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第16話『路地裏のブラックマーケット』

 エラフィンからの頼みでお使いにやって来たレンリエッタは卵と薬を買い終え、またしてもメモに目を通した。まだまだ買うべき品は残っているのでノロノロしている暇は無いのである。


「えーっと、次は…魔法紙…?」


 メモに書かれた次なる購入品は『拾弐型魔法紙10枚セット』という品物であった。もはやここまで来るとどんな物かと考えるのも面倒なので、レンリエッタは紙がありそうな店…つまりデッドウォッチ書店へと向かう事にした。

 ありがたい事に、この世界の言語(少なくともこの国)は元々いたクークランと同じ言語を使用しているので魔術書の類は好きに読むことが出来た。レンリエッタはエラフィンの邸宅中に数えきれないくらい並ぶ魔法の本を時々引っ張り出しては眺めていたのだが…やはり言語は同じでも専門用語の連発で読む気も起きなかった…


 レンリエッタは店へと向かう途中、数人の子供たちが興奮した様な口調で飛行杖の話をしているのに気が付いた。新作が何とやらと話していたが、寄り道するのはまずいと思い、レンはそのまま書店へ向かった。


「あぁ!押さないでください!在庫は…!在庫はありますから…!」

「う、わぁ…すごい混んでる…どうしたんだろう…」


 さて、レンリエッタは通りを歩き続けてデッドウォッチ書店へ到着したのだが、なんと店は客でごった返しとなっていた。押し寄せる人々は我先にと言わんばかりにある本を買うと、すぐさまその店から逃げるように去って行く…

 少し奇妙な光景に唖然としていたレンリエッタは突っ込む勇気も無かったので、しばらくの間客足が落ち着くまで店主のリドール・デッドウォッチ氏がもみくちゃにされるのを眺める事にした…

 意外にも客たちは本が売り切れたと聞いた瞬間に何処かへ散り散りになってしまい、店はすぐにがらんと空いた。

 レンリエッタはひしゃげたメガネを拾う、デッドウォッチ氏へ気の毒そうに話しかけた。


「いててて…あぁ……メガネが…」

「あの…大丈夫ですか?」

「え?あぁいらっしゃい…悪いけどダンプリング先生の新作なら売り切れちゃったよ…」

「いえ、本じゃなくて今日は紙を買いに来たんです…」


 そう言うと彼は少し驚いたような顔をしつつも、メガネをムーキスで直し、すぐにレンリエッタを店内へと招いた。

 デッドウォッチ書店は二階建ての古本屋だ。店内には所狭しと様々な本が並び、それぞれが綺麗にジャンル分けされている。

 古本屋だが新しい本を置いている事もあるし、文房具なども置いているので此処で買おうと言うのだ。少なくともレンリエッタはもう少し歩いた先にある、本屋よりも此処の方が好きだった。(この店の匂いや立ち読みが許可されている点が特に好みだ)


「魔法紙だったね、ウチが扱っているのは壱番から弐拾番までだけど大丈夫かい?」

「大丈夫ですよ、欲しいのは拾弐番…ってやつなんです」

「拾弐番ならこれだね。」


 デッドウォッチ氏が招いた先の棚には様々なサイズの紙が並んでいた。これが魔法紙というモノなのだろうが、見た目は殆ど普通の紙と違わない様だ。強いて言うなら薄く黄色い。

