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北の町へ

 出発の四日前。探検チームが一堂に会した。警備兵たちは屈強な男たちで、有事の戦闘だけでなく、救助活動などでも活躍できそうだ。あともう1人は――まだ来ていない。

「すみません、遅れましたー!!」

 バタバタと足音を立て、1人の女性が部屋に入ってきた。髪は長めで、ややウウェーブがかかっている。目がぱっちりと大きくて美人と言える顔立ちだ。その女性は、勢いあまってフォマルハウトに突進してきた。

「ちょっ……!」

 そのままドン、とぶつかって、フォマルハウトを押し倒す。

「いたた……」

「きゃっ、大丈夫ですか? ごめんなさい!」

 仰向けに倒れたフォマルハウトの腰の上に、女性は馬乗りになっている。は、はやくどいてほしい、じゃないとこの格好は……。

「あ、看護師のカペラです。よろしくお願いします」

 フォマルハウトから降りて自己紹介する。え、この人もチームメンバー――?


 順番に自己紹介をした後、任務の内容を知らされ、4日後の集合時間を確認して閉会した。任務というのは、北の町に行ってポラリスが奉納されている状態か確認してくることだ。

 その後、カペラがフォマルハウトに近寄り、話しかけてきた。

「さっきはごめんなさい、私、焦っちゃって……」

「いえ、大丈夫ですよ。それより、そちらこそ大丈夫でしたか」

「はい、フォマルハウトさんがクッションになってくれたので。あの…腰をまたいでごめんなさい。ちょうど、私の股とあなたの股が重なっていたし、あのまま突き上げられたら私、変な声出していたかも」

 な、何を言っているんだ、この人は?

「あ、あの…他にも人がいるからそういう話は……」

「あれ? エッチな話、苦手ですか? 男性はみんな好きと思っていました」

「はい?」

「大丈夫、私全然慣れていますから。男の患者さんの裸もよく見ているので、気にしませんよ」

 さっきから会話がかみ合っていない……。

「不安もありますが、北の町への出張、がんばりましょう。私、楽しみなんですよ、出張初めてで。もしかしたら同僚とのロマンスも期待できたりして……」

 カペラは顔を赤らめて頬を両手で押さえる。この人が一緒で、果たして大丈夫だろうか? と不安を抱かずにはいられないフォマルハウトであった。


 4日後。探検隊の面々が集合し、いよいよ出発となった。城が所有する小型の船に乗り込み、北の町を目指す。探検隊は意気揚々と港を出発した。

 しばらくすると、フォマルハウトが甲板の柵にもたれかかった。

「き、気持ち悪い……」

 実は船が苦手で、たまに酔う時がある。前日、酒を2杯飲んだこともあり、酔いは早い段階で回ってしまったのだ。任務の成功を祈り、1人で夜な夜な飲んだわけだが、それが仇になったようだ。なんとも間抜けな話である。

「大丈夫? ハウト」

 カペラが背中をさすってくれる。幸い、嘔吐するまでにはいたっていない。

「ええ、大丈夫です。カペラさん」

 本当はまだ辛いが……。

「そういえば、あなたって私より4つ年下なんだね。落ち着いているから年上かと思っていたわ」

 カペラが明るく言う。それはあなたの精神年齢が幼いだけでは――とは言えない。

「まあ、僕の性格は多少老けているかもしれませんね」

「ねえ、敬語はいいわよ。名前もさん付けはなしでね。でも、避妊する時は付けなきゃダメだからね」

 カペラはウィンクする。美人で明るいが下ネタが好きで、会話にいちいちいかがわしい言葉が入ってくる。看護師という立場上、人の体を見たり触ったりすることが多いから、免疫が付いているのだろう。ちなみに、彼女はフォマルハウトのことをフルネームではなく「ハウト」と呼ぶ。「名前が長いから省略したい」というのが理由らしい。

 今日は夜中も航海するらしい。明け方には北の町の波止場に着いているという。そこからポラリスと紫微垣に関する取材がある。引き締めていこう――。


 ところがその夜の8時頃。予想外のことが起きた。突然空が曇ったかと思うと、大雨が降り始めたのである。さらに、風も吹き荒れて嵐になった。小型の船は激しく波に揺られ、大波が起きた瞬間、転覆してしまった。

「うわああ!!」

「きゃああああ!!」

 海に放り出された面々は、勢いで飛び出た救助ボートや木の板に乗り移った。フォマルハウトとカペラは、運良く大きめの浮き輪にしがみついた。さらに運良く、波がそのまま陸地に運んでいってくれた。

 ところが、しばらくたっても他のメンバーが来ない。ボートなどに乗り込む姿を見たはずなのに、ついに誰も来なかった。


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