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一の秘剣・魚釣り星

 ある日、またミラとスピカが来た。

「シリウス、来たよ」

「ああ……」

 シリウスはもはや諦めた表情だった。ミラはともかく、一緒に来るスピカを見る度に「物好きだな」と言わんばかりの表情だ。

(私だって好きで来ているわけじゃないわ。かわいい後輩が心配だから…)

 シリウスと目が合う度ににらみ返す。そしていつものように岩屋に足を踏み入れた時――


 グラッ!!


 と地面が揺れた。

「え、地震!?」

 2、3秒の小さな揺れだ。しかし次にドンっ、という衝撃とともに激しい揺れが修行場を襲った。ミラとスピカはバランスを崩してその場に尻もちをついた。その瞬間、2人の足元に大きな影ができた。

「え?」

 見上げると大岩が揺れて落ちようとしている。

「きゃああ!!」

「危ない…!」

 シリウスが叫んだ瞬間、大岩が落下した。駆けだして救出しようとしたが距離は30メートル程――間に合わない! このままでは2人ともぺしゃんこだ!

 シリウスはとっさに腰の七星剣に手をかけ、意識を一瞬で集中させて叫んだ。

「一の秘剣…」

 七星剣が光り、鞭の形に変形する。

「魚釣り星!!」

 シリウスは右下から左上に切り上げるように剣を振る。刹那、刀身が鞭のように伸びて落下してきた大岩を直撃し、真っ二つに切り裂いた。さらに剣を振り下ろすと二撃目が当たり、大岩が木っ端みじんに弾け飛んだ。

 目をつむって抱き合っていたミラとスピカは、おそるおそる目を開けた。すると、自分たちの真上にあった大岩はどこにもない。

 シリウスは剣を放り出して駆け寄った。

「おい、大丈夫か!?」

 二人ともすぐに動けなかったが、やがてミラが目に涙を浮かべてシリウスに抱きついてきた。

「うわああああん、シリウス! 怖かったよお!!」

 顔も目も真っ赤にして大泣きするミラ。するとスピカも目に涙を浮かべて泣き始めた。

 シリウスはそれを見てほっとした。泣くのであれば命に別状はなさそうだ。

「まったく、ここは危ないって言っただろう……」

「ひっく…ごめんなさい…あと、ありがとう、助けてくれて……」

「あ……」

 ミラの言葉でシリウスは気付いた。初めて秘剣が使えたのだ。

「よくやった、シリウス」

 庵の中からアルクトゥルスが出てきた。

「じいさん……」

「今まで使えなかったのは、お前の心に雑念が多かったからだ。わしを見返したい、早くここを抜け出したい、裏切った友に報復したい……そのような思いが剣に伝わり、技が使えなかったのだ。だが今、この少女たちを守る一心で剣を振るった。だから発動したのだ」

 シリウスは拳を握り、落ちている七星剣を見やった。自分のためではなく、他者のために力を使おうとしたとき、技が発動したのだ。

「さて、君たち立てるかね?」

「あ、はい……」

 ミラは目をこすりながらよろよろと立つ。スピカも手を膝について立とうとした。

「痛っ!」

 顔をゆがめるスピカ。右足首が腫れている。

「スピカ先輩、くじいたの?」

「うん、たぶん……」

 けがをしたことに気付くと、どんどん痛くなってくる。先ほどまでは岩に気をとられていたから意識が向かなかったのだろう。

 痛みが増してきて立てない。すると、見かねたシリウスはスピカの膝裏と肩に手を添えた。

「ちょっ、何!?」

そのまま持ち上げてお姫様抱っこをする。

「や、やめてよ、恥ずかしいじゃない!」

「どのみち歩けないだろ。もしかしたら骨折しているかもしれんし」

 まったく、助けてやったのにうるさいやつだと思いながら、とりあえず皆で庵に入ることにした。


「骨折はしていないみたいだな」

 シリウスはスピカの足を手当してやった。数日もすれば腫れはひくだろう。スピカは眉間にしわを寄せながら、シリウスの顔をまじまじと見た。

「何だよ」

「あなたってホント、いい人なのか悪い人なのか分からないわね」

「素直にありがとうって言えんのか?」

 忌々しい口調で返す。まったく、この女は何かとつっかかってくるな。

「シリウス、彼女らの親御さんにはここに泊まることを連絡しておいた。明日、送ってあげなさい」

「何で俺が…」

「師匠の命令だ。意見は許さん」

 アルクトゥルスはにこにこしながらばっさりと言った。このじじい、顔は優しいがやることは本当にえげつない。残念だが従うしかなさそうだ。

「あと、夕食を用意してやりなさい」

「へいへい」

 シリウスはもはや観念したかのように台所に向かい、お盆にスープの入った皿を載せて戻ってきた。

「今日の夕飯はいわしのつみれ汁だ。食いたきゃ食え」

 やけになっているのか、かなりつっけんどんだ。

「女の子にはもうちょっと優しい言い方したらいいんじゃないの?」

 スピカが頬を膨らませる。その横でミラが遠慮なく「いただきまーす!」と笑顔でスプーンを口に運んだ。

「おいしい! シリウス、おいしいよ!!」

「それはどうもありがとう」

 頭をかきながら棒読みで返す。スピカも空腹だったので一口食べた。

「おいしい…」

「先輩、シリウスは料理上手なんですよ」

 ミラは自慢げだ。幼なじみを褒められるとうれしいのだろう。

「お前ら、さっさと寝ろよ。明日はすぐ帰ってもらうぞ」


 しかし、翌日にアルクトゥルスがとんでもないことを提案してきたのだ。


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