 番号が振られているが、壱番から弐拾番へ数が大きくなるにつれ、サイズも大きくなっている。

 拾弐番と聞き、デッドウォッチ氏は棚から1セット取り出してレンリエッタへ手渡した。片手に収まるサイズの小さな紙束だ。


「それにしても最近じゃ珍しいよ、例の本を買わずに書店を訪れるなんて。」

「例の本?」


 紙束を持ってレジへと向かう途中、デッドウォッチ氏は例の本とやらについて話して来た。おそらくその本というのは先ほどの売れまくっていたものだろう。

 もちろんレンリエッタは知りもしなかったのでその本とやらについて聞いてみることにした。


「あれって一体何の本なんですか?」

「ヘリ―・クッツーシリーズを知らないのかい?今一番売れてる小説さ。」

「全然知らなかった…なんか既視感がある名前だけど…」

「JDダンプリング先生が書いてるものでね、その熱狂ぶりと来たら異常だよ。まるで憑りつかれたようにみんな買って行くんだ。」


 どうやら先ほどの群衆は『ヘリ―クッツーシリーズ』という小説の新作を買いに来ていたらしい。思えば店の至る場所に宣伝のポスターが貼られているではないか。

 『演者の道』『緻密なヘアー』そして新刊の『アバンギャルドな囚人』の広告が目に入って来た。

 レンリエッタは狂うほど面白いのかとちょっと興味が湧いて来た。


「おかげで入荷したばかりの在庫もあっという間にスッカラカンさ。ほんと、本屋からすれば大先生だよ。」

「そうなんですね…ちなみに読んだことはあるんですか?」

「もちろんあるよ、知人から勧められてね。でも…どうかな、私には合わなかったよ。みんなは面白いって言うんだけどね。」


 面白いというのは人それぞれなので、万人受けする作品なんて世の中には無いのだ。

 軽い雑談を済ませ、代金の3ケイルを支払ったレンリエッタは積まれた呪文書を名残惜しそうに眺めつつ書店から出ると、メモを確認した。


「さーてっと…お次は…エクスマイト鉱石の粉かぁ…知ってる単語を期待したのがバカだったね…」


 今まで通り、メモに書かれているのはまるで知らない言葉だった。

 次にエラフィン大先生がご所望の品は『エクスマイト鉱石の粉末』らしい。その横には今まで通り詳細な注文も書かれており、『50グラム、混ざりもの無し』とのこと。

 レンリエッタは鉱石と書かれているので鉱山にでも行こうかなんて皮肉を考えながら案内所を探していると…


「うん?なんだろう…あのお店、すごく人が集まってる…書店じゃ無さそうだけど…」


 レンリエッタはまたしても大量の人々が集まっている店を見つけた。しかし先ほどのような書店では無く、店の上部には上品な文字で『アーネスト・フレンローズの飛行杖専門店』と刻まれた看板が掲げられている。

 集まっている人々もよく見れば大半が少年や若者たちであった。どうやら新作の杖が展示されているらしい。

 少し近付けば彼らの興奮した言葉が聞こえて来る。


「すげぇな、見ろよ…フロストギアの最新作だぜ…」

「僕…あれが手に入るなら今後一生分のプレゼントを悪魔にあげちゃうよ…」


 ヘルドが悪魔なんて言葉を言うくらいなのだからさぞかし良い杖なのだろう。飛行杖には未だ慣れていないレンリエッタだが、どうにも無視できなかった。

 少し強引にも背伸びして、彼らの後ろからショーウィンドウを眺めてみると一本の杖と解説が目に入った。

 エラフィンが持つような長い杖だ。ウォールナットを使用した柄はすらりと長く、上部に当たる部分には研磨された『天然の零下結晶』という深く青い宝石があしらわれ、下部は金で覆われ、フックが付いていた。

 そして展示されている杖の下には『フロストギアの新作にして傑作、アイスプラズマ』という名前が堂々と置かれている。


「(フロストギア?アイスプラズマ?…うーん…よく分からないけど良い杖なのかな…)」


 レンリエッタは杖の価値をあまり知らなかったのでのほほんとした感想を抱いたが、解説の下に書かれた値段を見てギョッとした。

 なんとこのアイスプラズマのお値段は驚異の『50モナス』である。ルゾンに換算すれば50万もするのだ。

 しかも恐ろしい事に50モナスは基本料である。これに専用のホルダーや手入れ用具セット、ついでにミラーなんて付ければ……想像するだけで恐ろしい値段に膨れ上がるだろう…


「きっとこの杖があればストーム杯のレースも優勝間違いなしだぜ!」

「だけど貴族生まれじゃない限り買えないよ、レンタルもされてないし…」

「(貴族生まれ……うぅ!駄目だ!こんなの買ってもどうせ乗れないし…)」


 レンリエッタは少年たちの話を聞いて一瞬金貨に手を出そうかと考えたが、こんな杖を買っても乗れる気もしないのですぐに邪念を追い払った。両親が遺してくれた遺産は大事に使わないといけないのだ。

 これ以上見ても目に毒なので、レンリエッタはさっさと店から離れて行ってしまった。しかし、どうにもあの杖が後ろ髪を引っ張るような気がしてならない…


「はぁ~あ、飛行杖…きっと乗れたら楽しいんだろうけど……帰ったら先生に乗り方を聞いてみようかな…」


 この世界において飛行杖は一般的な乗り物だ。なので乗り方を知っておくべきだろう、レンリエッタは今度乗り方でも聞いてみようかと考えたが、それと同時に過酷な訓練を積まれる光景が頭を過った…エラフィンなら死にかねない練習法を編み出すに違いない…


 ――そして、それから少しして、レンリエッタは再び案内所へ向かうと前の男は違う案内係に100ルゾンを支払い、エクスマイト鉱石の粉末が手に入る場所を尋ねた。

 どうやら鉱石粉末は風水用品店で見つかるらしい。幸いにも一番近い店は徒歩ですぐの場所に建っていた。

 しかし店構えはどうにも怪しく、黒い布で覆われ、ギラギラとガラス細工が光る店は入るのにしばらくの時間を要した…


「お、お邪魔します…」

「はぁい?いらっしゃいませぇ、ようこそぉ~」

「(うっぷ…この匂い…それに蒸し暑い…!)」


 意を決したレンリエッタが入店すると、店内はもっと凄かった。真昼と言うのに外からの光を一切遮断しているので薄暗く、微かに光る色とりどりのランプが並ぶ商品と怪しげな店主の顔を照らしていた。

