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赤星党

 屋根の上にいる数人の中に――自分の妻・シャウラと盟友・アンタレスがいる。フォマルハウトは二人と目が合ったが、2人とも不適な微笑みを浮かべていた。

「シャウラ…アンタレス…一体どうしたっていうんだよ」

 フォマルハウトの悲痛なつぶやきをあざ笑うかのように、3度目の爆発が起きた。今度は城の方向である。

「まさか城が!?」

「陛下が危ない!!」

 ルクバトがアルデバラン王の身を案じて叫ぶが、フォマルハウトにとっては娘のミアプラもいる。

「ハウト!! どうしたの!?」

 カペラが駆け寄ってきた。爆発音が響く町中で、爆音とは違う屋根の方に体を向けるフォマルハウトたちを奇妙に思い、疑問をぶつける。

 フォマルハウトは返事をする代わりに屋根を見ろと言わんばかりにあごを向けた。

「アンタレス先生!?」

 カペラが口に手を当てて叫ぶ。そうか、看護師のカペラは医師であるアンタレスと一緒に働いていたのか。それを見てフォマルハウトがつぶやいた。

「あいつら、この状況で平然とした顔をしているんだよ。爆発と関係があるのかもしれない」

「ハウト! 七星剣よ!! 今こそ紫微垣の力で…」

 そうか、あれを使えばいいんだ。記者としての習性で事件現場に我先にと駆けつけたが、彼らを捕まえて情報を聞き出すことには価値がある。そう思って腰に手をやるが――。

「あ、忘れた…」

「はあ!?」

 鉛筆と帳面は持ってきたのに、七星剣は事務所に置いてきたのだ。

「何やっているのよ、せっかく紫微垣になったのに!!」

「そう言われても……」

 もともと荒事が苦手なフォマルハウトは紫微垣の自覚がまだ薄かった。だからこそ、アルコルと出会った時も別の人間を勧めようとしていたのだ。

「どいてくれ!!」

 そんな2人のやりとりをよそにルクバトが弓を構える。が、矢を持っていないのに弓の糸を引いた。不審に思っていると、ルクバトの右手が光りはじめ、その光が矢の形に変わった。次の瞬間、光の矢が放たれ、屋根にいた一団に向かっていった。

 ドオン、という音とともに命中し、煙が舞う。

「ルクバト、今のは!?」

「闘気を矢に変えて放つ術、斗宿の弓という弓術だ」

 斗宿とはいて座の中国名である。煙が消えると屋根の一部がえぐれていることから、相当な威力だと分かる。

「やったの!?」

「いや、とっさだったから威嚇程度の威力しか闘気を練り上げていない」

 あれで威嚇程度? フォマルハウトが絶句する。ルクバト曰く、人間の肉体を消滅させる威力を練るには、10秒くらいはかかるらしい。……こいつ、人間を消滅させられるのか、怖いな。

「それにしても、一体何だったんだ…」

 家出したシャウラがアンタレスといた……嫌な予感が鎌首をもたげてきた。


 城に戻ると、フォマルハウトは早速、記事を書いて印刷部に回した。事件の一部始終を見てきたため、臨場感のある1面記事となった。明日の朝刊には、東の都の購読者全員が、謎の爆発の正体に興味を持つだろう。

 記事を渡した後、フォマルハウトは資料室に向かった。

「赤星党、赤星党……」

 ここ数カ月の『昴新報』のバックナンバーを読む。すると、2カ月ほど前に5面の端の方――いわゆるベタ記事が載っていた。

 その記事によると、赤星党とは医療を受けられない人々を支援する非営利組織ということだった。この星の大地は二つの都が発展していく一方、町や村の発展が置いてけぼりのようになって、貧富の差が開いているのだ。例えば、東の都の裕福層は治療を受けられる病気だったとしても、貧しい人や西の村、蟹の目町では不治の病とされて死んでいくことが多い。そこで、赤星党という組織が立ち上がり、無償で薬や治療を施すようになったという。

 ベタ記事では「今後の活動に期待が寄せられている」と結んでいるが、もう少し下った日付の号を繰っていくと――あった。2面のトップに出ている。

「赤星党立ち上げの意図 すべての人に医療を」というヘッドラインだ。そしてその横にある顔写真は、見覚えのある盟友――アンタレスの顔だった。

あいつ、実家に戻るっていっておきながら、こんな組織を作ったのか? 急に不信感が募り始めた。

独立して非営利組織を作るなら、堂々と言えばいい。それなのに、実家に戻って家業を継ぐなどと嘘を言った。東の都の役人の目を反らすためだろうか? 赤星党のやらんとすることは慈善事業だが、一方で政治のあり方を批判する意味合いもある。政治が改善する見込みがないからこそ、このような組織を作ったともとれるからだ。

もう少し調べよう――と思ったら、カペラが駆け込んできた。

「ハウト、こんなところにいたの。娘ちゃんが泣いているよ」


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