女の子たちと
しかし、ミザルのもくろみはあてが外れた。夕食を一緒にとることとなったのである。
「ミザル……」
「僕ら、思ったよりもてるのかね?」
おどけた調子で言うが、これでは啓示で示された場所に行けない。仕方なく、とりあえず一緒に夕食を調理することにした。
テントをはっている場所には、井戸や川、たき火用の場所、鍋などがそろっている。7人で野菜と魚を切って鍋に入れ、香料を混ぜた。
女の子たちは、アルコルの手際に目を見張った。この時代の男性は、ほとんど家事ができない。しかし、アルコルは主婦なみの手際で野菜や魚を切る。鍋を混ぜる手つきも手慣れているものだ。
「上手ね、あなた」
先の女の子が感心する。
「いや、まあ……」
母親のベナトナシュから強制的に手伝わされていた。それがここで生きたというわけだ。
皿に盛り付け、皆で食べる。その最中、自己紹介をしていなかったことに気付いたので、それぞれ名前を言った。アルコルの次は、例の女の子だ。
「私はベナトナシュです。みんなからはベナって呼ばれるの。よろしくね」
その名前を聞いてアルコルの顔がこわばった。ベナトナシュ――あの忌まわしい母親と同じ名前だった。
「どうしたの、アルコル?」
その表情の変化に気付いたベナは、アルコルの手を優しくつかんだ。
「あ、いや……」
「何、どうしたの? お姉さんに言ってみなさいっ」
ベナはアルコルの後ろに回って、首に腕を伸ばして抱きついてきた。背中にベナの胸が触れ、顔が一気に赤くなっていく。
(柔らかい……)
アルコルも年頃の男子である。意識せずにはいられない。
「ベナー、年下男子をからかうのよしなって。アルコル君、赤くなっているよ」
「えーだって、アルコルかわいいんだもん。私、気に入っちゃったあ」
ベナは軽く腕に力を入れる。胸が強く押しつけられてくる。
その様子を見て、ミザルは「アルコルにも春が来たか」と微笑んだが、アルコルの表情が苦しそうになっているのに気付いた。そこで、ミザルはアルコルの腕をつかんだ。
「よかったな、アルコル。友達が増えて。さて、後片付けしようか」
後片付けをして火を囲んで談笑した後、それぞれのテントで休んだ。アルコルとミザルは、テントの中で並んで横になっている。
「アルコル、大丈夫か?」
「ミザル…」
「かわいい女の子に抱きつかれてびっくりした……だけじゃないだろう?」
ミザルは見抜いていた。ベナの名前を聞いた瞬間、アルコルの表情がこわばったのだ。いや、正確には曇ったという方が正しい。
「母親の名前と同じだったから、嫌な記憶も一緒に出てきたんだよな」
「うん……」
女の子にあそこまで好意を寄せられるのは初めてだ。だけど、その子の名前があの母親と同じ名前なので、恥ずかしさや照れくささより忌まわしさが上回ってしまった。
「恋愛に限らず、人間関係は難しいことがある。ただ、あの子は君の母親とは別人だからな」
「うん……」
「さて、明日は朝から鏡の玉のところに行くぞ。寝坊しないようにな」
「…ミザル、女の子たちに誘われてもうまく説得してね」
「はは、こりゃ一本とられた」
本当は今日すぐにでも鏡の玉を探そうと思っていたのに、調子に乗って遊んでしまったからできなかった。明日はしっかりしなければな――。
翌朝。7人で朝食をとった後、ミザルは言った。
「ごめん、今日はアルコルと島の北東に行ってくる。午後はもしかしたら帰ってきて遊べるかもしれないけど……」
「えー、あたし、アルコルと遊びたい!」
ベナが頬をふくらませながら、自分の腕をアルコルの腕に絡ませる。
「ベナ、わがまま言わないの。彼らにも用事があるんだから」
どうにか説得し、北東に向け出発した。その間際、ベナがアルコルに「これ」と包みを渡した。
「私が作ったドライフルーツよ。おやつにでも食べて」
その中には、干しぶどうや干しりんご、パイナップルなどが入っていた。
「え、ベナもドライフルーツ作るの!? 僕もなんだ」
「そうなの!? うれしい、同じ趣味の人がいるなんて……」
共通の何かがあると、人は急に打ち解けていく。
「気をつけてね。戻ってきたら、また遊ぼ」
「うん」




