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導きの祠

 シリウスは駆け足で登っていく。あんなことを言われたら、迷信であってもミラとスピカを放っておけない。

 シリウスが境内に入ると、午前中に来たときとは違って薄暗かった。夕刻というのもあるが、西側に森があるため日が射さないのだ。

「ミラ、スピカ!」

 目を凝らすと、ミラとスピカが尻もちをついて抱き合っているのが見えた。シリウスが駆け寄って

「どうした!?」

 と聞くと、スピカが震えながら祠を指さした。いつもはうっすら赤みのかかった頬や唇から血の気が引いている。ミラにいたっては大きな目に涙がたまり、今にも泣きそうだ。

 シリウスがハッと祠を見ると、そこには脚が見えない青白い人影が――

(おいおい、迷信じゃないのかよ)

 その人影は祠に手を合わせて何かを祈っているようだ。シリウスは細心の注意を払い、人影の顔が見える位置に回り込む。その顔を見て、背筋が凍る思いがした。


 ベテルギウス!?


 その顔はかつての悪友で、今まさに自分たちが追っている男――ベテルギウスだった。シリウスは何かを言おうとした。が、唇が動かない。

 やがてベテルギウスの顔をした人影は、すうっと消えていく。3人は、急いで祠から退散した。


 3人は宿屋に着いて夕食を食べながら、声を潜めて先ほどのことを話した。

「…ベテルギウスだったんだよね?」

「ああ……」

 ミラに聞かれたシリウスは、抑揚のない返事をする。

 どういうことだ? 脚がない青白い人影が幽霊だとしたら、あいつはもう死んだってことか?

「…見間違い、じゃないよね」

「あの男とどれだけつるんできたと思っている」

 スピカの言葉を遮る。見間違いじゃない、確かにベテルギウスだ。

 ただ、このまま考えていても埒が開かない。食事が終わると、シリウスは宿のカウンターにいた初老の女性に聞いてみた。どうやら宿の主人の奥さんらしい。

「ああ、導きの祠のことね」

「導きの祠? 昴の祠が?」

 三人とも初めて聞く別名だ。

「あの祠はね、夕方になると、次の日に死ぬ人の魂がお参りに来るって言われているのよ。あの世に導く祠だから導きの祠って言われているわ」

 スピカとミラが顔を見合わせる。シリウスは続けて尋ねた。

「あの祠は星の大地の発祥に縁があるはずだ。そんな迷信じみたものが……」

「そ、あくまで迷信よ。見た人もほとんどいないし、眉唾もいいとこ」

 奥さんはカラカラと笑った。3人は部屋に戻ると額を合わせた。

「奥さんが言っていた迷信が本当なら……」

「ええ、ベテルギウスは明日死ぬことになるわ」

 彼のことも気がかりだが、ポラリスがこのまま行方不明になるかもしれないのなら、もはや猶予はない。

「明日、もう一度都じゅうを探そう」

 シリウスは焦りを交えた表情で言った。

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