 それに加えて非常に…芳醇というより、むせ返るような甘い匂いが漂っており、どういうわけか汗編むほどに蒸し暑かった。

 それでも店主の女性は汗ひとつ掻かず、気怠そうに煙管片手にレンリエッタを歓迎した。


「ごめんなさいねぇ、今月はぁ~…商売運が乾燥厳禁なのでぇ~」

「そ、そうなんですね……ところで、鉱石粉末を探してるんですけど…」

「鉱石ならぁ…えぇーっとぉ……そうそう、そこのぉ、悪霊祓い結晶の横よぉ~」


 なんともまどろっこしいと言うか、とろんとした喋り方をする店主である。しわしわに萎びた深緑色の髪の毛が昆布を連想させ、若草色の肌はとても血色が悪そうだ……いや、ヘルドの一部はこんな肌色をしているので顔色は良好なのかもしれない…

 ちなみに彼女はウィングヘルドだ、背中に猛禽類のような翼が見えた。


 それはそうと、レンリエッタは言われたように店主が煙管で指す結晶のコーナーを眺めた。紫色、黄色、青色に赤色などたくさんの結晶が追い払う幽霊の種類ごとに分けられている。

 そしてその横にはこれまた沢山の鉱石が陳列されている。お目当ての品はデウスライト鉱石とマキナイト鉱石の中間に並んでいた。


「あった…エクスマイト鉱石の粉末……あの、これって何か混ざってたりします…?」

「ウチのはぜぇんぶ…混ざりモノ無しよぉ~」

「そうなんですね。じゃあ、これをください。」

「はぁ~いぃ…ならご一緒にぃ~……絶対幸運石(サクセスストーン)は如何ですかぁ?今ならぁ、たったのぉ~…200モナスよぉ…」

「いりません、これだけください」

「あらぁ、がんこ……でもお買い上げぇ、ありがとね~…」


 高級杖のせいか、絶対幸運石などに惹かれる事など微塵も無く、レンリエッタはただ瓶入り粉末を購入して店を去った。蒸し暑かったせいで外がやけに涼しい様な気がする…


「はぁ~……出来れば次はすぐに見つかる様な物だと良いなぁ…うん?なんだ、次で最後じゃん」


 店を出たレンリエッタがメモを広げると、いよいよ次の品物が最後であった。(なんで一気に目を通さないかなんてみんなは言ってくれるなよ)

 メモの一番下、最後の品はずばり…『星のクズ粉』であった……とんでもないものを最後にしてくれたものだ。星なんて夜にならない限り見えないものを買えと言うのか。


「うーん……でも、さっきのお店にも置いてそうだけどなぁ…」


 どんな物かは毎度の如く見当もつかなかったが、名前の響きから先ほどの店にも置いてそうだと睨んだレンリエッタはしばらく迷ってから結局、店の中へと戻る事にした。

 相変わらず蒸し暑く、甘い匂いがプンプンに漂っている…そして店主は少し驚いている様だった。


「あらぁ?どぉしたのかしらぁ~?やっぱりあの石が…」

「石はいらないです…欲しい商品があったので引き返しただけで…」

「あららぁ~、買い忘れは困るわよねぇ?今度はなぁにをおさがしでぇ?」

「星のクズ粉を…」


 店主は星のクズ粉と聞き、少し頭を悩ませたが少しすると何かを理解したように笑い始めた。


「うふふぅ~、そうねぇ~……残念だけどぉ~、星のクズ粉はぁ扱ってないのぉ…ごめんねぇ?」

「そっかぁ……なら、何処に売ってるか分かりませんか?」

「それが私にも分からないのぉ~、いつ探してもぉ、どこを探してもぉ見つからないからぁ~…力になれそうにないわねぇ…うふふふ…」


 不気味に笑う店主に対してレンリエッタはムカつきと薄気味悪さが同時にやって来た。しかし此処に無いならこれ以上蒸し暑い店内に居る意味も無いので、レンは礼を言うとそのまま店を立ち去った。

 去り際、なぜか店主は「はじめてのおつかい頑張ってねぇ」と励まして来た……なぜ初めてだと分かったのだろうか?


