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寸断

 シリウス、ミラ、スピカは北に向けて走った。平野部から高台、そして山間の方に来たから、もう津波は届かない。しかし、ポラリスを北の町にある北辰の祠に持って帰らなければならない。とにかく、東の都を脱出しなければ……。

 3人は、東の都の北限にたどり着いた。数日前、浅瀬道から上がってきた場所だ。

「!!」

3人は、そこから崖下を見て愕然とする。大海嘯により浅瀬が海水に浸かっているのだ。満ち潮のように足首に浸かる程度ではない。目測で2メートルの深さだ。事実上、帰り道を寸断されてしまった。

――どうしたらいい!?

 シリウスは考えた。泳いでいくか? いや、また津波の第二波、第三波が来るだろう。危険すぎる。船で行くか? それも手配するには時間がかかりすぎる。そもそも、津波で航行が運休になっている可能性が高い。

 すると、スピカが提案した。

「シリウス、私たちはいいから1人で行って!!」

「は?」

 目を見開くシリウス。ここに女の子2人を置いてはいけない。ましてや、自然災害時は人心の乱れから犯罪も起きやすくなる。

「天漢癒の腕輪で膜を作って! そこで待っているから!! あなた1人なら行けるはずよ!!」

 浅瀬道の高木までは海水が浸かっていなかった。その枝を飛び乗っていけば、何とかなるかもしれない。

「シリウス!!」

「……分かった。2人とも、腕輪を貸せ」

 シリウスは金と銀の腕輪を受け取ると、野営をした時のように膜を作った。

「ここで待っていろ。必ず迎えに来る」

「うん。待っているから」

 万が一を考えて天漢癒の腕輪を2人に返し、シリウスは浅瀬道に向かって跳躍した。


 元々の身体能力に加え、紫微垣の修行をしてきたシリウスは枝から枝へと飛び移っていく。確かに、1人なら駆け抜けるのは数時間で可能だろう。

 眼下には、化け物蟹やトビウオがいる。野営をした場所も見つけた。夜空の星がきれいと思った日のような余裕はない。急がなければ…。

 ようやく対岸の北の町が見えてきた。

「よし!」

 しかし、焦ったシリウスは最後に飛び乗った枝を踏み外す。

「しまった!」

 体が真っ逆さまに海に落ちていく――。

(ここで死ぬわけにはいかない!!)

 大海嘯を鎮めなければならない、待っている人たちだっているのだ。

「五の秘剣・錨星!」

 七星剣を対岸の大木に巻き付けた。さらに渾身の力で引っ張る。体がすさまじい勢いで対岸に引きつけられていく。

(助かった…)

 しかし安心したのも束の間、右足で着地した時にグキッという嫌な音がした。

「ぐあっ!!」

 倒れて思わず右足を抑える。まずい、折れたかもしれない。天漢癒の腕輪はスピカとミラに渡してしまった。すぐに治癒できない。

「…行くしかないだろ」

 シリウスは歯を食いしばった。痛みが増す前に北辰の祠にたどり着く。それしかない!!


 貪狼の祠と岩場を過ぎ、巨門の祠まで来たとき――シリウスは北の町を見下ろして驚いた。北の町にも津波が来て、海抜の低い部分は海水に浸かっている。しかし、高台には届いていなかったのだ。よく見ると、町の七つの祠――北斗七星の位置にある祠は全て高台にあり、無事だったのだ。

日本の東北地方には「津波石」という、過去にそこまで津波が来たことを知らせる石碑がある。星の大地では、この祠が津波石の役目をしていたのである。

 北辰の祠に行くためには、西から二つ目の「武曲」の祠からさらに北部の山を登らなければならない。巨門の祠は東から二つ目だ。かなり遠い。

――しかもこの足だ。

 シリウスは忌々しく自分の右足を見た。こんな時に骨折してしまうなんて…。すると、見覚えのある顔が近づいてきた。師のアルクトゥルスである。

「シリウス」

「師匠!!」

 再会の喜びも束の間、アルクトゥルスはシリウスの右足を見て察した。

「わしが途中まで連れていってやる」

 そう言うと、アルクトゥルスはシリウスに肩を貸し、走り出した。


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