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1年後

 赤星党のテロから1年がたった。フォマルハウトは、東の都にある昴の祠で正装をし、白いドレスを着たカペラと手を取り合っていた。

「あなたがたは、病める時も健やかなる時も、お互いを想い、助け合って生きることを誓いますか?」

「誓います」


 あの事件の後、フォマルハウトとカペラはすぐに交際を始めた。周囲からは「奥さんが亡くなったばかりなのに……」という非難もあった。しかし、夫婦関係はすでに破綻していたのだ。シャウラが事件後に生きていたとしても、結局は離婚してカペラと結ばれていただろう。

 式は双方の親族だけで済ませ、その後に会食となった。2歳になったミアプラはフォマルハウトのひざに乗り、ごはんをおいしそうに食べている。

「ミアプラちゃん、かわいいわね」

「この子がカペラの娘になるのね。よろしくね、ミアプラちゃん」

 カペラの両親や伯父・伯母に囲まれ、ミアプラはにこっと笑う。大勢の大人が笑顔で接してくれるのが嬉しいのだろう。

「ねえハウト。私とも子供作ろうね。10人くらいでいいよ」

「くらいでって…本当はそれ以上欲しいのかい」

 呆れるフォマルハウトに、カペラは屈託のない笑顔を向ける。この笑顔に何度助けられたことか……2人で出張に行った時から心の支えだった。彼女がいなかったらシャウラのことで心が折れていたかもしれない。

 1年経ち、妖星疫の蔓延はほぼ終息した。フォマルハウトがポラリスを再び北辰の祠に奉納した後、感染者はどんどん減っていき、今では薬もいらず治るほどだった。アンタレスたちはポラリスを奪い、星の大地の世直しをしようとしたが、もとの位置に納めることで平和が戻ったのは何とも皮肉なことだった。

 東の都のある老神官が言った。このパンデミックは、自然界からの警告かもしれないと――。人間が欲望をのさばらせたがために、神が自然を通して警告を与えてきたのではないか。

 別の年老いた医師も言った。感染して亡くなるのが老人ばかりであったから、増えすぎた人間の数を調整するために自然界が疫病を広げたのではないかと――。自然界では、増えすぎた種族が個体数調整の対象になることがある。それに似た現象だったのではないか。

 一方で、「星の大地の征服を企む者が、疫病を起こしたんだ」という陰謀論じみた主張も多少残っている。妖星疫の正体は結局不明であるが、自然界からの警告という考えは、人々の心に突き刺さっただろうと思う。


 フォマルハウトは紫微垣として、いくつかの仕事にとりかかった。

まず、秘剣に連番を付けた。一番目が基礎である魚釣り星で、それから徐々に習得が難しくなる技の順番となる。最も威力のある北落師門は八番目の秘剣として、奥義の位置に納めた。

 次に、紫微垣に関する資料作りに着手した。霊体のアルコルのもとを訪れ、300年前のことを取材して記事や年表にまとめた。自身が継承してからの出来事は、体験記の要領でまとめた。

 そして、紫微垣を助けるための秘術を開発することにした。コンセプトとして考えたのは、「外傷や精神のダメージを回復させる術」と、次の世代に紫微垣を継承することを見越して「寿命を延ばす術」だった。前者は自身の戦いの中から、後者はアルコルが継承に失敗したことからひらめいたのだ。

 記者の仕事と並行してやっていくので、これから少し大変になる。が、星の大地を守り、ミアプラのような未来を担う子供に、よい社会を作っていきたい――。フォマルハウトは、カペラの助けを借りて突き進んでいくことになる。


「まだまだやることが多いな」

 ある日の夜、フォマルハウトは筆を止めて一息ついた。仕事が終わってから紫微垣の記録を記していたが、さすがに少し疲れてきたのだ。

「お疲れ様、あ・な・た」

 カペラがお茶を運んできてくれる。

「ありがとう、カペラ。紫微垣の使命との両立はさすがに大変だよ」

「ハウトならできるよ。応援している。ところでさ――」

 カペラはフォマルハウトに抱きつき、頬にキスをした。

「今日も子作りしよっか」

「…うん」

 フォマルハウトは記述を切り上げ、仲むつまじくカペラと寝室に向かった。



 これにて、二代目紫微垣・フォマルハウトの物語はおしまい。次回から、三代目紫微垣・カノープスの物語が始まります。


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