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 シリウスは七星剣を掲げてベガに向かっていく。

「ばかなヤツ! 特攻とはな!!」

 コラプサーを袈裟斬りに繰り出すベガ。シリウスはそれをかわすと、ベガの右手を蹴り上げた。

「なっ!!」

 ボキン、という音を立てた腕から魔剣が離れ、20メートルほど先の地面に突き刺さった。

「今よ、シリウス!!」

「八の秘剣・北落師門!!」

 再び奥義を発動させた。狙いは――ベガではなくコラプサーだ。星鏡が魔剣を囲んだ瞬間、光の壁が現れた。

 コラプサーは動いていないのに、すさまじい光の斬撃が刀身に向かう。さらに、これまでの中で最も多い赤い刃が現れ、これも刀身に向かっていく。轟音が夜空に響き渡り、土煙が舞う。やがてそれが治まると、ボロボロに刃こぼれして束の宝石が砕けた魔剣・コラプサーがあった。しばらくすると、刀身も宝石も粉々に砕け散った。

「やった……成功だ!」

 スピカの提案した作戦とは、コラプサーに向けて北落師門を発動させるというものだった。ベガが骨折しても動けたということは、コラプサーが持ち主の精神を乗っ取り、肉体を操る性質があると見抜いたのだ。アルタイルは前の持ち主が死んでから手にしたから自分の意思があったのだろうが、ベガの場合はアルタイルがまだ生きていた状態で手にしたため、これまでにない事象が起きたと推測した。

 そこで、北落師門を意思のあるコラプサーに発動させることで、自滅させられると踏んだのだ。成功するかは未知数だったが。

「終わったんだな……」

 シリウスがへたり込む。強靱は精神と肉体を持つ彼でも、この戦いは難儀するものだった。しかし結果として盗賊団を壊滅させ、首領を戦闘不能にし、魔剣も破壊することができた。紫微垣としての使命を果たしたのである。

「お疲れ様、シリウス」

 後ろからスピカが抱きしめてきた。天漢癒の膜を解いて出てきたのだ。ああ、これで平和が戻ったんだ……。

 そう思って何気なくベガの方を見ると、骨折しているのに立ち上がろうとしている。

「ベガ、もうよせ。戦いは終わった……」

 しかしシリウスの言葉が終わらないうちに、ベガは一足跳びにシリウスに向かってきた。その手には――ナイフが握られている。

(まずい!!)

 油断した、ヤツはまだ戦意を失っていない! 慌てて七星剣を握りしめるが、ナイフはもう目の前に来ていた。

 しかしシリウスの前に――ミラが立ちはだかった。

「ミラ!!」

 ベガのナイフは、ミラの腹部に突き刺さった。鮮血が舞い、ミラがどすんと倒れる。腹部からはおびただしい血が流れている。

「どけ!!」

 シリウスはベガを蹴りで突き飛ばし、ミラの腕から天漢癒の腕輪をとって回復し始めた。

「ミラ! しっかりしろ!!」

「う……」

 致命傷だったら治せない! 何とか生き返ってくれ!! そう願いながら回復していると、ベガがむくりと起き上がった。

「私は……?」

 呆けているのか? シリウスがにらみつけるとベガの表情は憑き物が落ちたようになっている。残っていたコラプサーの瘴気が完全に解けたようだ。

 しかし、ベガにかまってはいられない。回復に集中しないと!

「ミラ、何で俺をかばった?」

「だって…私…シリウスも先輩も…好きなんだもん…2人には幸せに…なってほしい…んだもん」

「ミラ…」

 スピカは涙を流した。シリウスを取り合っていた時、自分は大人げない態度だったのに、それを恨みもせず、こんなことを思ってくれるなんて……。

「ふふふ…でも2人を…守れてよか…った…」

 シリウスがため息をついた。

「まったく、無茶しやがって。幸い、急所は外れていたから大丈夫だ。もう傷口もふさがり始めている」

「よかった……」

 スピカは安心してへたり込んだ。

 これで、本当に終わったんだな。


 その後、盗賊団の雑兵たちは三々五々、西の村に戻ったようだ。更正するまでにはなっていないようだが、以来、ポラリスを狙いに来ることはなかった。

 ベガは役所に突き出され、刑に服することになった。しかしながら、死者が盗賊団やアルタイルだけで一般市民の被害が出ていないことから、多少は軽くなり、10年の懲役である。

 盗賊団からポラリスを守ったという報は、北の町じゅうに広まった。デネブとプロキオンにも会い、アルタイルの最期とベガのことを話した。デネブは、ホッとしたような、寂しそうな表情をしていた。

 破綻したとはいえ、夫婦だった2人である。夫の死を聞くのは心中複雑だったのだろう。



 そして、10年近くの月日が流れ――



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