「うーん…しょうがない、また案内係に聞いてみよう…」


 こうなっては仕方ないのでレンリエッタは再び案内所まで出向き、もう100ルゾン支払って店の場所を聞くことにした。一日に何度も同じ人に場所を聞くのは少し恥ずかしい気もするが、この際やむを得ない。

 レンリエッタは直ぐ近くの案内所へ向かい、先ほど風水用品店について教えてくれたのと同じ人に料金を支払った。


「あの、星のクズ粉について知りたいんですけど」

「なんだって?…うーむ…困ったぞ……悪いが俺じゃ力不足だ、返金するよ。」

「えぇ!?そんなぁ…(返金とかあるんだ…)」

「星のクズ粉を探すなら色々な店を回るしかないだろうな、俺もかつてはそうしたよ…結局買えずじまいだが…」


 困ったことに案内係でも星のクズ粉の在処について全く分からないらしい。レンリエッタは「聞けばわかるだろう」の精神だったので大いに困り果てた。

 なので案内係が言うように一軒ずつ店を回って聞くしか無いのだろう……気が遠くなりそうだ…



 ――結論から言うと、レンリエッタはそれはそれは頑張った。風水用品店、薬問屋、希少素材の量り売り店など置いていそうな場所を片っ端から訪れては店員へ聞きまわったのだ。

 しかし返って来るのは「知らない」や「がんばれ」という言葉のみで星のホの字も掠らなかった。

 結局、悪あがきとして訪れた洋服店でも収穫を得られず、レンリエッタは噴水広場へと戻ったのだ…


「はぁ~あぁ……ぜんっぜん見つからないや…どこに売ってるんだろう星のクズ粉って…」


 カゴを脇に置き、水気のない噴水の縁に座りながら、レンリエッタはぼんやりと頭を抱えていた。エラフィンに買い物を頼まれたからには何が何でも完遂してから帰りたいのだ、絶対にガッカリさせたくない…

 そんな風に考えていると、レンリエッタは服のポケットの中に杖が入っているのにが気が付いた。


「あ…入れたまま来ちゃったんだ…はぁ……星のクズ粉を出せる魔法なんて無いかなぁ。」


 そう言いつつ、杖を振っても呪文を唱えていないので何も起こらない。それよりも、そんな都合の良い魔法は存在しないのだ。

 レンリエッタは杖をクルクルと手の中で回しながら街を眺めた。

 本当に活気のある場所だ、クークランの二流街のような広さは無いものの賑やかで面白みに溢れている…


「………もうちょっと探したら一旦戻ろうかな、きっと先生も分かってくれるよ…たぶん…」


 結局、レンリエッタはもう少しだけ店を訪ね回ったら一旦帰る事にした。エラフィンは言うこすることトンチキな事ばかりだが、意外と優しいので分かってくれるかもしれない。

 噴水の縁から降り、グッと気張るレンリエッタだったが…


 ドゴッ!


「あいたッ!?」


 その時、後ろからぶつかって来た何者にかよってバタッと転んでしまった。

 人が多いとは言え、広場でわざわざぶつかるなんてよっぽど急いでいたのだろうとレンリエッタは身を起こしながら考えていると、走り去って行くローブを着こんだ誰かの後姿が見えた。

 何かを抱えている様だ……手頃なカゴ……カゴ…カゴ!


「ま、まさか……あぁ!!無い!ど、泥棒ーッ!!」

「ははは!油断したなぁ!ノロマ!!」

「(や、やばい!アレが無いと帰れないのに…!)」


 急いで後ろを確認すると、置いてあったはずのカゴが綺麗に消えていた。走り去って行く男の正体は置き引きだったのだ。

 カゴの中には財布と買った品物の他にブーツが入っている…もちろん行きと同じくブーツが無ければ帰る事すらできなくなってしまうのだ。

 レンリエッタはすぐにコソ泥を追いかけ始めたが、彼は建物の間から路地裏へと侵入してしまった。

 そうなってしまうとようやく騒動に気付いた兵士や周りの人々も諦める他なかった…レンリエッタもエラフィンから路地裏には入るなと言われているのだ…


「ギャハハハハ!あーばよぉー!!」

「あぁもう!!…うぅ……ええい! い、行くしかない!」

「あ!キミ!そっちは危ないぞ!」

「ご忠告どうも!ついでに捕まえてくれればよかったのに!」


 だが躊躇している暇は無かった。衛兵の制止も聞かずにレンリエッタはコソ泥の後を追って建物の隙間を進み始めた。するとなぜか一瞬、ぐるりと身体が捩じれるような感覚と共に街の喧騒は一気に静まった。

