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魔法使いの弟子 ~警視庁 公安部 異世界対策課~  作者: 鷹羽 樹


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第6話 ある食事の風景

 神宮寺慎一郎を見送った田中一郎と橘伸二は、お互いに顔を見合わせた。


「この後は、すぐ帰りますか? 良ければ食事でも一緒にどうですか?」


 田中は、伸二に聞いた。


「はい、よろこんで」


 伸二は笑顔で答えた。


「では、行きましょうか」


 伸二は、二つのイスを畳んで壁に立て掛けると、田中に聞いた。


「片付けなくて良いんですか?」


「後で私がやりますから、そのままで良いですよ」


「分かりました。何処に行くんですか。庁舎内の食堂ですか?」


 伸二は、何処に連れて行ってくれるか、ちょっと期待した。

 田中は、ポケットからスマホを取り出すと、何処かに掛け始めた。


「桜田商事の田中一郎です。いま、何処にいますか? ふむ、それなら新橋が近いですね。ご馳走しますから来ませんか? え? 十分でつく? いつから空を飛べるようになったんですか。違う?君はターボババアですか?時速八十キロで走ったら、今は、動画に取られて曝されますよ。ターボ小僧ですか君は。普通に来て下さい。場所は日比谷通りの西新橋交差点です。着いたら電話ください。では、後ほど」


 田中は、ため息を一つ吐くと、スマホをポケットにしまった。


「面白いヤツに会わせてあげようと思って、彼に連絡を入れたんですが、今、腹ペコ状態みたいです。

いいとこ連れていくと、とんでもない事になるんで申し訳ないですが、お安い所で勘弁して下さい」


「構いませんよ。何か今の話で、会うのが楽しみになってきました」


 田中と伸二が、ドアの外に出ると田中は閉じたドアノブに人差し指を当てた。するとカチリと音がして鍵が掛かった。


「さすが警視庁本庁舎、オートロックですか?」


伸二が驚いて言うと、田中は、


「まさか、そんな物付いていません。魔法です。そのうち教えてあげますよ」


 庁舎を出て、目の前の桜田通りでタクシーに乗り西新橋を目指した。すると五分もしない内に電話が掛かって来た。その表示を見てため息を吐くと通話にでた。


「早すぎです。こちらは、あと十分くらいで着きます。交差点の角のファミレスは見えますか?もう少しそこで待っていて下さい。では、後ほど」


 田中は通話を切ると、再びため息を吐いた。


「彼は、決して悪い人間じゃないんです。お人好しで、正義感も強いと言っていい。彼の境遇からしたら犯罪に走らないのが奇跡の様です。もし、彼が犯罪者側むこうがわに行ったら、警察にとって脅威となるでしょうね。

 彼は、とある事情で無国籍になった者なんです。国の法整備が追いついていないばかりに、国籍を回復する事が出来ませんでした…」


 前方を見ると西新橋の交差点が見えた。


「運転手さん、交差点過ぎた先のファミレスの前に停めて下さい。ああ、来てますね」


 左車線側歩道の、交差点から5メートル程先に、建物の壁に寄り掛かって座る、男性の姿が見える。


 田中と伸二はタクシーを降りると田中が男性に声をかけた。


「進藤、待たせたね」


「あーイチロー、待ってたよー。お腹すいたー」


 歳は二十歳くらいか? 髪は肩上ぐらいのボブカット。ジーンズにTシャツ、革ジャン、靴は黒のハイカットの安全靴だろうか?


「とりあえず、入ろう。」


 田中は言うと、目の前のファミレスの入口へと歩を進めた。二人はそれに続く。


 店内に入ると、店奥のテーブル席に案内された。伸二が最奥、隣が田中、対面が進藤。


「好きなものをどうぞ。進藤の前は皿が沢山並ぶことだろうから、一人掛けの方がいいだろう」


 田中が言うと、すかさず進藤は肉を連呼する。


 しばらくメニューを眺めた後、タッチパネルを手に、ドリンクバー三つとそれぞれ料理を頼んだ。進藤は肉料理を二つ頼んでいる。


 三人が、ドリンクバーをそれぞれ取りに行き、再びテーブルに腰を落ち着けると、田中は伸二に、


「それでは、あらためて彼を紹介しますね。進藤竜樹(しんどうたつき)君です。歳は…、あー、彼はいくつに見えます?」


「二十歳くらいじゃないですか? それとも、整形とか?いや、首も手の甲もシワは無く綺麗だし…」


 伸二は、首を捻った。


「進藤、君から教えてあげて下さい」


 進藤は、グラスの氷を口に含むと、ガリガリと噛りながら言った。


「もう、こう言うやり取り飽きたんだけど。五十二歳に成ったよ」


 伸二は驚いたが、異世界では往々にしてこの様な事例はあった。


「呪いですか?それとも、異種族に転生したとか」 


「君の経験して来た事からはそう考えるでしょう。しかし、彼の場合は外星人絡み、いわゆるアブダクションと言う物なのです」


 田中が言葉を止めると、店員が料理を運んで来た。

 伸二は、目の前に料理が並べられるのを眺めながら、外星人絡みの事件が増えているのか、と考えた。

 料理が全て並べられ、店員が離れるのを見て、田中は話始める。


「進藤、君が話しますか?」


「えー、さんざんこの話しして、もー嫌になってるんだよね。イチロー話して」


「分かりました。さて、彼の場合は、伸二君の時とよく似ていたと言うことです。誘拐され、奴隷とされ、能力を与えられ、戦わされる。伸二君は帰還まで二年間、戻ってからも家族は迎えてくれ、身元の確認も出来ました。復帰まで御苦労はあったでしょうが、今こうしてある程度の身分と立場を得ています。さて、彼の場合、事件は三十年程前に起きました。あろうことか、この国の中で奴隷狩りにあい、連れ去られたのです。そして、身体強化処置され、学習装置によって言語、格闘戦闘術、戦闘機器操作などを叩き込まれ兵士として売られたのです」


「追加頼んで良い?」


進藤が田中を見て聞いた。

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