表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/116

果実の木々

「さて、ここからは比較的楽な道になるだろう」

 ミザルが目の前の草原を指さす。砂丘で鬼さそりを退けた後、この草原の入り口に入った。道の幅は200mほどあり、右側は山々が、左側は谷になっている。両脇に林もあるが、これまでの道に比べれば進みやすいことは想像できた。

「メラク、大丈夫?」

 アルコルが心配する。昨日からずいぶん怖い目に遭っているはずだ。もしかしたら、もう嫌になっているかもしれない。

「うん、ありがとうアルコル。私は大丈夫だから……」

 身なりは相変わらずアルコルからもらったスカーフを胸に巻き、短パンをはいている。下着は上下ともない。本来なら低地の村に連れて行って保護してもらいたかったが、啓示の数が多くなっている。早く進まなければ、取り返しの付かないことになるだろう。

「ついてくるのはかまわんが、アルコルは重要な使命を帯びている。これ以上、足は引っ張るなよ」

「分かっているわよ」

 どこまでも容赦ないミザルに対し、メラクがキッとにらむように反論する。

先の戦いでよく分かった。アルコルは想像もできないような何かを背負っている。だから、それを見届けようと思った。それは興味本位などではなかった。メラクの心に、これまでにはない感情が芽生えてしまったのだ。

(…今さらこんな気持ちになってしまうなんて…困ったものだけど、仕方ないよね)

 今までいじめていた男の子。その人に守ってもらって、優しい言葉までかけてもらったら……。

(夕べ寝た時は、襲われていないことに安心したけど、もう襲われてもいいわ。もしそれでアルコルが許してくれるなら……)

 そのくらいの気持ちになっている。この旅が何日かかるか分からないけど、最後まで見届ける。その後は――また身勝手と言われそうだけど、自分の気持ちを告白しよう。もちろん、これまでの罪を謝ってから……。


 3人は無言で道を進んでいく。時刻は昼を過ぎた頃だろう。歩きながら、食料をかじることにした。行儀は悪いが時間が惜しいのだ。

「うーん、少し足りないなあ」

 ミザルが腹を撫でる。もともと2人分の食料を持ってきていたのだが、メラクが加わったために減るのが早い。やむなく、少し節約して食べるようにしている。

「どうもごめんなさいね」

 メラクはムッとした。確かに足を引っ張っているのは事実だが、ここまで言われるとさすがに腹が立つ。

「2人とも、けんかしないでよ」

 アルコルが困惑ぎみに諭す。3人の中では一番年下なのに、妙なものだ。

(アルコル、少し大人っぽくなったのね…)

 メラクはアルコルをちらっと見た。女の子のような顔立ちはそのままだが、どこか精悍な雰囲気が漂う。メラクは胸に手を当てた。

(どうしよう、気持ちがどんどんふくらんでいく…)

 まさか、アルコルにこんな気持ちを持つなんて……いじめていた日々を後悔した。すると、果物がなっている林に着いた。

「ミザル、メラク、見て! 桃や梨がなっているよ! もらおうか!」

 アルコルは木に登り、果実を数個もぐ。熟していておいしそうだった。2人に渡すと、アルコルは座り込んで食べ始める。

「おいしい!」

 無邪気な笑顔がかわいい――こいつ、今までこんな表情見せてくれたことなかったな。果物が好きなのね。

 メラクがそんなことを思いながら桃の皮をむいてかじりつくと、ミザルが聞き捨てならない言葉を発した。

「おいしいな。アルコルの得意なドライフルーツにしてもいいかもな。そうだ、ベナちゃんと一緒に来たらいいよ」

 ベナちゃん――!? 誰よ、それ……。

「えー、でもここまで来るのには危険だよ。狼やら吊り橋やらさそりやらあるし…。この前だってベナは怖い目に遭っているからなあ」

「君が守ればいいじゃないか。この旅が終わったら二人で来なよ。君たちはドライフルーツ作りが趣味なんだから、いい機会じゃないか」

 え、誰? 誰なの? 共通の趣味がある人? そんなの聞いていない……。

「ね、ねえ……」

 メラクがおずおずと尋ねる。

「ベ、ベナちゃんって誰?」

 顔を真っ赤にして泣きそうな顔のメラク。きょとんとするアルコルをよそに、ミザルがしれっと教えた。 

「アルコルの彼女だよ。この前のキャンプで知り合ったんだ。相思相愛でかわいいカップルになったのさ」

 メラクの目の前が真っ暗になった。そんな――いつの間に…?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