 しかしそんな事を一々気にする余裕も無いレンリエッタは狭い隙間を抜けると、やがて見慣れない商店街へと出た…


「はぁ……はぁ…あれ?こ、ここどこ?路地裏じゃないの…?」


 路地裏へ向かったハズが行き着いた先は商店街…レンリエッタは慌てて周囲を眺めると、そこが先ほどとは全く違う場所だと気付いた…

 空は夜のように暗く、並ぶ店は怪しく光る看板を掲げ、通り過ぎる人々もどこか不気味であった。強いて言うなれば獣人やら幽霊などの異形なヘルド達が多い。

 不気味な場所だ、店も『四肢屋』だとか『呪刻印ショップ』など見慣れない物だらけだ…

 見慣れない光景に怯えるレンリエッタへ、声を掛ける者が現れた…


「あらあらお嬢ちゃん…こんな所で何してるの?お母さんとはぐれちゃったのかしら?」

「い、いえ私は…あの、やめてください…ひぃ!?」

「大丈夫ですよぉ、こちらへ…私のお店で来るのを待ちなさいな…」


 しわくちゃの老婆は枯れ枝の様な手でレンリエッタの腕を掴み、怪しげな店へと無理やり引っ張ろうとした来た。

 幸いにもあまり力は強くなかったので、直ぐに振り解いたのだが…声を掛けて来るのは老婆だけでは無かった…


「そこの活きが良いの、腕や足を売るならウチに来いよ!スパッと切ってやるぜ!」

「う、売りません!」

「触媒はいかがです?とってもお買い得ですよぉ、ほらぁ…!」

「いらないよ!あっち行ってよ!」

「綺麗な髪だなぁ!売ってくれよ!頭皮ごと!」

「ひぃいい!!」


 四肢屋の店主は巨大な包丁をギラ付かせながら笑いかけ、奇妙な泥笛の押し売りは空き歯で語り掛けて来るし、飲んだくれたようなおっさんは自慢の銀髪をサラサラと触りながら話しかけてくる始末…

 それらを押しのけてレンリエッタは逃げて行くと、その先にローブの男を発見した。間違いない、コソ泥だ。

 彼はレンリエッタが追って来るとは考えていなかったようで、余裕そうに口笛を吹きながらカゴに手を突っ込もうとしていた。


「~♪さて、あのガキはいくら持ってたんだろうなぁ…」

「そこの泥棒野郎!さっさとカゴを返してよ!」

「なんだと?おいおい、マジかよ、ここまで追って来るとは中々だなぁ!」


 レンリエッタはこれほど「魔法が使えたらなぁ」と思うような瞬間は無かったと言えよう。魔法があればこの男を黙らせて荷物を回収する事も容易だったはずだが、今はムーキスですらろくに扱えないので真っ向から対峙するほかなかった。

 だが男は余裕そうに笑いつつ、カゴをこれ見よがしに手からぶら下げた。


「ほーら!取ってみろよ!こんな薄汚いブーツが入ったカゴが欲しけりゃ奪ってみろよ!」

「くぅう…!この…!」

「はーっはっは!これでも喰らいな!」


 レンリエッタがカゴを取ろうとしたその瞬間、男は素早くローブの下から白い腕を伸ばすと、指先からシュバッと青い炎を撃ち込んだ。

 炎弾はレンリエッタに当たる事は無かったが、その上部に吊り下げられた大きな看板の支えに命中し、看板がギギギッ…と大きな音を出して軋み出した…


「はははは!潰れて死ねーっ!!」

「うわぁッ!!(避ける!?いや…)」


 ガコッ!!


「(間に合わない!!)ムーキス!!」


 その時、看板がガコンッと音を立てて落下した瞬間、レンリエッタは本能的に杖を素早く引き抜き、ムーキスの呪文を唱えた。半ば逃げる事を諦めていたが…

 驚くことに今にも押し潰そうとする距離で、看板はピタリと止まり、するとみるみるうちに元の位置へと戻ると支えもろとも新品同様に元通りになってしまった。一枚の紙すら戻せなかったヘボ呪文が命を救ったのだ。


