻した奴は予算カットしますよー!」

そう言った途端、ものすごい勢いで防衛省と文化庁がダダダッと滑り込んでくる。

それからチャイムが鳴り、朝のホームルームが始まった。

「滑り込みセーフですね」

宮内(くない)庁さんが扇子でパタパタと仰ぎながらにこやかに言う。

「あ、宮内庁さんおはよー」

「おはようございます、環境省」

宮内庁さんは財務と同じで生徒会に所属しており、生徒会長も務めている。凄いね。

「嫌じゃー!予算カットは嫌じゃー!!」

防衛省は叫びながら机にしがみつき、全力で抵抗している。

「滑り込みセーフですよ。大蔵(おおくら)省」

「大蔵省言うな。今は財務省だ!」

宮内庁さんと財務省は何やら名前のことで言い合っているようで、部屋の温度が数度下がった気がした。

「はいはい、大蔵省は真面目ですねぇ......嫌われますよ?」

「あ?」

しかし、財務省の言葉をスルーする宮内庁さん。宮内庁さんと財務省は昔からの幼馴染らしく、めちゃくちゃ古株。

教室は人数が少なくて一個しかないから、年齢問わず過ごしている。他の教室はそれぞれの行政機関と繋がっていたり物置だったり......まぁ色々。

「ねー気象庁。明日の天気って何ー?」

隣の席の気象庁に聞く。気象庁は天気などを当てるのが上手く、十中八九予言道りになる。さすが全国に気象台があるだけあるね。

そして、教室の隅で(くま)を作りながらブツブツと問題を解いているのは、我らが先生役の文部科学省(長いから文科省と呼ばれている)。

「もしかして自衛隊に興味あるのか?」

「事務所に来ないかい?」

「大丈夫大丈夫、名前書くだけだから!」

廊下でビラを配りながら勧誘活動を行っているのは、三兄弟の陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊。

「あれ?農林はどこにいるの?」

農林水産省こと農林の姿がさっきから見当たらない。

「あぁ......農林は田植えしてるぞ」

「え?」

「明日の天気聞かれて、晴れって言ったら飛び跳ねながら畑に行った」

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