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言葉のナイフ

「お前ら、どうしてここに!?」

 ミザルが驚く。確かに、アルコルが書き置きをしていたから迷いの森からは脱出できたというのは分かる。が、あの砂丘を抜けてここまで追ってこられたのは!?

「ふっ、森を一旦引き返して、低地に降りたのさ」

 フェクダが得意げに言った。

 その手があったか、とミザルは思った。啓示により高台の道を進んできたが、低地からであればここまで来るのはさほど難しくはない…というより、自分たちはなぜ高台の困難な道を進んだのか? という疑問が出てくるが…。

「アルコル、覚悟しろ! 今度は負けねえぜ!」

 ドゥベーが怒鳴る。が、「お前、アルコルの親切がなければ迷いの森でのたれ死んでいたぞ」とミザルは思った。もっとも、このばか相手に最早そんなツッコミも入れる気がしない。

「ドゥベー、フェクダ! もうやめて!!」

 突然、アルコルの陰から、メラクが現れて叫んだ。

「メラク!? 何でアルコルと……」

 フェクダは驚愕した。少し前までは自分たちと一緒に行動していたのに……。

「忘れたの!? あんたたちに襲われた時、アルコルが助けてくれたのよ!! その後から一緒に行動しているのよ!!」

 メラクはアルコルの前に立ち、懸命に叫んだ。

「アルコルはもう、弱虫でも泣き虫でもないわ! 神に選ばれた戦士・紫微垣なのよ!! あんたたちがどんなにやっても勝てるわけない!!」

 さらに続ける

「もしアルコルを邪魔したら、星の大地にとんでもないことが起きるわ!! だから邪魔しないで!!」

 メラクの声には真剣味が宿っている。が、ドゥベーは顔を引きつらせて叫ぶ。

「お前、完全に俺たちを裏切ったな! アルコルなんかに味方しやがって!!」

 最初に裏切ったのはどこのどいつだ――そう思いながら、ミザルが前に出る。

「ミザル?」

「アルコル、君は先に進め。時間もないだろう。こんなばかどもに付き合っている暇はない」

 ミザルは徒手空拳の構えをした。

「先に行け。後から追いつくから」

「ミザル……」

「行け!!」

 その声を合図に、アルコル、メラク、メグレスは走り出した。

「おい、待て! 逃げるのか、アルコル!!」

 ドゥベーが叫ぶが、意に介さず突っ走るアルコルたち。

「いつまでくだらない挑発をしている」

 ミザルがドゥベーに吐き捨てるように言った。

「彼は紫微垣としての使命を優先している。お前のように、安いプライドのために挑発に乗る暇などないんだよ」

「ミザル…てめえ」

 ドゥベーがわなわなと手を震わせる。こいつには最初に会った時から辛酸をなめさせられている。どんなに殴っても殴り足りねえ!!

 ドゥベーは大きな拳を振り上げて飛びかかる。が、あっさりとかわされてミザルからのボディブローを受ける。

「ぐっ!!」

 思いっきり倒れ、その拍子に頭を打った。脳がグラグラする。

「その程度で僕を倒せると思ったのか? 頭まで筋肉だな」

「くそっ…」

 するとミザルは痛烈な言葉を放った。

「さっさと母親のもとに帰りな。まあ、帰ったところでまた殴る蹴るをされるんだろうけどな、お前の暴力ばばあに」

 ドゥベーの顔から血の気が引く。こいつ、なんで俺の家のことを?

「お前ら、うちにメラクの召使いをよこして偵察していたけど、こっちもお前らの家のことを調べていたんだよ」

 ドゥベーの顔がひきつり、がたがた震え始めた。ミザルはさらに追い打ちをかける。

「ドゥベー、お前の家は母親が暴力的なようだな。巨体で腕っ節が強くて、ひ弱な父親は手も足も出ないんだろう? しかも、その母親は不機嫌になるとお前を殴る蹴るとするらしいな。親が親なら子も子だな」

「やめろ!」

「母親には頭が上がらないから、アルコルをいじめて憂さ晴らししていた。メラクも似たようなものだろうな。弱かったのはアルコルじゃなくてお前らだ」

「やめろおお!!」

 さっきまでの威勢がなくなり、ドゥベーは膝から崩れ落ちる。

「フェクダ、お前も言ってやれよ。お前はドゥベーを慕っていたのでなく、ただ怖いから腰巾着をしていたって」

「な……!?」

「否定しないところを見ると図星だな。ついでに言うと、メラクに好意を寄せていただろう」

 フェクダの背中に冷や汗が流れる。なんで、こいつは知っている!?

「お前の家庭は別に問題があるわけじゃない。だったら、こんな奴らとつるむ心境にはならないだろう。だとしたら、ほかの2人に関わる理由があったわけだ」

 フェクダは呆然と立ち尽くすしかできなかった。

「お前らなど僕の拳を使うまでもない。自らの愚かさに気付かなかった時点で、負けているんだよ」

 ミザルは、動けなくなった2人を置き去りにしてアルコルの後を追った。言葉のナイフはあまり使いたくはないが――これで彼らが心を入れ替えることを祈るしかなかった。


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