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魔剣異聞②――昔語り

「う……」

 その女性は目を覚ました時、自分が布団の上で寝ていたことに気付いた。

「ここは……」

「北の町、貪狼の祠にある庵さ」

 声のする方を振り向くと、1人の男性がいた。女性をここまで運んできた男――シリウスである。

「あの……」

「子供だったらほら、そっちで寝ているぜ」

 シリウスがあごを向けたところに男の子が寝ていた。顔に若干傷があるが、基本的に無事のようだ。

「プロキオン、よかった……」

「シリウスー! お鍋、そろそろいいよー」

「あ、目覚めたのね。よかった」

 庵の奥から2人の少女――ミラとスピカが出てきた。

「分かった、スピカは俺と交代でこの人を見ていてくれ。ミラは子供の方を頼む」

 シリウスは台所に入り、鍋をかき混ぜる。代わりにスピカが女性のそばに座り、ミラが子供の様子を見ることになった。

「お母さん、大丈夫ですか? 海であんなにずぶ濡れになって……大変だったでしょう?」

 スピカは透き通るような目で見つめた。相手が誰であろうとスピカは優しい。その優しい声を聞き、女性は口に手を当てて泣き始めた。

「う、うう……」

「だ、大丈夫ですか?」

「ご、ごめんなさい。久しぶりに人の温かさに触れたから……」

 すると子供が起きて泣き出した。ミラは慌ててその子を抱きかかえる。

「よしよし、どうしたの? ママのところに行く?」

 慣れない手つきで抱え、母親のもとに連れて行く。子供は母親の胸にくっつくとピタリと泣き止んだ。

「お母さんってすごいですね。あんなに泣いていた子が……」

 スピカが感心したようにつぶやく。父親でも子供をあやすことはできるが、子供が生まれた時から24時間触れ合わなければ難しい。その点は、母親の方が有利と言える。出産してから数カ月間、文字通り一緒にいるからだ。


 その後、5人は夕食をとった。その日は魚のつみれ汁だった。子供は食欲が旺盛で、2歳児にしてはかなりの量を食べる。

「すごい、よく食べますね、プロキオン君」

「この子が元気なのが、せめてもの救いです」

「そういえば、ママさんの名前をまだ聞いてなかったね」

 ミラがポツリとつぶやく。

「すみません、バタバタして……私はデネブといいます。西の村から、命からがら逃げてきました。夫のアルタイルの傍若無人っぷりに危険を感じて……」

「アルタイル!?」

 シリウスたち3人が声を上げた。ポラリスを狙う盗賊団の首領で、師・アルクトゥルスの命を奪った仇敵である。

 シリウスは箸を置き、アルタイルたちの襲撃、自身が紫微垣を継承したことを話した。

「あいつは一体何者なんだ? 俺たちはあいつをとめなければならない」

 スピカも口を開く。

「デネブさん、あなたのご存じのことを教えていただけますか? 情報は少しでも多い方がいいので……」

 するとデネブは目を細めて答えた。

「分かりました。このままでは多くの人が不幸になります。お役に立てるなら……」

 そう言うと、デネブは静かに語り始めた。


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