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潜入と突入

「う……」

 カペラは薄暗い空間で目を覚ました。

「ここは…?」

 確か……赤星党の爆弾が爆発して、けが人がいないかを確認するために飛び出して、するとまた何かが降ってきて爆発して…? 私、どうしちゃったのかしら?

「目が覚めたか」

 いきなり声がしてビクッとする。声の主は男性のようだ。はて、聞き覚えのある声ね……。

「適当な看護師を人質にとるつもりだったが、まさか君とはね」

 目が慣れてきた。その薄暗い部屋の中にいたのは――。

「アンタレス先生!」

 まぎれもない、共に働いていた医師・アンタレスだ。しかし、あの頃のさわやかな印象は薄れ、その端正な顔には濁ったようなものが漂っている。

「やっぱり…アンタレス先生だったんですね! 一体どういうつもりですか!?」

 そのカペラの批判めいた言葉に対し、アンタレスは冷たい目線をぶつける。その目線を受け、カペラは押し黙った。さらに、そばにいた女性がつかつかと近寄ってきて、カペラのあごをくいっと持ち上げた。

「間抜けな女ね。助けに入ったくせに捕まるなんて……」

 この女……まさか、フォマルハウトの妻のシャウラ?

「あ、あんたもどういうつもりなの? ハウトの……」

 と言いかけたとたん、その女――シャウラの張り手が飛んできた。

「っ!!」

 勢い余って倒れるカペラ。

「その名前、2度と口にしないでよ! フルネームを口走ったら内臓えぐりとるわよ! まったく、耳障りね!!」

 そう言い残すと出て行ってしまった。するとアンタレスが弁明する。

「彼女は夫のことが嫌いになったみたいなんだ。もう彼の名前を出すのもやめた方がいい」

 淡々と言い残してシャウラに追いつくアンタレス。2人が肩を寄せ合う姿を見て、カペラは「やっぱり……」と思わずにはいられなかった。


 その頃。潜入したフォマルハウトは壁に背中を付けながらゆっくりと進んでいた。北河荘の見取り図は頭に入っている。1階には旅館の受け付けとロビーがあり、2~4階は客室である。五階は客室と宴会場があり、最上階はいわゆるスイートルームのような豪華な部屋が1室ある。フォマルハウトが潜入したのは2階だ。

(シャウラのことだ、きっと最上階のゴージャスな部屋を使いたがるに違いない)

 赤星党はアンタレスが盟主だが、シャウラの身勝手さを飲むのであれば同意しているはずである。つまり、ここから5階上がらなければならない。

 シャウラは美貌の持ち主だが、抜きんでた美人ではない。高嶺の花という雰囲気ではなく男性には人気があるタイプなのだ。その気になれば、国の権力者を誘惑するだけの力はあるかもしれない。

(…って僕もまんまと誘惑されたのか)

 実際に家庭生活をしていると理不尽かつ身勝手な性格で辟易するのだが、恋人や愛人の関係では、そこまで気付かないものなのだ。

(おっと)

 廊下の曲がり角に人の気配がした。赤星党の者が見張りをしている。フォマルハウトは上に向けて秘剣・錨星を発射し、天井に張り付いた。この建物の天井は高く、上を見上げない限り人がいたとしても気付きにくい。そのまま天井をつたって見張りの頭上に回ると、そこから落下して見張りの肩に一撃を加えた。見張りはドサッという音とともに倒れる。

 フォマルハウトは「むやみに交戦するな」というルクバトの助言を思い出していた。戦いに不慣れであり、紫微垣になったばかりの自分にとって、この任務そのものが荷が重いのだ。敵をできるだけ不意打ちで気絶させた方がよいということである。

 ――そううまくいけばいいけどなあ

 プラスアルファでカペラを救出し、ポラリスを奪還しなければならない。時計を見ると、ルクバト部隊の突入まであと2時間となっている。


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