表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法使いの弟子 ~警視庁 公安部 異世界対策課~  作者: 鷹羽 樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/9

第8話 予兆

 新宿五丁目の交差点を歌舞伎町方向へ、イシェリナはゆっくりと歩いて行く。左手には、十インチサイズのタブレットを持ち、時どき立ち止まっては、タブレットに表示された地図にマーカーを打ち、数値を書き込んで行く。そして、数メートル後ろを歩く女性に、自分がその場所を指差した姿と共に、スマホの写真に記録させる。

 

 彼女が記録しているのは魔力残滓だ。魔法が使われると、その魔力は発動した場所と効果を及ぼした場所の二箇所に残る。それは、込められた魔力量によって数時間から、大きく発動したものは数日間残り、徐々に減衰し消えていく。この場所に残るものは、とても少ない魔力量で、発動を途中で止めたかの様であった。その小さな残滓が三メートル置きに三箇所あった。あと数時間もすれば此等これらは消えてしまうだろう。



 

 神宮寺慎一郎の妹である神宮寺凛が運転する、真っ赤なフィアットアバルトが、イシェリナ ウォルディエフを迎えに来たのは、朝の八時三十分であった。迎えに来た場所は慎一郎の神楽坂に有るマンションで、イシェリナと、リアことフェルリアーナ エルナ フォルレンティーナは、慎一郎の元に下宿どうせいしていた。

 イシェリナは一日おきの午前中に、クルマで都内を周り、残留魔力調査をしている。凛はアルバイトで運転手兼助手として付いている。

 こちらの世界=地球では、魔法は存在しないもの、とされているが、現実は少数ではあるが魔法を使用する者はおり、召喚魔法を利用した召喚拉致犯罪は、幾度も起きている。残留魔力を発見し、調査する事は、魔力犯罪解決への一助となる。


 イシェリナは、攻撃魔法などよりも、補助、鑑定、探知魔法などに長けており、魔力量の多さも有って、より高精度、広範囲の探知魔法を使用出来る。そして、その魔力探知をクルマで走行しながら行なっていて引っ掛かったのが、この場所の残留魔力であった。




 靖国通り沿いを、福富町辺りから大ガード下までを、ゆっくりと歩いて一往復、反対車線側を含めると二時間弱ほどかけて調査すると、再度、残滓場所まで戻って来た。

 ファミレスとコンビニが並ぶこの場所に痕跡を残す三箇所の魔力を、一望出来る様に車道側まで下がり、ガードレールに寄り掛かった。

 彼女は、魔力を目元に集めると魔力残滓を視覚化させる。さらにゆっくりと魔力量を増やしていき、より精彩化させていった。すると、その三つの魔力量に差があることが分かった。左側から右側へと、すこしずつ少なくなっている。


 これは、どういうことなのか?彼女は、考えを巡らすが、そうしている内にも魔力は拡散し消えて行っている。すでに右側は今にも消えそうだ。


「リン、お願い。今から言う所に立って、合図を出したら普通に前に歩いて」


 イシェリナの隣でスマホをポチポチして待っていた神宮寺凛は、黙り込んでいたイシェリナの言葉にびっくりして、スマホを取り落としそうになった。


「おっとっと…。で、何処に立つの?」


「そこのコンビニの前、歌舞伎町の方に向いて立って」


 凛は、腰近くまである、長い黒髪をなびかせて、コンビニに走り寄り、イシェリナの方に向いて立つと、体を右へ向けた。


「もう一歩前へ…。さん、にい、いち、ハイ!」


 右側の魔力が完全に消えると同時に凛を歩かせると、凛の歩きに合わせるかの様に、真中、左側と消えて行く。


「ありがとう、リン。もう、良いよ。あぁ、記録に残せないのが悔しい。魔力を写すカメラ出来ないかなぁ」


「何なに、イシェどゆこと? 周りの人に動画の撮影かと思われて声掛けられちゃったじゃん」


 イシェリナは周囲を見ると、自分達二人が注目されていることに気が付いた。

 二人共、百七十センチを超えた高身長でスタイルが良い。少しくせ毛っぽいセミロングのブラウンヘアーで、流暢に日本語を話す外国人であるイシェリナが、黒髪美人の凛と話しているだけで、何人かスマホを向けてきていた。


「この辺で切り上げてクルマに戻ろう。ここは、人が多過ぎて話が出来ない」


 イシェリナは凛に言うと、クルマを置いている五丁目の駐車場へと向かって歩いた。


「ええー。カトレア本店のロールキャベツを食べて帰りたかったのに」


 凛は、イシェリナの後に続きながら、口を尖らせて言った。


「あそこは、行列待ちする店だろう。今日は疲れたから静かな所で食べたい」


 その時、凛の持つスマホの着信音が鳴った。


「あ、リアさんからだ。もしもーし、今ですか?新宿にいます。今日は、私も午後は大丈夫ですよ。はい…、はい…、イシェ、リアさんがお昼一緒しようって」


「うん。オーケーだよ。それと、シンは、そっちにいるのかな? 報告したい事がある」


 凛は、イシェリナのその言葉をリアに伝える。


「…はい。午後二時頃に来るって」


 イシェリナは真剣な面持ちで言った。


「凛、済まないが、代わってもらえないか?」


 凛は、イシェリナにスマホを差し出した。


「やあ、リア。重大な案件だ。事件に成るかも知れない。出来れば、準備室にいる全員に聞いて貰いたい。うん…、うん…。お願いして良いかな? ではまた後で」


 イシェリナは、通話を切るとスマホを凛に返した。


「済まない、凛。準備室でお弁当になった。リアが用意してくれるそうだ。クルマは、新事務所のビルの地下駐車場十から十四番のどれかに停めてくれとのことだ。」


 駐車場に着き、凛は精算機で料金を支払うと領収書を取った。駐車料金やガソリン代など手伝いで掛かった料金は慎一郎に請求することになっている。


「クルマ、出して来るからちょっと待ってて」


 凛は、走ってクルマに乗り込むと、ゆっくりと駐車場内から出し、イシェリナの前に停めた。


 イシェリナは、クルマに乗り込みシートベルトを締めると凛に言った。


「では、さっきの調査の説明をしてあげよう」


  凛の運転する、フィアットアバルトは、その小さなボディーからとは思えぬ程の、野太い音を立てて走り出した。


評価を頂けると、作者のモチベーションが上がります。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