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奇妙な声

 食事を済ませた後は風呂に入ることになり、カペラが先に入った。

「さて…これからどうするかな」

 警備兵たちを失い、ここから先は自分とカペラで紫微垣の手がかりを探さなければならない。一旦帰れればよいのだが、東の都では船が座礁したなどとは露にも思っていないだろう。異変に気付くのは早くとも帰着予定日の1週間後だ。その日になって帰って来なければ「何かあったのか?」と思うはずである。つまり、それまでは自分たちだけで任務を遂行しなければならない……。取材や記者しかできない自分に、そこまでできるだろうか。

 そう考えていると、廊下からトタトタという足音がした。

「ハウト、ただいまー」

 カペラが風呂から上がり、部屋に戻ってきた。…え? なぜバスタオル1枚?

「うっかり着替えを持って行くの忘れちゃって…」

 おいおい、他に客がいないからってその格好は無防備すぎるだろう。というより、他人の僕にそんな姿見せていいのか!?

「え? 別にいいよ。何なら裸見られても平気だし……」

「早く服を着てくれ!!」

 看護師という職業柄と思っていたが、彼女にはもともと恥じらいがないらしい。普通は、同年代の男性に裸にタオルを巻いている姿なんて見せられないはずだが、その辺の感覚が鈍いようだ。その証拠に、カペラは下着を取り出すと、いきなりバスタオルをシュルリと落とした。

「おい!!」

 一糸まとわぬカペラの姿があらわになる。ふくよかな二つの丸い胸、くびれた腰――しばらくシャウラとの夜の生活がなかったため、一層誘惑的なものに見えた。

「何?」

「服着ろって!!」

「だから、着るためにタオルとったんじゃない」

 きょとんとしている。話が通じないと思い、フォマルハウトは自ら後ろを向いた…初めからこうすればよかったんだな。今日はこれ以上、あれこれ考えても無駄と悟り、さっさと風呂に入って寝ることにした。


「……何でだ」

 フォマルハウトは少し大きめの布団でぼやく。その隣には、カペラが気持ちよさそうに寝息を立てている。布団が1枚しかない上、部屋がそんなに広くないので隣で寝るしかない。

――シャウラにばれたら八つ裂きにされそう……。

 いつも不機嫌な妻の顔が思い浮かぶ。子育て中の日々の生活でお互い手一杯なのに、シャウラがワンオペ育児をしている出張の最中、他の女性と一緒に寝て深い関係になったら……おお、考えるだけで背筋が凍る。

 フォマルハウトは右に左に寝返りをうつ。すると、カペラの胸元の谷間が目に入った。肌着姿である。え? さっきまでシャツ着ていたはずじゃ……と思いつつ、そういえば寝る前に「今日は暑いわね」と言っていたのを思い出した。いつの間に脱いだ?

 少し離れようとした瞬間、カペラが寝返りをうってきて、ほとんどあらわになった胸がフォマルハウトの顔にかぶさる。

「もごっ……」

 やわらなく温かい感触に、理性が崩壊しそうになる。しかもカペラは「ん…いい」などと寝言をつぶやく。一体何がいいんだ? 気持ちいいってことか? 寝ていると思っていたけど、実は起きているんじゃないのか!? 単に恥じらいがないだけだと思っていたが、もしかして……。

(いやいや、既婚者なのにそんな……)

 カペラが逆に寝返りをうって離れたので、フォマルハウトも寝ることにした。目を瞑って羊を数えようとした時――。

《…に来て》

 どこからともなく声がした。

「え?」

 カペラが起きたのか? と思って横を見たが、寝息を立てていて起きた様子はない。

《…武曲の祠に来て》

 今度ははっきり聞こえた。耳に入るというより、脳に直接響くような感じだった。すると、目の前にうっすらと白い影があらわれ、《いいかい、武曲の祠だよ》と言い残して消えていった。声すら立てられなかったフォマルハウトは「い、今のは一体……」とつぶやき、冷や汗を流すしかできなかった。


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