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魔剣異聞④――アルタイルと東の都

 東の都に着いたアルタイルは、とりあえず仕事を探すことにした。所持金は多くない。安い宿と3食でも、1週間しかもたないだろう。

 そこで、職業紹介所に行ってみた。すると、都で警備の役人を臨時募集していることが分かった。1カ月は見習いで、正式に採用されるとかなりいい給料がもらえるらしい。

「よし、これに応募しよう」と、都の役場を訪れて面接してもらい、すぐに採用された。ある程度は剣が使えることが、評価されたのだ。

「やっぱり紫微垣のような厳しい仕事はダメだな。世の中、なるべく楽に生きねえとな」


 翌日。アルタイルは剣を1本渡され、城の外側の警備にあたった。東の都は、大市場と川を挟んだ反対側に城がある。この都は、代々アルデバラン王が治めてきた長い歴史をもつ。そのため、城の周囲の地域は星の大地の中でも治安が良い。

 アルタイルの警備の任務は、城の外壁に立って不審者が来ないか見張るものだ。しかし、治安が良いため不審者など滅多にいなく、ここ数年で1人いたかいないかだ。それも、単に道に迷った田舎者だったというから、のんきなものである。

 あまりに暇なので、座り込んで間食をする者、カードゲームに興じる者もいる。

(楽な仕事だなあ)

 しかも、給料は北の町の役人の3倍は出るらしい。まさにアルタイルが理想とする仕事だった。そう、そのはずだったのだが……。


 3週間たち、アルタイルはいつものようにあくびをしながら城の外に立っていた。あと1週間で正式に採用となる。その時には、正式採用の祝いとしての手当も出るという。額は給料の三倍らしい。ウハウハ気分のアルタイルと仲間たちは、初任給を何に使うか話している。酒、女遊び、賭け事など、ろくなものがなかった。

 すると、1人の男がふらっとやってきた。黒い外套を着た、初老の男である。

 警備の者たちは男の前に立ちはだかり、高圧的に言い放った。

「おっさん、ここは東の都の城だ。関係ないヤツ、怪しいヤツは近づけるなって言われているんだ。消えろ」

 ニヤニヤしながら、ガラの悪い警備兵たちがつっかかる。それを見たアルタイルは、

(あーあ、あんなみすぼらしい格好して……無職なのかね。俺たちみたいにちゃんと働けばみじめな思いはしなくてすむのに……)

 つい先日まで自分も浮浪の身だったことを棚に上げながら思った。この初老の男の外套は薄汚れていて、口には無精ひげが生えている。見るからに浮浪者だった。

「おい、失せろっつってんだろ!!」

 ボーッと突っ立っている男に対し、警備兵の1人が近寄りながら声を荒げる。すると、その兵士が突然止まった。不審に思った瞬間――その兵士の足元に血が滴っているのが見えた。

「!!」

 兵士が突然、仰向けに倒れた。その胸――心臓のたたりにナイフが刺さっている。兵士の顔は既に土気色になり、体は動いていない。即死だった。

「うわああ!!」と悲鳴を上げる兵士たちを、浮浪の男は隠し持っていた剣で次々と斬り捨て、体を刺し貫いた。血の霧が舞い、10人ほどいた兵士はほとんど殺された。残ったのはアルタイル1人である。

「た、助けてくれ……!!」

 男はアルタイルに近寄る。その剣にはたった今斬殺した兵士たちの血がべったりとついていた。

 アルタイルは剣を抜こうとしたが、手が震えて抜けない。

 話が違う! 不審者なんて滅多に出ないって言っていたのに……!! こんなくじ運の悪いことなんてあるか!

 アルタイルは男に背を向け、持ち前の俊足で逃げ出した。


 その後、浮浪の男は熟練の兵士たちに囲まれた。勝ち目がないと悟るや、自ら頸動脈を切って自害した。

 聞くと、以前は東の都の警備兵だったようだが、上官と衝突して仕事をクビになり、再就職できず心を病んだ。その結果、警備兵に逆恨みまがいの報復をして自分も死のうとしたようだ。

 この件で、アルタイルのことが問題になった。警備兵なのに敵前逃亡をしたのである。管轄する部署で、アルタイルを減給処分もしくは解雇することが検討された。が、アルタイルの方から「やめたい」との申し出があった。結局、1カ月分の給料と退職手当を出され、彼はクビになった。


 その後、アルタイルは東の都で客商売や職人などの仕事を転々としたが、どれも長くは続かなかった。


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