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嫉妬の涙

「ちょ、ミザル、教えないでよ。恥ずかしいじゃない!!」

 アルコルが顔を真っ赤にする。が、何だか嬉しそうだ。

「いいだろう、いずれみんなに知れわたるんだから」

 そう言いながらミザルはメラクを見る。調子に乗っている女を、少し懲らしめてやろうと思っていたのだ。ミザルは、メラクがアルコルに好意を抱き始めたことを看破した。だからこそ、その気持ちをへし折っておこうと思ったのだ。彼はメラクが嫌いである上、アルコルとベナのことを応援している。

ところが……メラクは持っていた梨を落とし、途中まで食べた桃も取り落としている。彼女の目は生気を失ったように光を失っている。

(あれ? 思ったよりダメージ大きいか?)

「どうしたの、メラク?」

 アルコルが声を掛けたが、それに応答がない。突然、彼女はすくっと立ち上がり、「ごめん、お手洗い行ってくる」と言って去ってしまった。

「え、ちょっと、1人は危険だよ」

 追いかけようとするアルコルを、ミザルが止めた。

「まあ、そう遠くには行かないだろう。ほっときなって」

 この精神攻撃は思いのほか大きかったみたいだな。ミザルはそう思いながら、残った桃を口に放り込んだ。


 メラクは、少し離れた林に隠れて木によりかかり、顔を手で覆った。手のひらが濡れている。

(辛いよ、こんなの…自分の気持ちに気付いたと思ったら、もう失恋なの…?)

 神様、ひどい…ううん、これって天罰なのかも。アルコルをいじめていたんだもん、報われない恋をするようになってしまったのかな…。

 アルコル、ベナって子が話に出た時、とても嬉しそうだったな。私には優しい顔は見せてくれるけど、あんな表情は向けてくれない。私は、アルコルをいじめていた女だし、いい思い出なんてないよね。絶対勝てないじゃない。

 声は立てないものの、メラクはしばらく泣き続けた。

(でも……)

 と、メラクは涙をふいた。

「この旅では、彼のそばにいられるのは私なんだ」

だから、報われない恋だとしてもそばにいよう。そう決めた。その時――ガサっという音がした。メラクの背筋が寒くなる。

「だ、誰!?」


「お、戻ってきた」

 メラクは小走りに2人のもとに戻ってくる。

「アルコル、来て! 向こうに誰かいる!」

「え?」

 アルコルがきょとんとする。

「誰かって、ここは無人島じゃないんだ。村人の誰かがいるんだろうが」

 ミザルが呆れたように返す。

「それが…何か唸っているような声なの。なんだか怖くて……」

 アルコルとミザルは顔を見合わせ、腰を上げた。

 その現場に行ってみると、林の中ではあるが奥の方が少し拓けているようだ。ミザルを先頭に、アルコル、メラクと続く。メラクは完全に腰が引けてアルコルにしがみつくように歩いている。

「メラク…右じゃなく左側に来てくれる? 七星剣が振れない…」

「あ、ごめん」

 メラクはアルコルの左腕に自分の腕を絡ませた。胸を強めに押しつけてアピールしようとするのだが、アルコルの表情は変わらない。

――動じないか…。

 ちょっとがっかりする。が、目の前に唸り声の正体が近づいているので、メラクの意識もそちらに集中し始めた。声はどんどん大きくなる。獣の類いではない、人間の女性の声だ……。

「なっ!?」

 3人は目を剥いた。そこには、上半身裸で脚を開いた女性がいる。その間には、男性が体を押しつけるように抱きついていた。女性は丸い眼鏡をした見覚えのある顔だった――

「メグレス先生!?」

 アルコルの声にメグレスははっとして体を隠し、男性も首を振り向けた。

「父さん!?」

 アルコルの呆然とした声に、ミザルもメラクも驚いた。

「何だって!?」

「ど、どういうこと!?」

 アルコルには母親がいて、確か再婚した義理の父がいる。それがこの男――アリオトだが、なぜアリオトがメグレス先生と肉体関係を!?


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