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魔法使いの弟子 ~警視庁 公安部 異世界対策課~  作者: 鷹羽 樹


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第3話 綺麗な女医は好きですか? 大好きです!

 石田の隣に居た職員がカーテンの中に入って行った。石田は、一つイスをずらして座ると伊藤の様子を窺いながら聞いた。


「先輩、どうしたんですか?」


 伊藤も一つずらして石田の隣りに座る。伊藤の隣りには、一階でのレントゲン検査を終えた女性職員二人が座って来た。


「あいつ、総務のやつだよな…。

 ああ、悪い、話は飲みの時にしよう」


 伊藤は、そのまま黙り込んでしまった。


 石田が怪訝そうな顔をしていると、横のカーテンが開き、検診を終えた男性職員が出て来た。チラッとこちらを一瞥するとそのまま歩き去る。


「じゃあ先輩、お先に行ってきます」


 石田は立ち上がると伊藤へひと声かけた。


「おお、終わったらロッカールームで待っててくれ」


石田は頷くとカーテンを開け中へと入った。



 カーテンから一歩入ると、一メートル先にパーテーションパネルが立てられ、カーテンを開けても中が覗けない様になっていた。パネルを回り込み奥の入口へ入った。


 一歩踏み入れたその時…


 石田は固まってしまった。


「おおお…。エルフがいる…。エルフは実在した」


 石田は眼前の女医から目が離せなかった。天井の蛍光灯のあかりでさえ輝く金髪、艶々とした白い肌、エメラルドグリーンの瞳、そして…何よりもでかい何がとは言わないがとにかくでかかった。


 石田が入口前に突っ立っていると、眼前に座る女医が顔をこちらに向けた。石田にはその時、目の奥が一瞬、黄色く光った様に思えた。すると、石田の身体をまるで目に見えない板がすり抜けて行くような感じがして、ふらついてしまった。咄嗟に、いつも稽古前に行うような呼吸法を始める。すると、気持ちが落ち着き、身体の芯を取り戻した様な気になった。


 女医を見ると驚いた様な顔をしたが、すぐに笑顔になると石田にイスに座る様に促した。

 

「それでは、フルネームで名前を教えてください。それに、わたしはエルフじゃありませんよ〜」


 そう言うと、左耳をこちらに向けロングの髪をかき上げ、耳朶を見せた。


「たいへん失礼しました。いしだしげおです」


 外国人である事を考えて、名前の部分はゆっくり答える。あらためて女医を見ると、ベージュのニットに黒の膝下丈のスカートの上に白衣、靴は踵の低いパンプスだ。白衣の左胸に付いている名札には、何故か平仮名で『ふぉるれんてぃいな』と書いてある。

 石田は考える。これは狙ってやってるのか?それとも天然なのか?さっき出て行った奴の状態に納得がいった。たぶん俺と同じ事を想像したんだろう。

アニメのスクみ○に付けられた名札を…。


「聴診器を当てますので、前ボタンを開けて、中のシャツを上げてくださ〜い。はい、息を吸って〜吐いて〜、ハイ、オッケ〜です。今日は皆さん心拍数が高めですね〜。レントゲンの方ですが、カゲも見られず異状は無い様です。何かご自身のほうからはありますか?」

 

 石田はシャツを直しながら答えた。


「いえ、特にありません」


「では、これで終了です。お疲れ様でした」

 

 女医は微笑みながら言うとデスクの上のカルテに書き込み始めた。


「ありがとうございました」


 石田は立ち上がると出口へと向かった。


()()()()()()()()()()()。」


 女医は石田の背にそう声をかけたが石田には聞こえなかったのかそのまま出て行った。




 石田はカーテンの外に出ると伊藤に声をかけた。


「じゃあ先輩、ロッカールームで待ってます」


「おう、後でな」


 伊藤はイスから立ち上がると、カーテンの中に入っていった。




 伊藤の検診が終わり、署内で合流した二人は、よく行く近場の居酒屋では無く、普段あまり使わない私鉄の駅まで足を伸ばし、駅前から更に一本奥に入った所に有る、居酒屋に入った。午前中だと言うのに、けっこう人が入っている。

 伊藤は店奥に空いている席を見つけ、そこに腰を落ち着けた。石田には、向かいに座らせる。


「とりあえず、ビールでいいか?あと好きなもん頼め、ここはけっこう美味いぞ」


 伊藤は中生ビールを二つ注文し、焼き鳥を三種二皿ずつ頼んだ。


「先輩は、こっちの方までよく来るんですか?」


「たまにだけどな。時どき、無性にここのもつ煮が食いたくなるのよ。」


 ビールとお通しが運ばれ、二人で乾杯をする。いくつかの注文もした。


「いや、あの女医先生にはおったまげたなぁ。美人にもほどがあるだろ」


「先輩、オレ、エルフですかってマジで聞いちゃいました。そしたら、違うわよ〜って耳を見せてくれたんです」


「何だよそれ、うらやまけしからんやつだ。だが、あの胸部装甲は眼福だった。FいやGかもしれん」


 二人共ビールが無くなったので、佐藤は酎ハイ、伊藤はハイボールを頼む。


「座って待ってる時に赤い顔して、ふらついてた人がいたじゃないですか。オレ何でああなったか分かった気がします」


「美人女医てのに当てられたんじゃないのか?属性持ちにはそれだけでも充分だぞ」


「先輩、あの先生の白衣の胸に付いてた名札を見ました?」


「いや、気づかんかった」


 石田は、白い箸袋を二つに折ると “ふぉるれんてぃいな” と書いて自分の左胸にあてた。


 伊藤は、あっと言うと、何故気付かなかったかと悔しがった。


「解りました?着ていたニットで余計イメージしちゃいますよね。スク○ズを。彼にしてみたらへきに刺さるどころか、対戦車ライフルでこなごなって感じじゃないですか?」


石田は、酎ハイを飲み干すと、伊藤の分と一緒におかわりを注文した。


「そう言えば、先輩、なんかラノベがどうだかって話してましたけど、何なんですか?」


伊藤は、もつ煮をつつきながら話した。


「お前、本庁都市伝説つうの知ってるか?」


「いえ、ぜんぜん」


「ラノベのジャンルに、異世界召喚や異世界転位ものってのが有るだろ。実はそれが現実に起きていて本庁内に秘密の組織が有って捜査、解決してるんじゃないかと。しかもそこで活躍してるのが、コードネームが魔王と言われる捜査官なんだと」


「おお、なんかカッコイイです。でも、カッコよすぎて現実感ないですよね。うーん、これはオレが書いてカキヨミに投稿するか?」


「本庁に俺の従兄が居るんだが、仲良くてな、そういう話をちょくちょくしてくれるのよ。でも、噂話にしては、最近は公安絡みぽくてやばいんじゃないかなんて話もあったりなかったり…」


「え、なんすかそれ、ヤバイじゃないですか。やめましょ。もう、この話なし。そろそろお開きにしましょうか。どうも、ごちそうさまでした」


「えー、もう一軒行こうぜー。この時間でもガッツリ飲める良い店知ってんだー」


 只今の時刻 十三時十五分


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