第1話 プロローグ
これまで、他サイトでのみ投稿させて頂いていましたが、こちらでも掲載させていただきます。
よろしくお願いいたします。
東京都 警視庁本庁舎
エレベーターを降り、警視総監室のドアの前まで来た時、神宮寺慎一郎警視は自らのネクタイを直し大きく息を吸い込んだ。そして、ドアをノックする。間を開けず内からドアが開けられると女性秘書官が顔を出した。
「慎一郎さん…失礼しました神宮寺警視、総監がお待ちです。」
秘書官は、内側のドアをノックし開けると中の人物に来訪者を告げた。
「どうぞ、お入りください」
神宮寺警視は促されるまま室内へと入ると、その広さに驚きながら警視総監の執務机へと向かう。机の三メートルほど前に足を止めると、背筋を伸ばし敬礼をした。
「おはようございます。神宮寺警視出頭いたしました。」
総監は読んでいた書類から目を上げると、手にした書類を置いた。
「ああ、お早う慎一郎。
最近、家の方に顔を出して無いようじゃないか。
母さんと凛が心配していたぞ」
執務机の上にあるネームプレートには神宮寺憲史郎とある。
「総監、仕事上はケジメを付けませんと」
「かたい奴だなぁ。まぁ、いい心掛けだ」
総監は、執務机の引き出しから厚みのあるA4サイズのファイルブックを取り出すと慎一郎に差し出した。
「お前が提案していた特別拉致対策室の件、話が通ったぞ。政府の方でも法案化を検討するそうだ。お前、三之宮先生まで動かしたそうじゃないか」
慎一郎はファイルを机から取りあげると、パラパラと中身を流し見た。
「身内で政治家なんて、これ程心強い味方は無いじゃないですか。しかも現政権で法務大臣に任命されるなんて、どんなご都合主義だよって言いたくなるぐらいです」
総監は、ハァとため息を一つ吐くと言った。
「当面は、水面下での活動に限られる。異世界だ、外星人だのと世間一般にはまだ公表するわけにはいかん。これは、政府が判断し、然るべき時に公表されることとなる。これまでは、ファンタジーだのSF物語だのと一蹴されて来た召喚拉致やアブダクションも、お前の個人的にではあるが、その活動で実証され事件として確立されることともなった。その事で被害者本人やその家族が救われることには、お前に感謝したい。私自身、その家族の一人としてな」
「私自身、被害者の一人として何とかしたいと思って動いてきたんです。そして、それを実現する能力もある。家族にも周りの環境にも恵まれていてこれで実現できない訳は無いじゃないですか。ただ…、
人が…、この事態に対処出来る能力を持った人材がまだまだ足りません。警察組織であるから警察官であることが望ましくはありますが、武力だけでは対処できない事も往々としてあると思います」
「お前が連れて帰った田中君は、今は公安で警部補になっている。今回の辞令で警部としてそちらに回す。それと、これからのことを見据えて自衛隊との連携のテストケースと言うことで、二名出向と言う形で来ることになっている。二人共お前の知った顔だ。能力ある者と言うことだな」
慎一郎は、ファイルの中から二人の顔写真を見つけると嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます。これは、嬉しいです。それと外部から引っ張って来ることは可能ですか?」
「それは日本人か? 外世界人か? 外星人か?」
慎一郎は頬を掻きながら躊躇いつつ言った。
「外世界人です。何名までよろしいでしょうか?」
総監は少し考えると言った。
「二名まで許す。その者らはもうこちらにいるのか? え? いるのか? 不法滞在じゃないか!」
慎一郎は苦笑いをしながら目をそらしている。
「ううむ…。まぁ良い。連れてきたら、必ず身分、指紋の登録、健康診断、予防接種、外部協力者一時雇用契約書を書かせて持ってくること」
「分かりました。ありがとうございます。
それと、今回連れて来る一人を庁内の次回の健康診断で問診医をさせたいのですが?」
総監は、それを聞いて首をひねる。
「医者なのかね?」
「こちらとは、多少やり方に違いはありますが、同じ職種と考えて良いと思います。この者、いや女性なので彼女と言いますが、彼女は人の魔力を見てとることができます。それで、彼女に新しい課員候補を選別してもらおうと思います」
「ほう、そうか。では、それが可能なように計っておこう。ああ、それと今回の部署の部屋の割り当てなんだが、当面は秘匿性の高さから、庁内では無く外部が良いと言うことで、この近くのオフィスを用意した。ダミーとなる社名と看板ロゴなど考えておいてくれ。場所などはファイルを見て確認しておくこと。
今回の辞令は官報など外部には一切公表されない。お前の肩書は外世界外宇宙対策担当管理官だが
表向きには、公安部外事五課長となる。階級は警視正だ。」
慎一郎は、それを聞くと驚いて言った。
「公安に外事五課なんて無いですよね?新設ですか?てっきりどこかの刑事部辺りのイチ係としてぶら下げられると思ってました」
「それだけ、政府も警察上層部も重要度を高く見ていると言うことだ」
その時、総監の執務机に有るインターホンが鳴った。
“ 総監 そろそろ、お時間です。”
「分かった。
さて、慎一郎。警視総監直々の辞令発布なぞ滅多に受けられんぞ。有り難く受け取れよ」
総監は立ち上がり辞令書を持つと読み上げた。
「辞令、神宮寺慎一郎殿
貴殿を警視より警視正へ
と任ず
刑事部参与を排し
公安部外事五課長を命ず
警視総監 神宮寺憲史郎」
総監から辞令書を、頭を下げ両手で受け取ると、左手に二つ折りに持ち、右手で敬礼をし、言った。
「謹んで、拝命いたします」
この物語はフィクションです。
物語に登場する人物、団体、地名、国家、次元宇宙等あくまで作者の妄想でありフィクションです。
現実に実在するものではありません。