「わぁ!やった!あんな大きな看板を直した!」

「くそッ!こいつも魔法使いか…チッ!」

「あ、ああぁ!しまった!」


 だが喜ぶのも束の間、男はレンリエッタも魔法が使えると知るや否やすぐに走り出した。相変わらず調子に乗る性格のせいでまたしてもレンリエッタは一歩出遅れてしまった。

 しかし此処は先ほどとは違って障害物になる物が多いせいか、男は思うように走れず、中々撒けずにいた。


「どけどけぇ!邪魔だ!!この…こいつでも喰らえッ!!」

「うわぁ!?」


 男はそこら辺にある物を投げてレンリエッタへぶつけようとした。埃まみれの本、蛆が詰まった瓶、まだビチビチと跳ね上がる魚など…

 だがレンリエッタも負けじとそれらを躱し、男を追跡した。ここで逃がせば帰れなくなる、そう考えれば絶対に捕まえてやるという執念が脚を動かした。


「くそっ…しつこいガキだぜ……おい!デカブツ!そこのガキを痛めつけてやれ!」

【………まいど】


 恐ろしい執念で追って来るレンリエッタにコソ泥は逃げられないと悟ったのか、懐から金貨を一枚取り出すとピンッと弾いて突っ立っていた大男に渡した。

 金貨を受け取った大男は地割れのような声で答えると、レンリエッタの前へと立ちはだかった。

 かなりの巨漢だ、黒革の上着を羽織り、ズボンのチェーンには染みだらけの木製棍棒がぶら下がっている…


「おわッ!?…ちょっと…ど、退いてよ…」

【フン…お前に怨みは無いが金貨一枚分の仕事はさせてもらうぜ】

「ちょ……ま、まさか私みたいな女の子に酷い事したり…しないよね?」


 レンリエッタの問いに対して彼は携えた棍棒を手に取って応えた。残念ながら金払いに従順な様だ…

 その間にコソ泥はものの見事にトンズラしてしまい、もはや姿を見失ってしまった。


【安心しろ、命までは取りゃしねぇからよぉ!!】

「うッうわぁあ!?ヒィイ!?」

【むっ…すばしっこい奴だな…オラァ!!】


 大男は棍棒を振り下ろし、頭蓋骨をカチ割ろうとして来た。レンリエッタは間一髪で横へ倒れるようにして避けたがすぐにやって来た二振り目が髪の毛をシュッと掠った。

 一振り、二振りと回避する事に成功はしたが、もはや逃げ場も無い。レンリエッタは倒れた姿勢のまま這いつくばって逃げようとしたが、大男は逃げる足首を掴んで宙吊りに持ち上げてしまったのだ。


「うわぁああ!!は、離してよ!!」

【覚悟しろよガキ…さっきも言ったがお前に恨みは無ぇ…だが金を受け取ったからにはキッチリ仕事をするってのが此処のルールだ。命は取らんが、とびっきり痛い思いをしてもらうぜ】

「ぎゃぁぁあああああ!!」


 もはやレンリエッタに出来る事はジタバタと暴れる事だけだった。それでも大男は構わず棍棒を後ろへ構え、今にでも頭部目掛けて振り回そうとしている。

 周りの人々もすっかり見入っており、レンリエッタの頭部がカチ割られるのをまだかまだかと待ち侘びている様だった…

 そして…


【うぉらぁあ!!】

「ひぃッ…!」


 ついに大男は棍棒を頭部目掛けて振り回した。レンリエッタは涙を浮かべてギュッと目を瞑った…

 一秒、二秒…もうすぐガツンと来るぞ……しかし、いつまで経っても痛みと衝撃は来ず、その代わりにバァンッという弾ける音と共に、カランッと何かが転がる音がした。

 レンリエッタは恐る恐る目を開けてみると…


「……あ、あれ…?」

【な、なんだこれは…バリアか…?】


 目を開けると、飛び込んで来たのは自身を囲む紋章入りの光の膜であった。彼が言うようにバリアの類だろう、地面を見れば折れた棍棒の欠片が転がっていた。

 しばらくレンリエッタも大男も周りの人々も呆気に取られていたが、やがてバリアに浮かぶ紋章の意味を理解すると周囲の空気は騒然とし出した。


【こ、このマークは…エラフィン様の紋章だ…なぜ…】

「エラフィン様…?わ、わたしエラフィン先生の弟子です…」

【なんだと!?なんてこった……悪かったな、大丈夫…か?】


 大男はレンリエッタがエラフィンの弟子だと知るや否や、急にヘナヘナとした口調で彼女を地面へ優しく降ろした。周りの人々も酷くオロオロしている様子だ…

 急な掌の返し様にレンリエッタは上手く状況が理解できない…なぜ彼らは急に態度を変えたのだろうか…


「ど、どういう事なの?エラフィン先生のこと知ってるの?」

【知ってるも何も此処は…夜のとばり通りじゃないか、知らないのか?】

「夜のとばり通り?知らないよ…」

【此処はエラフィン様が作った場所じゃないか】

「作った?」


 彼曰く此処は『夜のとばり通り』という場所らしい。エラフィンが作ったと言っているが、イマイチレンリエッタは状況が理解できない…

 まるで状況が呑み込めないレンリエッタへ、近くに立っていた顔色の悪い女が(聞いてもいないのに)説明し出した。


「この通りはエラフィン様が作ってくれた場所なのよ、表じゃ生きて行けない人が暮らして行けるようにって…」

「街の中にこんな場所を作ったの?か、勝手に?」

「勝手にって…ちゃんと許可は取ってるはずよ、王に……だってエラフィン様は王宮魔術師でしょう?」

「……えぇッ!?お、王宮魔術師!?エラフィン先生って王宮魔術師だったの!?」


 さらにレンリエッタは度肝を抜かれた。

 エラフィンが王宮魔術師だと言うではないか…それが何なのかは不明だが名前を聞くに大層な肩書ではないか。ちっともそんなこと教えてくれなかったので驚くばかりだ…


【アンタ…本当にエラフィン様の弟子なのか…?】

「本当だよ!今日だって買い物を頼まれてたのに…そうだ!泥棒!捕まえられそうだったのに…」

【うぅっぐ…!す、すまなかった…エラフィン様の弟子だと知ってればこんな事は…そうだ、すぐにヤツを探し出そう。此処の連中は是が非でも手伝ってくれるさ!】


 衝撃が過ぎた故に忘れかけていたが、レンリエッタは大事な買い物カゴを盗まれていたのだ。このデカブツのせいで泥棒を逃がしてしまったのだが、彼はお詫びに取り返すのを手伝ってくれるらしい。

