表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/116

大海嘯

 大海嘯――星の大地に住む人間なら幼児でも知っている。この大地ができてから、幾度か都や町を破壊してきた自然災害だ。過去に万単位の犠牲者を出した大津波……それが今、自分たちに襲いかかってきたのだ。


 ――間に合わなかった!


 シリウスは唇をかんだ。災害が起きる前に奪還し、北辰の祠に奉安したかったが、できなかったのだ。

 リゲルを見ると、慌てて浜の方に歩いている。しかし、服が海水を吸って動きが鈍い。

「早くしろ、リゲル!!」

 津波は徐々に背後に迫ってきている。瞬く間にリゲルを飲み込もうというところまで来た。

「五の秘剣・錨星!」

 シリウスはリゲルに向かって錨を飛ばした。運良く、リゲルの足に巻き付くのが見えた。津波がリゲルを飲み込んだ瞬間、シリウスは渾身の力で錨を引き上げる。

「リゲル!!」

 しかし、シリウスは愕然とした。巻き付いていたのはリゲルが履いていたブーツだったのだ。

「失敗か!!」

 沖を見ると、もうリゲルの姿が視認できない。それどころか、津波がシリウスめがけてやって来ていた。

「……!」

 シリウスは歯ぎしりをしつつ、町の方に走り出した。


「すごい地震だったなあ、みんな大丈夫か?」

「うちはたんすが倒れて大わらわだよ」

 都の南部の住人たちが、家の片付けに追われている。家の中は家具という家具が倒れて滅茶苦茶になっているのだ。

 そこに走ってくる人影があった。手に柄杓型の金属の棒を持っている。

「何やってるんだ、逃げろ!! 大海嘯が来るぞ!!」

 その男――シリウスは、住人に怒鳴りながら北へ向かう。その様子を、住人たちは不思議そうに見送った。

「何だ、あれ?」

「さあ…?」

 シリウスは、きょとんとした住人たちに苛立ってきた。なぜ逃げない!? 大海嘯が来るって言っているのに……。

「うわああ!!」

 住人の1人が叫んだ。

「津波だ!!」

 高さ30メートルはある黒い波の壁が、町を飲み込み始めている。これを見た人々は、ようやく事の大きさに気付いた。

「早く逃げろ!! 北に向かえ!!」

 シリウスだけでなく他の人も叫び始めた。しかし、逃げ遅れた老人や馬、家族づれなどが津波に飲み込まれていく。威力を増した津波は、家々の壁や屋根を次々に破壊していった。

――導きの祠の幽霊が、また現実化してしまった!

 目の前で犠牲者が増えるのに何もできない。シリウスは歯を食いしばって北を目指した。


 大海嘯は平野部の家々を、やがて、大市場に及ぶと店の壁や椅子、机、商品をも飲み込んでいく。人々は逃げ惑い、遅れた者は津波の餌食となっていった。

「シリウス!!」

 宿まで戻ったシリウスは、ミラ、スピカと合流した。が、背後まで津波が迫ってきたので「逃げるぞ!!」と叫んだ。

 大海嘯を予測し、先に2人を逃がしておくべきだったと思った。が、今そんなことを考えても仕方ない。

 坂道を上り高台まで来ると津波は届かなくなった。同じように避難してきた人が大勢いる。

 3人は眼下の町を振り返り、息を飲む。漆黒の波が都を覆っている。つい先ほどまで人々の営みがなされていたのに、もはや跡形もない。

「どうしよう、シリウス」

 ミラが不安そうに聞いた。

「決まっている。ポラリスを奉安しにいくぞ」

 そう答えたとたん、また地震が起きた。余震にしては大きい。3人は近くの木につかまり、何とか持ちこたえた。

「急ぎましょう、シリウス!」

 スピカに促され、3人はさらに北に向けて走った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