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えんじ色の七星剣

「それで300年間、後継になるべき人に呼び掛け続けてきたんですね」

《うん》

 アルコルは、フォマルハウトとカペラの隣にちょこんと腰掛ける。背丈はあまり高くなく、女性のようなかわいい顔立ちなので、本当に女性と思ってしまうほどである。

「ところで、僕らはこれからどうすればいいんでしょう? 紫微垣に絡めて何かできることがあるんでしょうか?」

 フォマルハウトの問いに、アルコルが答える。

《まず始めに、紫微垣になるための訓練を受けてほしいんだ》

 え? 紫微垣になる?

「それでは、東の都から武芸達者の者を連れてこいと? すぐに帰ることはできないので少し時間がかかりますが……」

 するとアルコルは首を振った。

《そうじゃなくて、あなたに紫微垣になってほしいんだ、フォマルハウト》

 目が点になる。

「……はあ!?」

《僕の声を聞いたのはあなただ。ということは、僕が神から啓示を受けたのと同じように、おそらくあなたは紫微垣になる資質があるはずなんだ》

 フォマルハウトは立ち上がった。

「じょ、冗談じゃない! 僕は文官であり記者ですよ!? 武官じゃない! そもそも剣術も武術も学んだことはないし、無理無理無理!!」

 するとアルコルはにっこり笑って言った。

《僕の声が聞こえた以上、あなたに拒否権はないよ。血反吐はいて地獄の訓練を受けてでも、紫微垣になってもうらからね》

 かわいい顔して恐ろしい台詞を言い放つ。無茶ぶりをしれっとする紫微垣特有の態度はこの時から始まっていたと言ってよいだろう。

「ぐ、具体的に何をするんですか?」

《まずは、七星剣を作ることだよ》


 フォマルハウトたちは、アルコルの案内で西に向かう。そこにも祠があり、七星剣をつくるための設備が建てられているという。

《いやあ、久々に誰かと話したから楽しいよ》

 とアルコル。長い間1人でいたためか、よくしゃべる。ちなみに、アルコルは1人では武曲の祠付近から動けないらしい。いわゆる地縛霊に似た状態になってしまっているようだ。

《ところで2人は恋人同士なの?》

 唐突に質問してきた。

「い、いや、職場の同僚です。今回の紫微垣とポラリスの調査で一緒になっただけで……」

「そ、残念ながらハウトは既婚者なの。けっこうタイプなのになあ」

 カペラがどこまで本気なのか分からないような口調でからかう。それに対し、「あのな…」と呆れるフォマルハウト。

《若いっていいねー。僕も妻と出会った頃、いつもキュンキュンしていたなあ》

 アルコルは顔を赤らめ、懐かしそうに目を細める。まだ思春期に入ったばかりの頃、紫微垣の使命のため、親友と五車の島にキャンプに行き、そこでかわいい年上の彼女であるベナトナシュと出会った。今思い返しても甘酸っぱい記憶である。

「いや、既婚なのでだめですって」

《あ、着いたよ》

 人の話を聞いてくれと思いつつ、フォマルハウトはアルコルの指さす方を見た。そこには祠があり、さらにその隣に小屋があった。

《ここは破軍の祠だ。そして、そっちの小屋に七星剣をつくる精錬施設がある。僕は五車の島の洞窟で作ったけど、この北の町でも作れるようにしたんだ》

 中に入ると薄暗い。フォマルハウトはろうそくに火を付けて辺りを照らす。あるのは大きな石の塊、炉、桶などである。

《じゃ、まずは瞑想をしようか》

「は?」

 アルコルが言うには、この七星剣とやらを作るには神の導きが必要らしい。アルコル自身、啓示によって剣を作り、五車の島の洞窟の祠で祈りを捧げて完成させた経験がある。

《ポラリスを奉納して数年たった頃、七星剣がひとりでに砕け散ったんだ。最初に作ったのは強度も未完成で課題が多かったんだよ》

 その後、試行錯誤をして何本か作った。その過程で、七星剣は使用数に限度があると分かった。砕け散った星金と星鏡は北の町の大地に戻り、時をへて再び強度を増して甦るという。アルコルは説明を一通り終えると、隅の箱を指さした。そこには、金属の塊とクリスマスオーナメントのような鏡の玉7個が収められている。

《一応、ここには星金と星鏡が揃っている。その他、いろいろな材料がある。これであなた自信の七星剣を作って》

作れって、どうやって……? そもそも作り方を知らないのである。

《だから、今から瞑想するからさ。一緒にしよう》

 フォマルハウトはアルコルと並んで座り、目を瞑って手を合わせた。カペラは、2人が祈る様子をボーッと見ていた。どのくらい時間がかかるのかしら? と思って30分ほどたった頃、フォマルハウトがふいに立ち上がった。

「ハウト?」

 おもむろに炉のスイッチを入れて星金を溶かす。ドロドロになって出てきた金属に、塩を振りかける。すると、金属がひしゃく型に変形した。そこに、七つの星鏡をはめこむ。

「できた……」

「え?」

 これが剣? カペラが首をかしげる中、フォマルハウトが七星剣を掲げる。すると、星鏡の色がワインレッド――えんじ色に変色した。


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