 それどころか此処ら周辺の皆がレンリエッタの助けになってくれると言うのだ。


【おいお前等!エラフィン様の弟子から荷物を奪い取った不届き者を探し出すぞ!!】


 彼が声高らかにそう言えば、周りの人々は息を合わせるように大きく返事をした。彼らは一斉に魔法やら不思議な道具を使って周辺を調べ始めたのでレンリエッタは何もする事なく、ただ突っ立っているだけで良かった。

 そして数分もしないうちに標的は見つかった。


「見つけたぞ!此処だー!」

「え!?は、早い…」

【そこまで遠くには逃げなかった様だな…行こう、荷物を取り返そうじゃないか】


 レンリエッタは大男と共に声のした方向へ向かえば、そこはボロボロの空き家であり、中では縛られた状態の泥棒がぐでんとハムのように横たわっていた。コソ泥は非常に情けない声で命乞いをした…


「し、知らなかったんだ…エラフィン様の弟子だって…頼むから命だけは取らないでくれ!!頼むぅ!」

「荷物を返してよ!返してくれたら何もしないから」

「そ、そこにある…手を入れようとしたら反撃魔法で手が焦げちまった…」

【盗人対策はしていた様だな…流石はエラフィン様だ。】

「出来れば盗まれる前に対策して欲しかったよ……でも良かったぁ、荷物は無事だぁ…!」


 ようやくレンリエッタは荷物を取り返すことに成功した。中身を見ればそっくりそのまま、ブーツも買った品物も大事な財布も全部揃っている。

 さて、取り返したならこの泥棒をどうするかだが……もちろん、レンリエッタに拷問などの人を傷つける趣味は無いので、これ以上痛めつける行為はしない事にした。先生だってそうしたはずだと確信している。


「もうしないでよね、私にも私以外にも!」

「わ、分かった……優しいんだなぁ嬢ちゃん…」

【本当に良いのかい?俺なら腕と足を四肢屋でぶった切って売り飛ばしちまうが…】

「私はそんな事したくない。それにこの人だって好きで盗みをしてるわけじゃ無いと思うし…たぶんだけどね」


 なのでレンリエッタがする事と言えば、この場で踵を返して帰るだけだ。もう買い物は懲り懲りだ。


「お戻りなら私が案内しましょう、私はズマーキと申します…どうぞエラフィン様には名前を…」

「分かったから……ねぇあなたはなんて言うの?」

【俺の名前を知りたいのか?……リグヴァ―だ…】

「じゃあ私はレンリエッタ。…殺そうとして来たけど先生には黙っておくね、手伝ってくれたし」

【是非そうしてくれ、あの人をがっかりさせたくないんだ……じゃあな、レンリエッタ】

「うん、またねリグヴァ―。」


 レンリエッタは最後に大男…リグヴァ―に礼と別れを告げると薄気味悪い老女のズマーキと共に狭い通路を抜けて元の明るいサタニズム街へと戻った…


「はぁ……早く帰ろっと…なんか忘れてるような気がするけど……まぁいっか…」


 何か忘れている様な気がしてならないが、レンリエッタは気にせず帰る事にした。もうクタクタで足が笑うように震えてしまっている…早く椅子に座りたい気分だ。

 レンリエッタはサタニズム街の入り口まで向かうと、他人の目を気にせずブーツをしっかりと履き、一瞬にして森の中へと戻った…




 シュバッ!!


「ふぅ~……あれ?エラフィン先生…」


 森の中へ戻ると、邸宅の前ではエラフィンが待ち構えていた。

 その顔は若干険しいが…


「無事に戻れた様だね。危険信号を察知した時はヒヤヒヤしたよ。」

「うっ……実は色々と訳があって…」

「訳はともかく!言い付けを破って路地裏に入ったね?あそこは危険だって教えただろうに…」

「でも…でも!荷物を盗まれたらしょうがないよ!テレパシーで取り返せって言うの?」

「おっと……それは予想外だったね…荷物を盗まれたのかい?」


 エラフィンは路地裏に入った事を咎めようとしたらしいが、レンリエッタが入った経緯について説明すると意外にもすんなり怒りを収めてくれた。

 どうやら危険が迫った時は探知で来ても、荷物を盗まれた事に関しては無理な様だ。

 だがレンリエッタが言いたいのはそれだけではない、王宮魔術師についても説明してくれないと気が済まないのだ。


「それよりも!なんで王宮魔術師だって黙ってたの!」

「えっ……うっ…なんとも痛い所を突いて来るね…」

「村の事だって教えてくれなかったのに…もしかして私の事を信頼してないの?」

「そんなわけは無いさ!アンタは一番に信頼してるよ……だが…あんまり巻き込みたくなかったんだ…そうさ、私は王宮魔術師エラフィン様さ……だけどこの肩書は嫌でね…好きじゃないんだ……」

