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ミントのにおい

 物心ついたときから両親はいなかった。父親は、母親が妊娠したと知って逃げたという。母親は、自分を生んだ後、産後の肥立ちが悪くて間もなく死んだと聞いている。その後、リゲルという名前をつけられ、孤児院で育った。

 4歳になるころ、ある男の子が入ってきた。同じように両親を亡くしたらしい。しかし、自分とは違い心が安定していた。友達のけんかに割って入ったり、誰かが泣かされていると守ったりしていた。同じ境遇なのに、何でそんなに人に優しくできる? そんな彼に興味を持った。仲良くはなったが、話していると価値観がお互いに違うことが分かってきた。何となく、心から分かり合えない気がする。だけど、せっかく仲良くなったんだし、友達のままでいるか――。

 やがて赤い髪をしたガラの悪い少年も加わり、よく3人でつるむようになる。心底楽しいわけじゃないけど、友情なんてこんなものか……。


 目が覚めた。空に星が瞬いている。その手には、ベテルギウスから奪った財布とポラリスの秘宝がある。

「……」

 ベテルギウスの顔を思い出した。いつも偉そうに振る舞っていたが、毒を盛られてあっという間に息絶えた。いい気味だった。日に日に彼を嫌いになっていったからだ。

 だけど…人を殺した。手を直接下したわけではない。毒を入れた酒を、あいつが勝手に飲んだんだ。俺のせいじゃない。いなくなってせいせいするし。

 なのに、何でこんなに手が震えているんだ!

 リゲルは毛布をかぶって寝てしまった。


 次の日、リゲルは町に繰り出した。頭にタオルを巻き、眼鏡をかけている。ベテルギウスの死体が見つかっただろうから、一緒にいた自分が疑われるのは分かっている。

 学舎では目立つ性格ではなかったが、青い髪は星の大地でも珍しい方なので見つかりやすい。昨日からタオルで隠すようにした。

 ふと、鼻孔をくすぐるものがあった。ミントのにおいだ。

(ああ、何か癒やされる…)

 リゲルはミントのにおいが好きだった。孤児院で育ててくれた職員が、亡き母親のことを話すときにミントティーをよく飲んでいたのだ。そのため、リゲルの中ではその職員を媒介として母親=ミントのにおいとなっているのだ。

 疲れていたこともあり、ミントのにおいがする方に向かって歩き出す。どこからこのにおいは来ているのか。ミントティーをいれてくれる茶屋が近くにあるのだろうか……。


 リゲルは大河の橋を渡り、さらに中規模の川を渡って海に近い住宅街に来た。はて、こんなところにミントがあるのか?

 やがて長屋続きの場所を折れると荷物をドサッと取り落とした。そこにいたのは見覚えのある3人組……。

「シリウス!?」

「年貢の納めどきだな、リゲル」

 とっさに踵を返して逃げようとするリゲル。しかし、シリウスは一の秘剣・魚釣り星を放ち、リゲルの体勢を崩した。

「なっ、何でお前がここに…!?」

「スピカの智恵だよ」

 ミントのにおいを好むこと――スピカはそこから着想し、においでリゲルを釣るアイデアを思いついた。

 東の都の北半分には役場が数カ所ある。当然、警察の役をする者も多い。そのため、リゲルは南半分の住宅街に潜むだろうと見当をつけ、そこにミントの香りをばらまいたのだ。さらに、この都は北側の山々から強烈な風が吹き付ける。においはさらに南へ移動し、この辺に立ちこめるようになる。

「ここから住宅街を探し回ろうと思ったが、運良く鉢合わせしたというわけさ。これはさすがに想定外だったがな」

 シリウスは間合いを詰めて秘剣を繰り出す。三の秘剣・三連突きでリゲルの足に突きを見舞い、動きを封じた。ドシン、とリゲルは尻もちを付いた。

「た、助けてくれ」

 リゲルは命乞いをしてきた。

「別に殺すつもりはない。だが一つ答えろ。なぜベテルギウスを殺した?」

 シリウスが刺すような目つきで言った。

「何でそんなこと聞くんだ? お前はあいつに裏切られて…」

 その言葉を無視し、シリウスは五の秘剣・錨星でリゲルを拘束する。

「ぐあっ!」

 締め上げられて悲鳴を上げるリゲル。しかし、シリウスは表情を変えずに詰め寄る。

「聞かれたことに答えろ。なぜ殺した!?」


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