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浅瀬道から南の島へ

 翌朝。シリウスは一番に起き、朝食の支度を始めた。昨日の鰹の骨で出汁を取り、海草や貝を拾ってきて調理する。飯ごうに米を入れてたき火で炊く。

(…主夫だな、まったく)

 苦笑いするシリウス。ただ、孤児院とは違って親しい仲間に作るのは格別である。そろそろ起こすかな…。

「起きろ、朝飯だ」

「わあ、おいしそう」

 少女2人は目を輝かせて食べ始めた。

 朝食の後、3人は再び出立した。昼頃には南の島の陸地が遠目に見えてきた。襲いかかってくる怪物たちを蹴散らす。昼は、仕留めた化け物蟹の足で作った吸い物だ。

「おいしい!」

「ほんと、これならここでもう少し過ごしてもいいわね」

「あーあ、夕方には抜けるってことは、夕食はここで食べないのかあ」

 ほくほく顔の少女2人に

「お前ら、目的忘れてないか?」

 と、ややあきれ顔のシリウス。まあ、おいしく食べてくれるならいいけど。

 この浅瀬道は海の幸の宝庫だ。鬼鰹は脂がのっているし、化け物蟹の足は身がつまっている。その他、飛び魚の身は白身で揚げても焼いても美味で、海蛇はうなぎのような味がする。その気になれば、ここに住むことも可能だろう。

 と言いつつも自分には紫微垣としての使命がある。昼食が終わると、ラストスパートをかけた。

 夕方。3人は南の島の崖に着いた。しかし、階段らしきものが見当たらない。

「ちょっとちょっと、こっちはどうやって登ればいいのよ」

 ミラが唖然とする。もしかしたら、南の島側はこの道を使わないのか?

「まあ、方法は一つしかないな」

 シリウスは七星剣をかざした。その様を見てスピカは目をきらきらさせる。彼女の推し秘剣だ。

「五の秘剣、錨星!」

 崖の上の木をめがけて放つと、見事に木に巻き付いた。

「よし、俺につかまれ」

 ミラとスピカはシリウスに抱きついた。

(うわ…こんなに密着するなんて)

 スピカは心臓の鼓動が早くなるのが分かった。男の子にここまで密着したのって初めて…。

 シリウスは剣を縮め、自分と少女2人を崖の上に運んだ。しかし、陸地に足を載せようとした瞬間

「!!」

 シリウスはバランスを崩して倒れた。勢い余って2人の少女はシリウスの上に覆い被さった。

「きゃっ!!」

 ミラは胸がシリウスの顔に、スピカは腰の辺りにまたがる形になってしまった。普通の男ならうれしくて顔を赤らめる状況だが、シリウスはきょとんとしている。

「シリウス? どうしたの?」

「ここ、来たことあるかも……」

 しかし思い出せない。頭を振ってみるが、記憶の底に眠っている映像がこの場所なのか分からない。

「いやいや、今は使命遂行が先だ」

 シリウスは立ち上がり、3人はまた歩き出した。


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