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背徳の関係

呆然とする3人を見ながらアリオトは立ち上がり、懐から短剣を取り出した。刹那、メラクに向かって斬りかかってくる。

「きゃっ!?」

「メラク、危ない!!」

 アルコルは左手を彼女の左肩に回し、急いで抱き寄せる。アリオトの短剣は空を切った。

「…何の真似だよ、父さん」

 後ろに下がって間合いをとるアルコル。アリオトは剣を構え直し、息子をにらみつける。

「見られたからには生かしてはおけないよな」

 体を起こしたメグレスが、青くなっている。

「ア、アリオトさん、やめて。子供を傷つけないで…」

 気丈に訴えるが、こんな場面に遭遇したことがない彼女は、声が震えていた。

「なあに、大丈夫ですよ先生。始末したらまた楽しみましょうね」

 物騒なことをあっけらかんと言い放つ。ろくに働きもせず、いい加減に生きるこの男に自分も母親も振り回されてきた。しかも、不倫現場を見られたからと口封じに殺そうとしてきた――そのことが、アルコルの瞳に怒りをたぎらせる。

「お前はもう父さんじゃない」

「誰に向かって口をきいているんだ!? このクソガキが!!」

 アリオトは短剣を突きに構えて突進してきた。刃物を持てば、自分が勝てると思ったのだろう。が、それより七星剣の変形が早い。

「秘剣・三連突き!!」

 アルコルの繰り出した突きの一つが短剣を正面から破壊し、残りの二つがアリオトの両腕を刺す。

「がっ!?」

 アリオトは後ろに吹っ飛び、木に激突して気を失った。腕はつながっているが深手を負い、しばらくは使い物にならない。

「しばらくそこで寝ていろ」

 アルコルから、いつもの優しい雰囲気が消える。メグレスやミザルでさえ、こんなに憎悪に満ちた姿は初めてみた。

「先生、どういうつもりですか…」

 アルコルはメグレスに向き直り、問い詰める。

「そ、それは……」

 メグレスははだけた服を着直し、顔を背ける。まさか、自分の敬愛する教師と義父がこんな関係を持つなんて……。

「そもそも、何で先生はここにいるんです?」

 アルコルの怒りを少し和らげようと、ミザルが口を挟む。

「あ、あなたたちがこの町に来るって聞いたから、私とアリオトさんと奥様…ベナトナシュさんと3人で追いかけてきたの」

「母さんも? どこにいるんです?」

「いや、あの……途中ではぐれてしまって」

 歯切れの悪いメグレス。それが、アルコルの怒りをさらにあおった。

「先生はいじめられていた僕を、いつもかばってくれました。だから心が清らかで優しい人だと思っていたのに…残念です」

 その言葉にメグレスはビクッとした。抑えていた罪悪感が首をもたげてきたのだ。しかし、アルコルはきびすを返してもとの道に戻る。

「アルコル?」

 メラクが尋ねると、アルコルは前を見据えて答えた。

「また啓示が来た。北辰の祠に急げと。こんなつまらないことに時間を費やしている暇はない」


 結局、メグレス1人を置いていくわけにもいかなかったので、連れていくことにした。アリオトはのびていたので放っておくしかなかった。

「あの男、大丈夫なのかしら?」

 メラクが心配すると

「いいよ。あんなヤツ」

 アルコルが吐き捨てる。相当腹に据えかねたのだろう、いつもより声に殺気がこもっていた。そのためか、4人は言葉も少なめに歩く。

 メグレスは、背徳の関係への罪悪感と、子供たちを殺そうとしたアリオトへの失望にさいなまれていた。何であんな人と関係を持ってしまったのかしら……?

 メラクは、目の前で教師が不倫をしている現場を目撃し、少なからずショックを受けた。が、自分もアルコルの恋愛が破綻すればいいのに…と思う気持ちが多少あることを考えると、メグレスの行為を責めるに責められない。

「まったく、何やっているんだか……」

 ミザルが独り言のようにつぶやく。誰か1人に対してではない、今回の自分たちの旅に横槍を入れようとしてきた人間全てにである。

 ドゥベー、メラク、フェクダは無謀にも追いかけてきて迷いの森で彷徨い、メラクが暴行されそうになった。メグレス、アリオト、ベナトナシュの3人は、なぜかベナトナシュがはぐれ、メグレスとアリオトが不適切な関係に陥る。

一体、紫微垣の使命を何だと思っているのだろう? 単に信じられないのなら分かるが、6人とも邪魔か余計なお世話をしようとしているだけで、何の生産性も感じられない。しかもその動機が、メグレスを除けば自分本位なものばかりである。

世の中こんな人間ばかりじゃ、神に見放されてもおかしくはないなあ…ミザルがそんなことを考えながら歩いている時――


ガサッ


という音が茂みからした。とっさにミザルとアルコルは構える。しかし、そこから出てきたのは……

「ドゥベー! フェクダ!!」


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