「でもそれって凄い事じゃないの?」

「そりゃ凄いさ!王に認められるって事だからね……だからこそ嫌なんだよ…」


 エラフィンが王宮魔術師という肩書を隠していたのはレンリエッタを巻き込みたくない、そして何よりもこの肩書を嫌っているからであった。

 王宮魔術師と言うのは王に選ばれた選りすぐりの魔法使い達の事だが、何よりもそれが嫌らしい。エラフィンは群れるが嫌いなのだ。


「王って…その……私の家族を襲うようにした…?」

「いいや、前の王は随分前に死んじまったよ。今はウェルアイムとかいう若造が王だ……だけどねぇ、アイツも嫌いさ。それに何と言っても集まるのが嫌なのさ!他の奴等と同列に扱われるのが特にね!」

「……エラフィン先生って孤独な人なんだね…私が付いてるから大丈夫だよ」

「うっ……別に孤独じゃないし…弟子から慕われまくってたし……それよりも!ちゃんと注文した品を買って来たんだろうね?」

「もっちろん!ぜーんぶ……あぁ!!」


 その時だった、レンリエッタは忘れていた何かを思い出した。

 星のクズ粉だ!星のクズ粉を買わずに帰って来てしまったのだ!


「ど、どうしよう…先生怒らないで……か、買うの忘れちゃった…」

「え?何がだい?全部揃ってるじゃないか。魔法紙、粉末、卵に薬…」

「星の粉だよぉ!何処にも置いて無かったから後回しにしてて…あぁもう…」


 レンリエッタは星のクズ粉を買い忘れたと白状したが、それを聞いてエラフィンは怒らず、それどころかケタケタと笑い始めた。


「あはははは!そうだったね!…あははは!」

「お、怒ってないの?」

「怒るって?怒るも何も…星のクズ粉ってのはジョークさ!アンタみたいに初めておつかいに行く子供をからかうためのね!あははは!」

「えぇ…ジョ、ジョークだったなんて……む、無駄足になっちゃった…」


 星のクズ粉の正体はただのジョークだった。初めて子供をおつかいに出す際、親が冗談で困らせたりするのが古くから続いている遊びらしい。

 つまりレンリエッタは見事に騙され、サタニズム街の人々もまんまとその遊びに付き合ってあげたという事なのだ…悔しいが、何故か笑い飛ばせばスッキリしてしまった。


「あはははは…さて、早速薬を作ろうじゃないか!」

「はーい!…あ!そうだ!あのね!私、ムーキスでこーんなでっかい看板を直したの!」

「えぇ?本当に?」

「ホントだよ!」


 レンリエッタは邸宅へ戻りながら今日あった事を嬉々と話し始めた。

 荷物を盗まれたこと、看板で押し潰されそうになったが逆にムーキスで直してみせたり、親切なリグヴァ―という男に助けてもらったなど…


 だが、その後レンリエッタが紙を直そうとしても紙はかろうじてくっ付く程度だったとさ…


つづく…

キャラクタープロフィール


【エラフィン・リップ・ファングステン】年齢:356歳 性別:女性 血液型:SK型

種族:ヘルド 身長:198㎝ 肌色:緑の鱗 瞳:山吹色 髪色:アイボリー

生後精霊:双頭のフクロウ 得物:賢獣のロッド 特技:魔法全般 職業:王宮魔術師、薬売り、無免許医、魔法講師etc…

誕生日:67月499日生まれのハイデルアード座 異名:暴力の魔術師、蛇の魔女


『レンリエッタの師匠。かつて多くの魔法使い達を師として世へ送り出した凄腕の魔術師であり、自他ともに認める今世紀最大の天才魔法使い。性格はいい加減で曖昧、どこか抜けているが面倒見は良く一度した約束は絶対に守る律義な面を持つ。(そして弟子にはちょっと甘い)魔法を得意とするが偏った系統では無く、呪い以外のほぼすべての魔法を扱う事が出来る。その実力を買われて王宮魔術師なんて大層な肩書を手に入れているが、王国側も彼女に頼るのは最後の手段としているらしい。好きな物は密造と魔法研究、嫌いな物は呪い。現在は呪いのせいでおぞましい姿に変えられており、かつては解呪を試みたが諦めている。ちなみに双子の妹が居るものの、仲は最悪である。』

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