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ミザルとの邂逅

 学舎に登校する最中、ドゥベー、メラク、フェクダの3人に出くわした。こいつらは登校中も僕をいじめてくる……ああ、みじめな人生を決意したのに憂鬱だ。

「ようアルコル。今日も仲良くしようぜ」

 3人ともヘラヘラと笑いながら近寄ってくる。仲良くしようって……ドゥベーは殴る蹴るの暴行で、メラクは罵詈雑言で、フェクダは陰湿ないたずらをしてくるんだろう。

「何とか言ったらどうなんだよ!」

 いきなりドゥベーが拳骨を繰り出してきた。アルコルは頬に受けて倒れる。

「きゃははは。相変わらず弱っちいわね。それでも男!?」

「みじめだねえ」

 メラクとフェクダが、倒れたアルコルを踏みつけてくる。ううう、痛いよう…なんでこんな目に遭わないといけないんだ…。アルコルの目に涙が浮かんだその時、メラクとフェクダの動きが止まったのが分かった。

「何している?」

 二人は、突然現れた1人の男に肩を捕まれたのだ。年はドゥベーたちと同じくらいで、細身で端正な顔立ちだった。が、細い腕の筋は盛り上がっていて、見かけ以上に腕力があることが分かる。

「な、何よ?」

「何だ、お前は?」

 メラクとフェクダは彼の腕を払おうとした。が、どういうことか体が動かない。

「下級生を3人がかりでいじめるのは感心しないな。けんかなら1対1でやるのが筋というものだ」

 穏やかに笑みを浮かべる男だが、その目は笑っていない。

「なんだてめえ!! 俺たちに刃向かう気かよ!!」

 ドゥベーが拳を向けて突っ込んでくる。が、男はメラクとフェクダを横に突き飛ばすと、突っ込んできたドゥベーの腕をつかみ、背負い投げの要領で投げ飛ばした。

「ぐわあっ!!」

 背中をしたたかに打った巨漢のドゥベーが叫ぶ。

「消えろ。それとも本気で痛い目に合いたいか? 骨1本へし折るくらいわけないぞ」

 先ほどまでの笑みを消し、氷のような冷たい目で3人をにらむ。

「くそっ、覚えてろ!!」

 ドゥベーの悪役じみた捨て台詞を合図に、3人は逃げ出した。

「やれやれ…君、けがはないかい?」

「…ひっく、うっく」

 まだ泣いている。男が手をさしのべようとすると、アルコルはパシッと払いのけた。

「ん?」

 男が呆けていると、キッとにらむアルコルの目と目が合った。やがて、アルコルはそそくさと立ち上がってその場から去って行った。

「…やれやれ」

 1人取り残された男は、頭をかきながらため息をついた。


 この時代の学舎は、現代の学校というより江戸時代の寺子屋に似ていた。一つのクラスに縦割りで7~15歳の子供たちが20人前後いる。ドゥベー、メラク、フェクダ、そしてアルコルは同じクラスだった。

 アルコルが教室に入ると、すでに先に登校していた3人組と目が合った。

「ちっ…」

 ドゥベーが舌打ちをしながら目をそらす。本当はアルコルをどつきたいのだが、ミザルに投げ飛ばされて背中が痛い。今日はアルコルのいびりを勘弁してやるか、という心境だった。

「はい、静かに。ホームルームを始めるよ」

 担任のメグレスが入ってくる。眼鏡をかけた真面目そうな顔と大きな胸が印象的だ。

「今日から一緒に勉強する学友を紹介します。こちらに来て」

 メグレスの合図で、1人の男が教室に入ってきた。はて、どこかで見たような……

「ミザルといいます。どうぞよろしく」

 つい先ほど、いじめっこ3人組をのした男だった。ドゥベーたちと同じ15歳、端正な顔立ちは女子から注目の的となった。

 ドゥベーは思わずガタッと席を立つ。

「おま……」

「あら、ドゥベー君、知り合い?」

 メグレスの質問にどう返答したらいいか考えていたドゥベーに代わり、ミザルが満面の笑みで口を開いた。

「ええ、メグレス先生。今朝方、彼が年下の男の子をいじめていたので、思いっきり投げ飛ばしてやったばかりです」

 教室にどよめきが起きる。ドゥベーを投げ飛ばしたって? 驚きに交じり、自分のプライドを傷つけられたドゥベーは顔が真っ赤になる。

 そんなことは意にも介さず、ミザルが教室内を見回す。すると、メラクとフェクダ、アルコルの姿が目にとまった。

「なんだ、いじめていた3人組といじめられていた子が一緒か。まあ、仲良くしてやってくださいな」

 こういう時、もっと言葉をオブラートに包むものじゃないのか? 歯に衣着せぬ物言いに、他のクラスメートも呆気にとられていた。


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