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紫微垣の試練⑬――五代目継承

《では正真正銘の最後の試練について説明するね。フォマルハウトの時に受けた試練の逆だよ。僕が技を繰り出すから、君が北落師門で返すんだ》

 笑顔であっさりと言うアルコル。歴代の紫微垣って、こんな無茶をしれっと言う人ばかりなのか。

《不安かい?》

「当たり前だ」

 下手をすれば命を落としかねないのだ。今日の試練を続けている間、不安は常につきまとっていた。

《大丈夫だよ。今日の試練…いや、今日だけじゃなく、アルクトゥルスに捕まってからは血のにじむような修行を重ねてきたはずだ。最初は嫌々だったかもしれないけど、使命に目覚めた君ならできる》

 アルコルは七星剣を構えた。その星鏡は紺色である。同じようにシリウスも構える。

《七星剣の星鏡は、作り手によって色を変える。君のは黄緑だね。新しい時代に萌え出た若葉のようだ》

 アルコルの剣が光り、鞭の形に変形した。

《いくよ!》

 剣がしなりながら襲いかかってきた。一の秘剣・魚釣り星である。

 その剣閃の軌道を目視しつつ、シリウスも秘剣を放つ。

「八の秘剣・北落師門!」

 するとシリウスの剣の星鏡が外れ、アルコルを囲むように地面に落ちた。直後、光の壁が立ちはだかる。アルコルの魚釣り星は、壁に跳ね返されて術者に向かっていく。さらに、赤い光の刃が現れ、アルコルめがけて飛来する。

「やった! 成功だね!!」

 しかし、それを何とか凌いだアルコルは、剣を構え直す。そして光の壁が解けた瞬間、シリウスに襲いかかってきた。

「ちっ!」

 七つの星鏡が順番に元に戻り始めた。全てが戻り、再び剣が使えるまで10秒かかる。それまで逃げ切らなければ!!

 アルコルは三の秘剣・三連突きを繰り出してくる。シリウスが紙一重でかわすと、今度は六の秘剣・釣り鐘星で追撃する。息つく暇もない。

 シリウスはハイジャンプして間合いを取った。

「4、5、6……」

 星鏡が戻ってきた。あと1個、3秒というところか。しかし、アルコルは充分にある間合いを一気に詰めてきた。

「シリウスー!」

「がんばって、あと少しよ!!」

 2人の少女が叫んだ刹那、「ガキイン」という凄まじい剣戟の音が夜空に響いた。


《――おめでとう、シリウス。成功だ》

 アルコルの剣閃は、元に戻ったシリウスの七星剣に防がれていた。

《これで最後の試練は終了だ。たった今、君は正式に紫微垣となった》

 アルコルの言葉と同時に、夜空の星がシリウスに光を注いできた。シリウスの体が黄金に光っている。

《これは神が星を介して君を祝福しているんだ。五代目紫微垣・シリウスの誕生だ》

「やったあ!」

「すごい…おめでとう、シリウス」

 ミラとスピカが駆け寄って抱きついてきた。

「ありがとう、お前たちのおかげだ。本当にありがとう」

 シリウスは右手でミラを、左手でスピカを抱き返す。

 長かった。ベテルギウスとリゲルの悪行に荷担した時から始まり、アルクトゥルスとの修行、ミラとスピカの支えを経て、最後の試練を通過し、ついに紫微垣となったのだ。

 感動の余韻に浸る3人。すると、アルコルがのんきな口調で意外なことを言った。

《さて、これで僕も輪廻の道に進めるかな》

「え?」

 驚く3人を尻目に、これまたのんびりと腕を伸ばすアルコル。まるで、1日の畑仕事が終わったかのような仕草だ。

《僕が死んだのはだいたい400年前。本当なら生まれ変わって別の人生を進むところだよ。でも、紫微垣を継承できなかった責任もあって、ずっと霊体でいたんだ》

 さらに続ける。

《昼間にフォマルハウトの試練を受けたけど、彼もとっくに輪廻転生していい時だ。だから、霊体となった僕らが指導するのは、これで最後だ》

 3人の中に不安が去来する。先達の導きがなければ、ここまでは来られなかったからだ。

「で、でも、カノープスさんや亡くなったばかりのアルクトゥルスさんはこれからも助けてくれるのでは……」

 スピカが焦りながら言う。するとアルコルは首を振った。

《カノープスは南極寿星の秘術で、本来の寿命を無理矢理延ばしている。もう永くはないし、亡くなったとしても霊体で指導できるかは分からない。個人差があるからね》

 それはアルクトゥルスも同じであると言った。

《さあシリウス、カノープスの元に行ってやって。彼は気を張って今日まで生きてきたところもある。もうすぐ力尽きるだろう。最後に紫微垣継承の報告をしてあげて》

 そう言うと、アルコルの霊体は光に包まれて消えていった。


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